第3話 呪われた魔術師と天才自称家!
【森の中での出会い】
隼人たちが次の目的地へ向かう途中、道中で鬱蒼とした森に差し掛かる。森の奥からは時折、黒い煙が立ち上り、不気味な呪文のような声が聞こえる。
「……なんか嫌な予感がするな。」
隼人が気軽に呟くと、セシリアは剣を抜き、警戒を強める。
「ただの煙ではありません。この先、何かがあります。」
「いいじゃねぇか。何が来ても俺が全部解決してやる。」
「何を根拠にそんなこと言えるんですか!?」
「根拠?俺が天野隼人だからだ!」
エルフィーがため息をつきながら続ける。
「もう“根拠=自分”の論法は聞き飽きたよ……」
その時、森の奥から響いてきたのは、淡々とした声だった。
「来たのね……愚か者たち。」
声の主が現れる。それは、薄汚れた黒いローブを纏い、両手に奇妙な鎖を巻きつけた少女だった。
「私はルチア。呪いの契約者よ。ここに足を踏み入れたからには、逃げられないわ。」
隼人はその物々しい登場にも全く動じず、ニヤリと笑った。
「よし、俺がお前を仲間にしてやる。」
「……は?」
「なんだその態度?俺が直接スカウトしてやるって言ってんだぞ?」
ルチアは呆れたようにため息をつき、右手をかざす。すると、彼女の腕に巻きついた鎖が輝き、森全体が不気味な黒い光に包まれる。
「見せてあげる。これが私の“呪われた魔法”――!」
一瞬で隼人たちの周囲に黒い炎が広がり、地面が崩れる。魔法の圧倒的な力にエルフィーとセシリアは震え上がるが、隼人だけは平然としている。
「ふーん、まあまあの威力だな。」
「……お前、本当に人間なの?」
ルチアは少し興味を持ったように隼人を見つめた。
「……普通の人間なら、今頃恐怖で泣き喚いているはずなのに。」
隼人は笑顔を崩さず、彼女の呪いの鎖を指差した。
「お前、その鎖が原因で苦労してるんだろ?」
「……ええ、これは私の力の源でもあり、私を縛る呪いでもある。」
「よし、その鎖ごと俺の仲間になれ。」
「だから、なんでそうなるの!?」
隼人たちが言い争っている間に、森の奥から巨大な魔物が姿を現す。それは、無数の触手を持つ異形の化け物だった。
「おいおい、触手とか出てきちゃうのかよ!こいつらのテンションすげぇな!」
エルフィーが慌てて叫ぶ。
「そんな余裕言ってる場合じゃないってば!」
セシリアが剣を構え、隼人に怒鳴る。
「隼人さん!早く戦ってください!」
しかし隼人は悠々と腕を組み、ルチアを指差した。
「いやいや、こういう時のための“呪われた魔術師”だろ?」
「……は?」
「お前が力を発揮すれば、この場は一瞬で終わるだろうが!」
ルチアは目を細めて隼人を見つめた。
「……その代わりに、私の寿命が削れるのよ?」
「いいか?お前が力を使うたびに寿命が削れるとか言ってるけど、どうせ使わなきゃ全滅だろ?だったら削った方がマシだろ!」
「理不尽な説得力……!」
結局、ルチアは不承不承ながら魔法を発動する。
「……鎖よ、闇の力を解き放て――黒炎の牢獄(ブラックケイジ)!」
黒い鎖が魔物の体に巻きつき、その触手を次々と焼き尽くす。圧倒的な魔法の力で魔物を一掃したあと、ルチアはその場に膝をつく。
「……これで満足?」
隼人は彼女の肩に手を置き、満面の笑みを浮かべた。
「いいね!やっぱりお前みたいな奴は必要だ!」
「……お前、本当に性格悪いな。」
こうして、呪われた魔術師ルチアが仲間に加わった――。
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