格ゲー大好き中学生が異世界転生したら「俺より強い奴に会いに行く!」っていうスキルを手に入れたけどあんまり強くない件について

@gumigumi244

始まりがダンジョンは終わってる!!

なんだこの微妙なスキルは…。

梅原正人は思春期真っ盛りの中学生!ではあるもののそんなにエチエチなブツに興味はなく強いていえば、「俺より強い奴に会いに行く!」格闘家が大好きなのである。しかしその人のように都合良く正人くんはストイックな男の子ではなかった。勉強は嫌い。運動も苦手。昨日の定期考査の数学で2点を叩き出したのも、部活動体験でラグビー部にイキり散らかして2m吹き飛んだのも彼である。

そんな彼は今日も学校帰りに家の近くにある老舗のゲーセンで格ゲーの腕を磨いていた。

しかし彼の今のところいいことが一つもないように見える人生も突如として終わりを迎えることにぬる。……噛んじゃった。


「昇龍ケーン!!水うめぇぇぇ!!あれ?おじさん?画面がきえたよ?」


正人の筐体のコンセントが抜けてしまったのだ。


「コンセント挿すくらいお前でできるやろ。ち ょとやっといて。動作確認はしたるから。」

面倒臭い雰囲気丸出しの店長にそう言われて、コンセントを挿すために席を立った正人だったが筐体に置いていた水を溢してしまった。そしてそのまま床に広がった水を拭かずにコンセントを挿してしまった。その時だった。

正人に電流走る……が別に何か天啓を得たわけではなくそのまま感電してしまった。


驚いて目が飛び出そうな店長の顔を最後に正人の目に映るこの世界の映像はここで途切れ彼は命を落としてしまったのだが──


「どこだよ?ここ」


 ──次に目を覚ますと上に石造りの天井。身  体を起こすとさらに石造りの狭い通路。


「石ブロックの通路?RPGのよくあるダンジョンみたいだ。……ん?ダンジョン?ダンジョン?!てことはこれはいわゆる異世界転生か?!どうすんだよ?!丸腰じゃねぇか!」

転生の妄想をよくしていた正人は意外とこの状況を飲み込むのが早かった。


「いや待てよ?これが例の異世界転生なら……ステータスウィンドウ!…でたぁ!!」


そう。異世界転生によくあるステータスウィンドウがでたぁ!!のである。


「HP15。まあ、最初にしてはいい…のか? ATK4。まあ、筋トレしてなかったし。

MP…がない。まだ使えないからかな。

DEFとSPDは2か。まあ、これはしょうがない。問題はこれだな。馬鹿さ加減。285。

ステータスウィンドウに馬鹿にされてんだけど。なんだよこれ。前世の数学2点がそんなに効いてるのか?

…もういいや。ステータス見る限り転生無双じゃなさそうだな。スキルは?」


もうそんなに期待していない正人はスキルウィンドウを開いた。


「この感じじゃいいスキルは無さそうだなぁ。あ、でも思ったよりある!」

彼のスキルウィンドウの中には成長期、思春期、パリィがあった。

「パリィ以外の2つはいいとして、これは使えそうだ。他には…ん!これは!!」

そこに書かれていたのは、あの格闘家の言葉「俺より強い奴に会いに行く」だった!!

「これ、俺だけの固有スキルじゃないのか?!あの人の言葉だ!やっぱりただで転生させるわけないよな!!神様ありがとー!!」

すると、ダンジョンの奥から雄叫びが聞こえた。当然だ。ここがダンジョンなら魔物が徘徊しているに決まっている。ゆっくりステータス確認をしている場合ではないのだ。取り敢えず正人は雄叫びが聞こえる方向から遠ざかることにした。


「まだスキル確認済んでねぇよ!勘弁してくれよ、ほんとぉ。」


鳴き声から遠ざかることはできた。できたはいいもののダンジョンにはアレがあることをスキル確認ガチ勢の正人くんは忘れていた。ダンジョンには…罠がある!!


「うおお?!あぶねぇ!!こんなとこにとげ罠とか悪質すぎんだろ!!」


正人は考えていなかった。叫び声を上げることは未知の魔物に自分の居場所を教えているようなものだ。常に四方八方にどんな危険が潜んでいるか分からないこの場所でそれは完全に自殺行為だった。

しかし、正人の脳年齢はそこまでのことを考慮して動ける年齢ではない。圧倒的に経験がたりないのである。

ほら、ダンジョンに響き渡る足音が、雄叫びが、正人に死の予鈴を告げる。


「あ、これ、逃げ場はない感じ?」


正人の声に引かれてやって来た魔物はよりによって転生初心者キラーのミノタウロスだった。

明らかにバットではなくこん棒、しかもトゲがついている。


「ブォォォォ!!!」


「イヤァァァァァァァ!!!

 スキル!スキル!スキル!」


咄嗟のスキル連呼も意味がないようだ。

そんな正人の足をつかんだミノタウロスは思い切り後ろの通路に投げつけた。

しばらくは正人で遊ぶつもりのようだ。


「ッ痛ァ…。ラグビー部のタックルより痛ぇ。           

 固有スキルの中身もまだ読んでないのに…!

 クソォ…!逃げるしかねぇ…!」


歩いて迫るミノタウロスから正人は死に物狂いで逃げ、なんとか距離をとり通路の陰に潜むことができた。


「固有スキルの内容を確認しなくちゃ。

 なになに…相手とのレベル差分自分のレベルが一時的にUPする?!これならアイツに勝てる!」


固有スキルの内容を確認した正人は自らミノタウロスの前に立ちはだかった。


(大丈夫!このスキルがあるなら今でも十分コイツに勝てる!!)


正人は舐めきっているミノタウロスの腹に思い切り正拳突きをぶち込んだ!!

がしかし、なぜかあまり、いや全くミノタウロスには効いていないようだ。


「ブオ?」


「……拳半分届かなかったか。…フガシィ!!」


有名なあのセリフで自分なりにあの人っぽくカッコつけたが、軽いビンタでぶっ飛んだ!

なんとか立ち上がれた正人はもう一度距離をとりスキル内容を確認する。


「なんで?!正拳突きのフォームがダメなのか?!それとも制約かなにかあんのか?!

なになに…

・相手とのレベル差分自分のレベルが一時的にUPする。

・この固有スキルには特典がついておりレベルごとに解放されます。そしてこの特典を使用するにはこの条件が必須です。

・相手が自分より強い相手であること。弱い相手の場合、スキル効果は適用されない。

・裸足であること。(赤い鉢巻きを着用している場合さらに効果UP。)

・服がボロボロであること。

・正確に必殺技コマンドを入力すること。(ストイックな心を持てばさらに効果UP。)

ふざけんな!!なんだこれ!!」


正人の頭には、大きな?が浮かんだ。コマンド?裸足?2つ目に関してはもはや要らないだろという疑問が浮かんだのだ。しかしツッコミを入れている場合ではない。いつミノタウロスの考えが変わり殺されるか分からないこの状況では条件を満たさずには要られないのだ。

正人は渾身の力で長袖とズボンを引きちぎり、靴を投げ捨てた。さらに、意味はないが引きちぎった長袖を鉢巻き代わりに巻いて見せた。

そして今度こそとミノタウロスの前に立ちはだかる。


「勝てるかなんて分からねぇ!でもあの人は勝てるか分からない勝負でも絶対に逃げねぇ!だったら!!俺だってこの死合い勝ち切って見せる!!」


そう言い、自分を鼓舞しミノタウロスにとっしんする!!

何かを感じ取ったミノタウロスは咄嗟に応戦し棍棒で横薙ぎにする。

しかし間一髪で正人はミノタウロスの懐に潜り込み後ろ側に回り込み、ミノタウロスを見ずにドロップキックを背中にお見舞いする。

体制を崩したミノタウロスは動揺しながらも振り向きざまにパンチを繰りだす。

しかし、正人はすでに距離を取っていた。

正人はしゃがみ、力を両手に込めはじめた。

目をつぶりただ手に感覚を集中させあるかも分からない力にただ手を伸ばす。目を開けた正人の両手の中には蒼い光が輝き始める。

ミノタウロスは本能で危険を感じとり正人に凄まじい速度で頭突きを繰り出す。

限界にまで込められた力は正人の両手を伝い目に蒼い光を宿す。

その瞬間、正人はミノタウロスに向けて込められた蒼い光を大きな弾丸のように放って見せた。


「撃ち抜け!!!!」


「ブオオオオオオオ?!!」



ミノタウロスは避けようとしたが弾丸に突っ込んでしまい後方に大きく吹き飛ばされ壁にめり込む。

さらに、正人はミノタウロスを追いかける。壁から大きく出っ張った顎に目掛け助走をつける。左腕に大きく力を込め、さらに左足を深く踏み込むと同時に昇り龍の如く高く翔び顎へと強烈なアッパーを繰り出した。


「この拳を破らない限りお前に勝ち目はぁ…!ないいいい!!!」


大きく吹っ飛んだミノタウロスの身体は天井に顔からめり込みそのまま動かなくなった。どうやら死んだようだ。

そして、やっとミノタウロスを倒した正人は初陣勝利に喜び叫ぶかと思いきや、なんと


「なんだこの微妙なスキルは…。」


と予想外の言葉を呟き大の字で倒れ気絶してしまったのである。彼は3時間後ぐらいに目を覚ますのだが…覚ましてほしいのだが……早よ起きんかい。





 








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