第2話 宇多上皇が源融の霊に会った話
今では昔のことですが、河原の院は、元は左大臣
陸奥国
醍醐帝は宇多上皇の子でしたから、河原の院には天皇が度々訪れ、優雅な時を過ごされたとのことです。
さて、宇多上皇がお住みになられてからのこと、夜中に屋敷の西の物置部屋を開けて物音を立てる者がいるのに気がついて、上皇が人を遣って確認させると、内裏に出仕する時に着るような正装をした者がいるといいます。
その者は太刀を腰に帯び、
誰であるのか問うと、その者は「この屋敷の主の
「
「さようでございます。」
なんとその者の正体は、かつてこの屋敷の主であった
「なんの用でここにいるのか。」
「この屋敷の主ですのでここに住んでおります。」
この霊は、この屋敷を自分の屋敷だと思って住み続けているらしいのです。しかし上皇が住んでいるのを知って、ありがたいやら、狭いやら、一体どうすれば良いのかと聞きに出てきたのだといいます。
「私が他人の屋敷を奪って住んでいるとでもいうのか。お前の子孫が献上したので住んでいるのだ。霊だとはいえ、物の道理をわきまえもせずになぜそのようなことを言うのか。」
上皇がこのように強く言うと、霊は瞬く間に消え失せ、二度と現れることはありませんでした。
当時の人々はこのことを聞いて、宇多上皇をたいそう尊敬したとのことです。
他の人だったら大臣の霊と出くわしてこのような適切な対応はできまいと、人々は語り伝えて来たのでした。
川原院融左大臣霊宇陀院見給語 第二
其の時の人、此の事を聞て、院をぞ
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