7 再戦

闘技場の熱気はこれまで以上に高まっていた。

観客席からは興奮した叫び声が飛び交い、その視線はすべて闘技場の中央に向けられている。


俺の目の前には、再びあの男が立っていた。

二戦目で俺に「死」を経験させた相手――即死魔法を操る魔術師。


「またお前か。今度はどう転がるか楽しみだな。」

奴の声には余裕が漂っていた。



だが、前回とは違う。


俺は手にした黒炎の霊刃を静かに構えながら、神威と念話を交わす。


「即死魔法への対策は万全だな?」

「ああ。あの錬金術師が用意してくれた防御具がある。これで奴の魔法はもう効かない。」


「ならば、安心して進むがよい。だが気を抜くな。奴は巻物だけが武器ではないはずだ。」

「わかってる。」


俺は一歩前に出る。

観客たちが息を呑む音が聞こえた。


「準備はいいか!戦闘開始!」


合図とともに、奴はすぐさま巻物を取り出した。


「また同じ手を使うのか?」


俺は冷笑を浮かべながら、距離を詰める。

黒紫の光が巻物から放たれたが、魔石が埋め込まれている小さなロッドから光が放たれ、瞬時にそれを無効化する。


「なにっ!?」


驚いた奴の顔が歪む。

その一瞬の隙を逃さず、俺は黒炎の霊刃を振り下ろした。

だが、奴は俊敏に後退し、反撃の準備を整える。


「面白い。だが、これだけで終わると思うな!」


奴は巻物を捨て、両手に炎の魔法を纏わせて突進してきた。


「なるほど。ようやく本気を出すか。」


俺も加速魔法を使い、瞬時に距離を詰める。

炎の拳と黒炎の刃がぶつかり合い、闘技場全体が眩い光に包まれる。


観客たちは歓声と悲鳴を上げている。

だが、俺の意識は目の前の敵だけに集中していた。


「奴の攻撃に迷いが見えるぞ。次の一手で決着をつけろ!」


神威の声に従い、俺は全身の魔力を黒炎の霊刃に集中させた。



刃が赤黒い閃光を放ち、奴の防御を突き破る。

炎の拳が空を切り、奴の体が地面に叩きつけられた。


「ぐっ…!」

奴は動けない。

俺は剣を構えたまま、観客たちに背を向ける。


「勝者、仮面の戦士!」


歓声が一斉に上がる。

だが、俺の心には勝利の余韻ではなく、新たな戦いへの期待が渦巻いていた。


控室に戻ると、神威が静かに語りかけてきた。


「これで借りを返したな。」


「ああ。だが、こんなものは通過点だ。まだまだ上には強いやつがいるはずだ。」


「そうだな。その目で確かめるがよい。」


俺は仮面を外し、深呼吸をした。

次なる戦いへの準備は整っている。


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