ワンオペ図書委員長 僕
不労つぴ
第1話 応援演説なんかしたばっかりに
もう十年ほど前の話になるだろうか。
そのときの僕は、中学二年生だった。
僕の通っていた中学は治安があまり良い方では無かった。それに加えて当時、僕が所属していたクラスはオブラートに包んで言えば、素行があまり良くない生徒、ストレートに言うのであれば不良が多く在籍していた。
僕の目から見ても、その偏りは異常だったので、教師陣の何かしらの意図があったのかもしれない。
しかも、運の悪いことに、僕のクラスの担任は赴任してきたばかりの覇気のない中年教師だった。
後に彼は、本来2年生までに授業で終わらせていないといけない範囲を終わらせておらず、それを隠蔽したことにより学校を巻き込んだ大問題となるが、それは別のお話。
不良たちは絶好の獲物を見つけたと言わんばかりに担任へ攻撃をしかけ、とうとう授業もままならない学級崩壊を引き起こしてしまった。
どのくらい荒れていたかというと、授業中にシャープペンシルの芯をコンセントに差し込み、ライターで燃やしたり。授業中に3DSで某有名生物災害ゲームの協力プレイをやっていたり、観葉植物を燃やしたりと全国の荒れている学校ならよく見られる光景だったと思う。
そんな中、僕は不良たちにイジメられるわけでもなく、担任への反抗に参加するわけでもなく、普通の生徒をやっていた。
担任からしたら僕は、曲者の集まりの中でも珍しい手のかかからない生徒だったので、結構信頼されていた方だと思う。
そんな中、生徒会役員選挙の時期となり、僕のクラスからも立候補者を出す運びとなった。
選ばれたのは、僕の友人だった。彼は成績優秀で、素行も表面上ではとても良かったのであの担任にしてはえらく真っ当な判断だと僕は思った。
友人は僕へ、自分の応援演説をやってくれないかと依頼してきた。何故僕なのかと彼へ聞いたところ、お前はここでは比較的マトモな方だからと返された。悲しいことに僕も少し納得してしまった。
彼らは少しヤンチャではあるものの、基本的に皆いい奴ではある。不良の多くが、僕が通っていた小学校出身というのもあり、比較的仲が良いのもあるかもしれない。
だが、彼らに応援演説を任せようものなら、一体何をしでかすか分からない。そんな危うさを彼らは持っていた。
僕は気乗りしなかったが、友人のためなら仕方ないと思い、早速応援演説の原稿作成に取り掛かり始めた。
そうして、僕が彼の応援演説をしてすぐ。
友人は生徒会役員選挙から降ろされる運びとなってしまったのだった。
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