第2話 僕の応援演説は無駄でした
生徒会役員選挙が開始される1週間ほど前、友人は立候補者を辞退することとなった。
以降、彼のことを
溝野は頭が良く、彼の兄も有名な国立大学に進学したらしく、周りからも将来を期待されていた。
何故、そんなやつが不良どもの巣窟であるクラスに居るのかは甚だ疑問だったが、なにはともあれ僕と同じクラスだった。
彼は年中眠そうな顔をしており、しょっちゅう授業中に居眠りをしていた。
だが、彼は要領が良いので、寝ていい授業とそうではない授業を分けており、叱られている姿を見たことは僕の記憶上一度も無かった。
ちなみに、担任の授業はほぼ全ての時間寝ていたと思う。
僕が彼の応援演説をした数日後のことだった。
その日は、新任の若い教師が理科の授業をやっていた。その先生も年齢を理由に不良たちから目をつけられており、授業がまともに進められていなかった。
相変わらずの授業中とは思えない喧騒の中、僕がふと溝野の方を見ると、彼はウォークマンを両耳につけ、うつらうつらと船を漕いでいた。
うちの中学では携帯電話の持ち込みも禁止であり、ポータブル音楽プレーヤーに関しても同様である。僕は呆れながらも、まぁ問題にはならないだろうとたかをくくっていた。
だが、僕の予想は大きく外れることとなる。なんと、不良の1人が教師に溝野がウォークマンを学校に持ち込んでいることを報告したのだ。
溝野はウォークマンを靴下に隠し、隠蔽を図ろうとしたが駄目だった。今思うと、かなりの悪あがきだったと思う。結局、溝野はウォークマンを没収され、学年主任により別室に連行されることとなった。
帰ってきた溝野は僕へ一言。
「わりぃ。俺候補者から外されたわ」
溝野はあちゃーという顔をしながら平然と言いのけた。
当然と言えば当然である。だが、選挙期間くらいはもっと大人しくできないものかと僕は頭を抱えた。
こうして、僕の応援演説は無駄となり、また平凡な日々が帰ってくる――そう、僕は思っていた。
だが、現実は違った。
担任は僕に向けて告げる。
「つぴくん。君が生徒会役員になってくれないか?」
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