2、Almost There

 アリシアによる実写版『ポリコレ姫』、その撮影が始まってから数週間後。


「ここが撮影所……!」


 テレビや映画で見たことがあるような俳優が行き交い、見たこともないような撮影機材を抱えたスタッフが駆けずり回り、そして広大な敷地には幾つものセットや撮影所が建ち並ぶ。高層ビルやマンションばかりで慣れ親しんだ都心とは違うその景色は、どこか異世界めいていた。

 撮影所の入り口で立ち竦んでいると、受付にいた警備員から声を掛けられた。


「すみません、どちらへ……?」


 怪訝な様子の警備員に、わたしは慌てて説明する。


「あ、はい。ポリコレ姫の撮影現場に……タカミネ=ミオと申します」


 わたしの名乗りを受け、警備員は手元の名簿を確認するとにこやかに頷いた。アリシアが事前に伝えてくれていたらしい。


「タカミネさん……ああ、ブラック監督の」

「いつもアリシアがお世話になっております……」


 そう言って、わたしは頭を下げる。

 実は今日、わたしはアリシアの様子が気になって撮影現場を訪れていた。最近はスタジオに泊まり込み、自宅で顔を合わせる機会も減り、夜遅くまで撮影が及ぶことも多いという。IT企業で残業が多いわたしでさえ心配になるほどの忙しさである。かくいうわたしも、日中の仕事の合間を縫ってようやく時間を作ったのだ。


「話は通ってます。さあ、こちらへ」


 警備員から広大な敷地の中を案内され、スタジオへと向かう。

 まるで小さな街のような規模、あるいはまさに夢の国だ。オズワルド社の底知れない予算と、その規模感を改めて実感させられる。

 やがて到着したスタジオの中では、撮影が終わるところだった。

 照明とカメラが複雑に配置され、スタッフたちが息を殺すように見守る中、主演女優が迫真の演技を繰り広げている。


「……はい、カット!」


 アリシアの声が響き渡る。車椅子に座りながら声を張り上げる。その声には、確かな自信が宿っていた。


「とても素晴らしい演技でした! 特に最後のシーン、ポリコレ姫の悲しみと決意が見事に表現されていましたよ」


 アリシアが主演女優に声をかけると、周囲からも自然と拍手が沸き起こった。プライベートは引っ込み思案でコミュ障気味なアリシアだけれど、こと映画のことになると、こんなにもはっきりと意見が言えるのだ。アリシアの温厚な人柄と的確な演出指示は、他のスタッフたちの間でも好評のようだった。

 そんなアリシアの仕事ぶりを眺めていたら、向こうもわたしに気づいたようだった。


「あ、ミオちゃん!」


 アリシアは撮影機材の向こうから車椅子を漕ぎ、満面の笑顔でこちらへ向かってくる。普段の物静かな様子からは想像もつかないほどの勢い……なんか飼い主が来たのを喜ぶワンコみたいね、なんてちらと思った。

 そんなふうに思われているなんてつゆ知らず、アリシアはわたしに笑いかけた。


「来てくれたんだね、ミオちゃん! ちょうど良かった、今、すごく良いシーンが撮れたところなの! ねえ、スミスさん!」

「ええ、監督! このカットはバッチリですよ!」


 呼びかけられた若い男性スタッフは両手でサムズアップをしながら、まるで子犬のような笑顔を向けている。その表情は、プロの現場というよりも、むしろ学園祭の映画制作でも見かけそうな、あまりにも無邪気なものだった。


「監督〜、コーヒーを淹れてきましたよ〜! あ、こちらの方にもお持ちしますね!」


 そう言いながら若い男性スタッフはわたしたちの方へと駆け寄ってきて、まるで執事のように丁寧にコーヒーを差し出してくれた。

 あ、どうも……とコーヒーを受け取りながらわたしが会釈を返すと、男性スタッフは口を開いた。


「あ、ごめんなさい。自己紹介が遅れました。ポール=スミスと申します。ブラック監督の助監督を務めております」

「タカミネです。いつもアリシアがお世話になってます」

「タカミネさん、お話は伺っていました。監督の……その、一緒に暮らしていらっしゃると」

「え、ええ。まあ……」


 わたしに向けられた挨拶は、さっきまでのはしゃぎようが嘘のように礼儀正しい。だが、その視線はすぐにアリシアへと戻っていく。


「監督、お水も持ってきましたし、差し入れのケーキもありますよ!」

「あ、ありがとう。でも車椅子は……」

「いえいえ、長時間の撮影でお疲れでしょう? 押しますよ」


 車椅子を押そうとするスミス助監督を固辞するアリシア、しかしスミス助監督はぐいぐいと押しの一手である。


「そんなに気を遣わなくても……」

「いえいえ、これくらい当然です! 監督が心地よく仕事できる環境作りは助監督の仕事ですから!」


 ……なんだか、違和感を覚えた。

 まるで早口言葉のように畳みかけるスミス助監督。助監督というのが何をする仕事なのか、わたしは正確なところは知らないが、助手のようなものだろうか。

 もしそうなら助監督が監督に気を配るのは当然だろうけれど、これは明らかに行き過ぎているような気がする。

 わたしが怪訝に見守る中、アリシアは笑って言った。


「スミスさんって、わたしのことをいつも気にかけてくれるの! 本当にで……」


 アリシアの褒め言葉に、スミス助監督の表情がパッと明るくなったような気がした。

 しかし、それは一瞬のことだ。気遣いを褒められて喜んだかと思えば、『親切な人』と言われた途端、明らかに落胆している。


(……あれ?)


 わたしは目を細めて、スミス助監督の様子をもう少し観察してみることにした。この人、何かある気がする。そんな直感がわたしの中に湧いて出てきていた。


「じゃあ、ブラック監督、次のシーンの打ち合わせの資料もご確認を。色分けして付箋も貼っておきました」

「わあ、ありがとう。でも、そこまでしてくれなくても……」

「い、いえ、監督のためでしたら!」


 スミス助監督の声が一段高くなる。その瞬間、その視線がアリシアを追いかけるように動いた。まるで、アリシアの仕草の一つ一つを見逃すまいとするかのように。

 ……ははあ、なるほど。ようやく状況が飲み込めた。



 この助監督、完全にアリシアに惚れてるな。



 過剰なまでの気遣いも、まるで恋する学生のような笑顔も、わたしの存在を意識した時の微妙な態度も、全てそこに繋がる。彼の一挙手一投足が、アリシアへの想いを露わにしていた。

 だが当のアリシアときたら。


「スミスさんって、本当にでしょう? 本当にスミスさんには助けられてばかり。みんなにも好評なんですよ。映画の知識も豊富だし、演出のアドバイスもいつも的確で……」


 なんの他意もない、純粋な笑顔でそう言ってのけるのだった。

 アリシアときたら、スミス助監督の明らかに過剰に好意的な態度をただの気遣いとしか受け取っていないばかりか、他のスタッフの評価と同列に語っている。


「…………。」


 そしてそんな対応をされるたびに、スミス助監督は歓喜と落胆の入り混じった複雑な表情をするのだった。でもわたしには、その視線の奥に別の感情が潜んでいるのがありありとわかった。スミス助監督がアリシアに向ける眼差しは、明らかに仕事仲間という関係性を超えている。


(まったく、相変わらずね……)


 わたしは思わず苦笑してしまう。映画監督としては優秀でも、こと人間関係においては世間知らずなアリシア。誰かが自分に恋心を抱いているなどとは、きっと想像もしていないのだろう。


(だけどごめんなさいね、スミスさん)


 このポール=スミス助監督の想いは、きっと実を結ぶことはないだろう。なにしろ、アリシアの恋人はこのわたし、タカミネ=ミオなのだから。

 そんなふうにちょっと得意に思っていると、


「……やはり、君に任せて正解だったようだね」


 響いたのは落ち着いた、しかし確かな存在感を放つ声。

 そのとき、一瞬にしてスタジオ内の空気が変わる。慌ただしく動いていたスタッフたちが、まるで時が止まったかのように静止していた。

 ……声の主は、スタジオの入り口に佇む初老の紳士だった。引き締まった体躯に深い紺のスーツを纏い、その立ち姿には生まれながらの貫禄が漂う。銀縁の眼鏡の奥に宿る鋭い眼光は、きっと幾つもの大作を世に送り出してきた審美眼の証だろう。

 その姿を見たアリシアが、裏返った声でその名を呼んだ。


「オ、オズワルド社長!」


 先ほどまで監督として堂々と現場を采配していた彼女が、まるで学芸会で褒められる小学生のように、どぎまぎとしている。

 ……なるほど、この人がハリー=オズワルド氏か。

 アリシアを『ポリコレ姫』の監督に抜擢した、オズワルド社の社長だ。たしかにそれらしい、百戦錬磨の大人物たる風格に溢れている。

 思わず圧倒されていると、オズワルド社長はアリシアに言った。


「今のシーンを見せてもらいましたよ。主演女優の表情、カメラワーク、そして何より君の演出……実に見事だった」

「あ、ありがとうございます……っ!」


 オズワルド社長はモニターに映る映像を見つめながら、ゆっくりとアリシアに近づいてくる。そして、わたしの存在にも気づいたようだ。


「……ああ、タカミネさんでしたね。お忙しい中、わざわざ足を運んでいただき恐縮です」


 オズワルド社長は丁寧に頭を下げながら、紳士的な笑みを浮かべた。エンターテイメント企業のトップとして、来客への対応も完璧なものだった。

 わたしも慌てて頭を下げる。


「い、いえ、こちらこそアリシアがお世話になっております……」

「いい仕事が出来るのは、プライベートがきちんとしているからこそ、です。ブラック監督の才能を開花させるのも、我々の使命ですからね」


 オズワルド社長は穏やかに微笑んでから、再びアリシアに向き直った。


「私は若いクリエイターの感性を信じる主義でね。予算の範囲内であれば、好きなように撮ってくれて構わないですからね」

「あ、ありがとうございますっ……!」


 心強いオズワルド社長の言葉に、アリシアの目が輝きを増す。傍らでスミス助監督が嬉しそうにアリシアを見つめ、わたしも思わず微笑んでしまう。これだけの大作を任された新人監督にとって、これ以上ない信頼の言葉だろう。

 しかし。


「……ただし」


 オズワルド社長の声のトーンが、僅かに変化する。


「結果は必ず出してもらいますよ。私たちの仕事は、夢を売ることです。あなたの作品である前に、れっきとしたビジネスなんですからね」


 その瞬間、柔和な表情の下から垣間見えた鋭利な何か。それは一瞬のことで、すぐに穏やかな微笑みに戻った。

 しかしその一瞬の表情は、スタジオ内の空気を凍らせるには十分すぎるものだった。アリシアの額から小さな汗が流れ落ち、スミス助監督の表情が強張る。部外者であるわたしでさえ、思わず息を呑んでいた。


「……期待していますよ、ブラック監督。タカミネさんも、これからもブラック監督をよろしくお願いします」


 礼儀正しく挨拶を交わし、オズワルド社長は颯爽と立ち去っていった。

 紳士的な物腰の中に、ビジネスマンとしての凄みを感じさせる人物。それが、ハリー=オズワルドという人物の第一印象だった。



 オズワルド社長が去った後、スタッフたちの動きが徐々に再開していく。アリシアは深いため息をつきながら、額の汗を拭っていた。


「監督、次のロケの打ち合わせをお願いできますか? それと、明日のインタビューの時間も確認を」


 スミス助監督の声に、わたしは思わず振り向いた。誰が、何をするって?


「……インタビュー?」

「はい。業界誌の取材です。昨今の“ポリコレ論争”に関する監督の見解も、きっと注目を集めると思います」


 スミス助監督はスケジュール帳を広げながら、誇らしげに説明する。その表情からは、アリシアへの期待と自信が溢れていた。

 けれど、わたしは不安だった。


(大丈夫かしら……)


 アリシアも撮影現場では堂々としていた、それは実際にこの目で見たところである。

 でも、インタビューとなると話は別だろう。好きな映画の話になると饒舌になるとはいえ、基本的にはコミュ障で引っ込み思案の人見知り。しかもこんな大作の宣伝ともなれば、言葉選びも重要になってくるんじゃなかろうか。


「……あの、大丈夫?」


 わたしが心配そうに声をかけると、アリシアは少し困ったように笑った。


「う、うん。まあ、なんとか……映画のことだし」

「映画のことだからって、甘く考えないでよ?」

「インタビューの準備、僕が手伝います!」


 スミス助監督が勢い込んで言う。相変わらずアリシアへの好意を隠しきれていない様子だ。


「あ、ありがとう、スミスさん。でも大丈夫です。仕事ですから」


 アリシアの声は、先ほどまでの緊張が嘘のように、しっかりとしていた。

 ……そうだ。そうだった。仕事のことになると、アリシアは不思議と別人のように変わる。先ほどの撮影でも、スタッフたちを的確に采配していた。インタビューだって、きっと映画の話なら大丈夫なはずだ。


「……じゃあ、わたしはこれで」

「え? もう帰っちゃうの?」


 明らかに落胆するアリシア。やっぱりちょっと不安な気もしてきたが、ここで甘やかすとろくなことがない。

 わたしははっきり答えた。


「当たり前でしょ。こっちも仕事、抜け出してきたんだから」

「そっか……ごめんね、付き合わせちゃって」

「いいのよ。アリシアの元気な顔が見れて安心したし」


 わたしはアリシアの頭を軽く撫でる。すると彼女は満足げに目を細めた。


「うん! ありがとう、ミオちゃん! 今日は早めに帰れると思う!」

「そっか。じゃあ夜は、スシでも買って帰るわね」

「スシ! やった!」


 満面の笑顔で応えるアリシア。その横顔に、一抹の寂しさを浮かべるスミス助監督……まったく、この三角関係めいた空気は、いつまで続くのやら。

 スタジオを後にしながら、わたしはそんなことを考えていた。アリシアなら大丈夫。きっと素晴らしいインタビューになるはず――そう信じていた。


 だが、その考えが甘かったことを、わたしはまだ知らなかった。



「――本日は、実写版『ポリコレ姫』の監督に抜擢された新進気鋭の映画監督、アリシア=ブラック監督にお話を伺います」

「よ、よろしくお願いいたしますっ」


 白々とした蛍光灯の下、業界誌のインタビュアーがそう切り出した時、アリシアは思わず車椅子の肘掛けを強く握りしめて声を張り上げていた。

 普段は引っ込み思案な彼女にとって、プレッシャーがかかるインタビューは苦手な類のものだ。特にそれが映画の成否さえも左右しかねないというのならなおさら。隣では助監督のポール=スミスが心配そうに様子を窺っている。


「あの、その、まずポリコレ姫の第28期、通称"ルネサンス期"について! この時期ってのちにあの有名な『底無し谷のイマシカ』や『けものの姫』を手掛ける監督が手掛けてて本当に革新的で、特に第23話の『魔法の靴』は名作中の名作なんです! 演出のカメラワークが素晴らしくて、特にラストシーンでポリコレ姫が靴を捨てるときの……」

「ブラック監督」


 嬉々としてポリコレ姫トークを始めようとするアリシアだったが、インタビュアーはその止め処ない言葉を遮った。


「インタビューの時間は限られています。まずは今回の実写版についてお聞かせ願えますか?」

「え……あ、はい、申し訳ありません……」


 アリシアはその冷ややかな態度に一瞬たじろぐも、やがて意を決したように口を開いた。


「あ、えっと……今回の実写版ですが、まず主人公のポリコレ姫を黒人として描こうと考えています!」


 得意気に答えたアリシアだったが、一瞬、部屋に静寂が流れる。


「というのも、原作の童話では実は人種についての明確な描写がないんです! もちろんアニメ版では白人として描かれていましたが、これまでのシリーズでも時代に合わせて様々な解釈が行われてきました。例えば第34期の第12話では……」

「ブラック監督」


 再び遮られるアリシアの言葉。インタビュアーは物憂げな表情で追及する。


「率直にお伺いしますが、これは単なるポリティカル・コレクトネスへの迎合ではないのですか?」

「え……?」


 アリシアの表情が凍る。傍らのポール=スミスが抗議の声を上げようとするが、アリシアは制するように手を上げて言った。


「ち、違いますっ。これは決して迎合ではありません。むしろ原点回帰、元の童話に立ち返った解釈なんです!」


 アリシアの声は、徐々に力強さを増していく。


「例えば原作に登場する王子様の『呪い』。これまで単なるプロットの駆動装置として扱われてきましたが、よく読むと『呪い』の正体は明確には描かれていないんです。わたしはこれを、社会の偏見や抑圧のメタファーとして解釈しようと考えています!」

「具体的には?」


 促すインタビュアーの言葉に、アリシアは答える。


「はい。実は王子様は……女性なんです」


 インタビュアーが眉を顰め、ポール=スミスの表情が強張る。

 だがアリシアは、もう止まらなかった。


「原作で王子様は『本来の姿』を奪われた存在として描かれています。これって、社会の抑圧によって自分らしく生きられない人々の象徴として解釈できるんです。そして王子様は実は男装の麗人で、ポリコレ姫との間に芽生える愛もまた……」

「……つまり、ブラック監督の解釈では、ポリコレ姫はとして描かれる、と」


 嫌味な笑みを浮かべるインタビュアー。その表情には「またか」という諦めと、「これは面白い」という打算が混在していた。

 それには気づかず、アリシアは、自分の構想を嬉々と話し続ける。


「はい! でもこれは、原作の新しい解釈の可能性を示唆するものなんです。『ポリコレ姫』は50年もの間、時代とともに進化を続けてきました。例えば最初のアニメ映画で黒人の従者キャラクターがモンスターのスラッチュに置き換えられた時も大きな議論を呼びましたが、わたしはあれも一つの解釈だと思うんです。だって原作のキャラクターが持っていた『憎めない愛らしさ』という本質は、スラッチュにもちゃんと引き継がれていて……あ、そうそう、第28期の『魔法の靴』のエピソードでも描かれていますが、大切なのは……」

「ブラック監督」


 三度、遮られる言葉。インタビュアーはペンを置き、眼鏡を直した。


「あなたの、その、個人的な経験は関係あるのでしょうか?」

「……え?」


 言われた意味を理解しかねた様子のアリシアに、インタビュアーは意地悪な目線を向けながらこう言ってのけた。


「つまり、黒人で、障碍者である、あなた自身の経験が」


 瞬間、ポール=スミスが立ち上がった。


「そ、それは失礼じゃないですか! 監督の作品をそんな偏見で……!」

「スミスさん」


 だが、アリシアは静かに首を振った。そして毅然とした態度ではっきりと応える。


「……いいえ、わたしのことは関係ありません。これは『ポリコレ姫』という作品の新しい可能性を示すための解釈です。作品に普遍的に込められた『愛と希望』というメッセージは、決して特定の誰かだけのものじゃあないんです」

「…………。」


 真摯な瞳で語るアリシア。その表情は、もはや撮影現場で采配を振るう堂々たる映画監督のそれだった。

 そしてそんなアリシア=ブラックの言葉を、インタビュアーは熱心にノートに書き留めていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る