6 錬金術師との出会い、ざまぁ
市場で聞いた情報を頼りに、錬金術師の工房を訪れた。
そこは古びた石造りの建物で、内部には奇妙な道具と瓶が所狭しと並んでいた。
漂う薬品の匂いが鼻を刺したが、それよりも気になるのは工房の奥に座る老人だった。
老人は俺を一瞥し、ゆっくりと立ち上がる。
「何を求めてここに来た?」
「即死魔法に対抗できるものが欲しい。」
俺の言葉に老人は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐにニヤリと笑った。
「なるほど。それなら…適した魔石を用意する必要があるな。」
工房の奥から取り出されたのは、黒紫色に輝く魔石だった。
「これを基に、特別な防御具を作ることができる。魔石が埋め込まれている小さなロッドだ。だが、安くないぞ。」
老人の目が鋭く光る。
「いくらだ?」
「金ではなく…後から何か頼むかもしれん、その時に協力してくれ。お前さん相当強いな…佇まいで分かる。」
俺はしばらく考えたが、頷いた。
「いいだろう。」
錬金術師の手によって、魔石を使った新たな装備が作られていく。
それを手にした俺は、次の試合への準備を整える。
「このアイテムで即死魔法にも対応できる。次は負ける気がしない。」
神威が満足げに呟く。
「良い判断をした。」
新たな力を手にした。
次はどんな強敵が待ち受けているのか。
期待と緊張を胸に、俺は再び闘技場へ向かう。
闘技場方面に歩いていると、奇妙な気配を感じた。
俺は足を止め、人々の流れに紛れて様子を伺う。
視界の端に、一人の若い女性が歩いているのが見えた。まだ二十歳そこそこだろう。彼女の背後に、影が張り付いている。
気づいているのは俺と神威だけだった。
周囲の誰もその異様な空気に気づかない。
影を作るのは四人の男たち。
その顔ぶれに見覚えがあった。
何度かギルドで見かけたことがある連中だ。
どいつも悪評高いが、ここまで露骨な真似をするとは思わなかった。
”お主、あの連中が何をしようとしているか分かっているな?”
神威の声が頭に響く。
「当然だ。」
女を誘拐しようとしている。それは明らかだった。
どこかに連れ込む算段だろう。
このままでは危険だ。
俺は人混みの中を滑るように動き、尾行者たちを追う。
四人の男は、彼女が人気のない路地に差し掛かったところで動きを早めた。
すれ違うふりをして前後を塞ぐ。
手際が良い。
慣れているのが分かる。
「そこのお嬢さん、ちょっといいか?」
前に立った男が低い声で話しかける。
同時に、背後の男がゆっくりと距離を詰めていく。
残りの二人は左右に広がり、完全に逃げ場を塞いでいた。
だが、そこまでだった。
俺は
路地の入り口から
瞬時に間合いを詰めた
足音すら立てない
男たちが
女に手を伸ばす前に
俺の声が路地に響く
「動くな。」
鋭い声に、四人がハッと振り向く。
仮面越しの俺の視線が、彼らを射抜く。
「てめえ!」
前の男が威勢を張るが、その足は既に後退し始めていた。
俺は答える代わりに、一歩踏み込む。
「逃げる暇はないぞ。」
背後の男が慌ててナイフを抜くが、その動きは遅い。
俺は腕を振るい、黒炎の霊刃を鞘からわずかに抜く。
その刃先が空を切る音と共に、ナイフが彼の手から弾き飛ばされた。
「くっ!」
叫び声を上げた男が後ずさる。
だが、その場に逃げ場はない。
俺は素早く距離を詰め、拳を彼の腹に叩き込む。
重い音と共に、男は崩れ落ちた。
「次はお前だ。」
前の男が震えながら後ずさる。
残りの二人も一瞬動きを止め、どうするべきか判断に迷っている。
だが、俺は迷いを許さない。
「悪かった!もうしない!」
懇願の声が路地に響く。
だが
俺は容赦なく
その男の膝を蹴りつけ
骨を折り
動きを封じた
骨は狙わないカーフキックも選択肢にあったが、より視覚効果を狙える蹴りにした。
残りの二人、その目は完全に恐怖に支配されている。
女は呆然と立ち尽くしている。
俺は振り返る。
「もう大丈夫だ。憲兵を連れてこい。」
彼女は頷くと、その場から駆け出していった。
残された男たちを見下ろしながら、俺は黒炎の霊刃を鞘に収め直す。
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