神殿の丘へ
レナトスたちは、山のように積み上げられた皿や食器と格闘していた。
「片付けるのが自分たちだなんて、聞いてないですよ~!」
「俺たちは、食わせてもらってるんだから、片付けくらい、するもんだ」
炊事場では、ニコロたち兄弟と、レナトスとルキウスが、手分けして、料理に使われていた皿や
レナトスは、慣れない手つきで、汚れた皿を
おかげで、洗濯の時にできた“あかぎれ”が、ますますひどくなった。
「これが
ニコロは、重ねた皿を抱えて
家の中で、午後の
遠くから、低いラッパの音が
「これは、売れないねぇ」
街の書店で、老齢の女店主は、眼鏡の
「どうしてだよ!いい詩だろ!?」
「私は、いいと思うんだけどねぇ」
店主の煮え切らない態度にニュムペは
「その、なんと言うか…」
「何だよ」
「…せっかく、男の人が書くなら、もっと
「もういい!」
ニュムペは、店主から紙をひったくると、
ルキウスの詩は
ニュムペは、レナトスたちと別れてから、いつものように街に行って、ルキウスの詩を売り込んでいた。
異国の男性が書いたという
私に、もっと詩がわかる人と
ルキウスの詩は、もっと世に広まって、本当の理解者にも出会えるかもしれない。
自分に、できることは何か?、自分は、どうしたらいいのか?
ニュムペは、考えながら、歩き続ける。
「騎兵隊だ!神殿の丘に向かっているぞ!」
家に戻った女たちの一人が、中にいる者たちに外の様子を伝えていた。
「騎兵隊?」「確か、
皿洗いが終わり、女たちと休んでいた男たちは、
「神殿は、
そうなの?と、問いかけるレナトスに向かってニコロは、答えた。
「神殿は、特別な
ラッパの音は大きくなり、
女たちが言うには、騎兵隊は今、ちょうど家の前を
レナトスは、自分の中で“血が騒ぐ”のを感じた。
“血が騒ぐ”に
「これは、行くしかないですね」
「同感だ、神聖な丘で何が起こるのか、確かめなければ」
「お前たち、どうした?」
「あの…ちょっと…用事が」
「ああ、便所か。ここからなら、奥のを使えよ。近いし、女たちも、行かないからな」
レナトスとルキウスは、大急ぎで廊下を
レナトスは、
午後の空は思いの
レナトスたちは、丘が近づくにつれて、はじめて
「あの、神殿には、何かが隠されている気がします」
「私もだ、きっと我々が知らないアマゾーンの真実は、あの場所に行けば、わかるのかもしれない」
その時、
レナトスたちは、彼女たちの姿をよく見ようと、
「隊長!ここから先は、聖域ですぞ!」
「
先頭を走る女戦士たちは、レナトスたちの道は通らずに、もっと神殿に近い方へ行き先を変えると、部隊は、遠く離れた道を、まるで、ひとつの生き物のように、まとまって移動していく。
そして、その姿は、丘の向こうに消えて行った。
「ありゃりゃ」「残念だったな」
「それにしても、まさか二度も
「この国では、何かしらの異変が起きているのかもしれない」
「これは、ただごとではないな」
「私たちは、運命の女神に
レナトスたちは、部隊がさっきよりも大規模だったので、今度は、道端ではなく、二股に分かれた小さい方の道を選んで、彼女たちを待ったのだが、あいにく今度も、部隊は、遠い道を選びそうだった。
「女神の
「私たちも、進みましょう。そのうち、運が
もしもし、もしもーし…
「あの…
レナトスがおそるおそる声をかけると、女は作り笑いを浮かべた。
「あのねぇ、
女の、あまりにも人を馬鹿にした言葉に、レナトスは、カッとなった。
「…お
次の瞬間、まわりが真っ暗になった。
レナトスは、背後にいた別の女から、袋を
「ルキウス!」
レナトスが叫ぶと、少し離れた場所から、ルキウスのくぐもった声が聞こえる。
レナトスは、そのまま軽々と抱え上げられて、運ばれていく。
彼が、いくら手足を伸ばしてもがいても、
レナトスは、部屋と
「ルキウス!いるなら答えてください!」
「レナトスよ、私はここだ」
レナトスは、声を
「ルキウス、私たちは、どうなるのでしょうか」
「これは、まずいことになったぞ」
「…身元不明の男二名を、
「手荒な真似は、するなよ」
すると、突然、部屋が動きだす。
部屋は、馬車の中だった。
「私たちは、女神に選ばれたようだ」
「聖王の加護がありますように…」
向かう所もわからぬ馬車の中で、ふたつの
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