お弁当券

 その日は、母の踊りの発表会だった。母が叔母に頼んで受付を手伝ってもらっていた。


 私と主人と保育園児だった娘と一緒に会場に行き、お弁当を2つもらった。


 事前に母にお弁当はいるか聞かれていたので、娘はこういうお弁当好きじゃないから私と旦那の分2つで、と頼んでいた。


 受付で叔母に


「3つ?」


 と聞かれたので、


「2つでいい」


 と答えた。これで、いいはずだったけど。


 発表会が終わって、母に


「お弁当3つもらった?」


 と聞かれた。


「2つでいいって言ってたじゃん」


 というと、


「えっ、お母さんお金払って注文して、叔母ちゃんに渡すように頼んどいたんだよ」


 と言う母。


「えっ、2つでいいって言っちゃった」


 お弁当は券を買って券を交換するスタイルだったらしいが、母が叔母に確認すると、叔母は言ったそうだ。


「券なんか、私が持ってるよ」


 と、今はなんの意味もないただの紙切れになった”お弁当券”を、得意げに差し出して来たそうだ。


 お弁当券は3枚持っている。でも、相手が2つ言っているから2つ渡す。


 間違ってはいないのかもしれない,,,。


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あんぱん 一郎丸ゆう子 @imanemui

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