うちの夫がかわいくて

無雲律人

1.君はいつだって私に色をくれる

 私は基本的にアンニュイな人間だ。


 感情の起伏は激しい方だが、安定している時は基本的に低めのテンションで過ごしている。口癖は「だるい」「面倒臭い」「お腹空いた」、これである。


 そんな私にとって、日常は平和であればある程良いもので、何も起こらない日は極上の一日、となるのだが、それに伴って目に映る風景は色褪せて見えている。


 おしゃべりも好きだし、盛り上がる時は盛り上がる性格だが、酒を飲んでうぇーいとなるわけでもなく、自分に合った話題の時だけ饒舌になる陰キャタイプの人間だ。


 そんな私の前に現れた君は、私の世界を一気に色鮮やかなものに変えた。


 毎日君が「ただいま」と帰宅すると、世界の色が一変する。急に全てが輝かしく素晴らしい極彩色ごくさいしきに変わるのだ。


 君が特別ジェントルマンで、私をお姫様のようにエスコートしてくれるわけではない。むしろ君は私以上の陰キャで、家族以外の前ではろくに会話もしない人間らしいじゃないか。


 でも、君と言う存在が私の心をほっこりと温めてくれる。


 上手くいかない個人事業。いつだって税務署の人間に笑われているような気がして、確定申告のたびに憂鬱になる私。月の収益は三桁円で、経費の方がよほど掛かっている零細個人事業主だ。


 でも、君の笑顔を見るとそんな世知辛い現実なんてどうでも良くなってくる。


「この笑顔を守れるのならば、私は家庭を守る事を第一としよう」


 執筆も音楽制作も私には捨てられない衝動だ。どちらも私の人生には欠かせないものだ。でも、君の休みの日は私も共に休んで、君と時間を共有しようと思わせてくれる。


 週五日で創作に打ち込めるならば、週二日の君の休みくらい君のために使っても罰は当たらないだろう。


 毎晩君の寝顔を見ながら思う。何でこんなに君はかわいいのか、と。


 君は私より十三歳年上だ。もうすぐ還暦を迎えるおっさんだ。でも、私の目には君は少年のように映っている。


 いつも無邪気さを失わない君。

 いつも笑顔で私を包み込んでくれる君。

 いつも思いやりの心で私や両親に接してくれる君。


 君は、一般的には優しいだけの男かもしれない。世間の荒波の中でもみくちゃにされて来て、不器用な生き方をして来たかもしれない。


 でも、君は私にとって唯一無二の大切な存在なんだ。


 年下妻の私は、君の事を本当にかわいい存在だと思っている。それを、皆さんと少し共有したいと思う。

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