第2話 危機

「あの、新ダンジョンマスター様」若い冒険者が恐る恐る声をかけてきた。「最近、ダンジョンでちょっと困ってることがあるんです」


「どんなことですか?」


「倒したゴブリンが落とすアイテムの名前が、なぜか見たことない文字で表示されているんです」冒険者は眉間にしわを寄せながら説明した。「読めないものだから、貴重なアイテムなのか、それとも売り払うべきものなのか、まったく判断できないんですよ」


「それどころじゃありませんわ!」別の冒険者が割って入ってきた。「二階の一部で突然空中浮遊できるようになるのです!最初は面白がってたけど、天井に張り付いたまま動けなくなった人もいて大変なことになっています」


次々と報告される異常事態に、プログラマーとしての直感が震えた。これは単なるバグ修正では済まない、システム全体の見直しが必要な事態だ。


その時、アリアの表情が一変した。


「大変です!三階で深刻な事態が発生しています!」


映し出された映像に目を凝らした。そこには信じられない光景が広がっていた。無数のモンスターが湧き出し、その数はまるで蟻の群れのよう。しかも、その近くには松明を手に震える初心者冒険者たちの姿があった。


意識を三階の状況に集中させると、まるで自分がその場にいるかのように詳細な情報が流れ込んできた。モンスターの数、その増加率、冒険者たちの位置。すべての情報が瞬時に把握できる。分析の結果、このペースでモンスターが増え続ければ、あと五分で冒険者たちは完全に包囲される。


「このままでは冒険者たちが危険だ。即座に対策を取らなければ」


深く息を吸い込み、初めて意識的にこの世界へと干渉することを決意した。


「三階のモンスター生成、即時停止!安全な退避経路を確保せよ!」


その瞬間、予想外の光景が広がった。俺の命令が、巨大な光の文字となって空中に浮かび上がったのだ。まるで天からの啓示のように、金色に輝く文字が空間を切り裂いていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る