第三話『血の行方』

——献血の血は、どこに行くのか?


 簡潔に言えば、①輸血、②研究試料、③廃棄である。


 事実、日本で献血を原料とした血液製剤を製造している日本赤十字社は、以下のように述べている。


〜〜〜以下引用(ルビ振り、記号による強調箇所あり)〜〜〜

 ソース:日本赤十字社-Q&A

 https://www.bs.jrc.or.jp/ktks/tokyo/special/m6_03_08_00_index8.html


Q.献血の血液はどのように使われているのですか。

A.【輸血用血液製剤】(赤血球、血漿けっしょう、血小板)として使用されるほかに、血漿中の特定のたんぱく質を抽出・精製した血漿分画製剤けっしょうぶんかくせいざいや血液の安全性を高めるためのさまざまな【研究】等に使用されています。


Q.輸血に使用されなかった血液はどうなっているのですか。
A.各種検査で基準を満たさない血液や有効期間を過ぎた輸血用血液製剤、検査に用いた検体の残りなどは、輸血の有効性や安全性の向上のための研究や安全な輸血のための【検査試薬】製造等に有効に活用しています。さらに、国の指導の下、他の研究機関との共同研究にも使用しています。しかし、残念ながら上記以外の血液は【感染性医療廃棄物】として適切な管理のもとに処理しています。

〜〜〜引用終わり〜〜〜



 ここでいう「輸血」というのは、事故や病気で血液が必要な人たちへの輸血、がもちろんある。


 しかし、もう一つ忘れてはならないのは……



——「寝たきり」の超高齢者への輸血、である。



 令和4年度における東京都における全輸血のうち、70歳以上の超高齢者への輸血割合は、64.2%※1である。これは、総務省統計局の人口推計では同年10月度の日本総人口総計が124,947千人(≒1億2500万人)、うち70歳以上は28,702千人(≒2870万人)であり、22.97%※2しか占めていないことを考えると、明らかに、超高齢者に対する輸血が他の世代に比べて遥かに多く実施されていることを表している。それらを全て寝たきりの超高齢者に対するものと断定はできないが、相当数が、占めているはずである。

(注意:東京都の令和四年度の70歳以上人口の割合が算出できなかったので、全国の70歳以上人口の割合を適用しております)


〜〜〜ソース提示〜〜〜

 ※1ソース:令和 4年 東 京 都 輸 血 状 況 調 査 集 計 結 果 ( 概 要 ).p5

 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/r4gaiyo


 ※2ソース:総務省統計局 人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐

 https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html

 ↓上記総務省公式ホームページから見れる公式統計のエクセルの表のタイトルです。

 参考表1 年齢(5歳階級)別人口―総人口、日本人人口(各月1日現在)(エクセル:20KB)

 https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/zuhyou/05k2022-4.xlsx

〜〜〜ソース提示終わり〜〜〜



 具体的に「寝たきり」に焦点を当てると、自宅ではない施設での寝たきり高齢者は、推計300万人以上※3、うち、経口での食事ができない胃瘻による経管栄養の者は、25万人以上※4、と言われている。 



〜〜〜ソース提示〜〜〜

 ※3、※4ソース:集英社オンライン 日本の寝たきり老人数、推定300万人以上は世界断トツ1位! 精神科ベッド数も全病床の21%で世界一…日本医療制度の欠陥と利権のせめぎ合い

 https://shueisha.online/articles/-/155893?page=1

〜〜〜ソース提示終わり〜〜〜



 そして寝たきりになると、人は……



——血を失う。



 血を失う理由として、まず、血便けつべんがある。


 寝たきりは、つまりは重力(= 垂直方向の力)による血流への加勢が極度に減り、体を動かさないことを意味するので、特に重要な足腰の動きが無くなり、筋肉が動かず、血流が悪化する。個人差はあるが、寝たきりは心臓からの血流を10%前後下げると言われる。すると、血液の循環機構にバグが生じる。寝たきりになると人体は、臓器の集まる上半身へと優先的に血を送るようになり、上半身の血液すなわち水分過多、そして体はそれを排出しようとして慢性まんせい的高利尿作用の働いた状態となり、体全体としては、脱水気味となる。これは、腸の機能低下につながる。

 また、寝たきりで歩かないと、腸の蠕動せんどう運動(=便の移送)が抑制され、便秘になる。そして腸が詰まるがために、腸壁とその周辺が圧迫され、虚血になる。

 機能が下がり、虚血となった腸の粘膜は、剥がれ落ち始める。すると、出血。血便として出るわけである。だから、輸血が必要な貧血となる場合が多い。


 次に、皮下出血と内出血。


 超高齢者は、老化により血管がもろくなっており、体をどこかへちょっとぶつけただけで、簡単に皮下出血、内出血してしまう。もしそれが、厚労省の示す『血液製剤の使用指針』の中で輸血を必要とするレベルのものなら、これもまた、輸血が必要となる。



 老化という自然現象に抗うために、輸血が行われる、それも、そのうちの相当数が、もはや会話も運動も食事もその他自分で一切身の回りの世話ができなくなった方に対して、必要かどうかわからない延命のために行われる輸血なのである。

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