第26話
「こんな場所で立ち話もなんですから、そろそろVIPルームに案内をお願いしても良いですか?」
俺は静かに微笑む。
こんな場所で止まってていたら他の客にも迷惑がかかるしね
「はっ、そうですね。サブマネージャー、ご案内を」
牧瀬が倉木へと指示を出す。
「かしこまりました。若頭、皆さまこちらへどうぞ」
倉木の言葉に、由來はゆったりと歩きだす。
アリスの肩に回っていた手は腰へと移動していた。
密着度が増すそれに、アリスは少し抵抗を見せてる。
ククク...本当に面白い。
由來とアリスを警護するように李斗と和毅も歩きだす。
「本日、女の子はどうしましょうか?」
牧瀬が気難しげに立ち止まってる俺に聞いてくる。
「今日は誰が居るんですか?」
呼ばない訳にはいかないので、一応聞いておこうか。
「No.1とNo.3が出勤してます」
由來が来た時は、Noが高い順にVIPルームに来るのが暗黙の了解になってる。
あまり低い子達だと粗相を犯すからね。
「そう。通してくれて良いですよ。但し、立場を弁えるように一言添えるのを忘れずに」
俺は黒い笑みを牧瀬に向けると、4人の背を追った。
「かしこまりました」
背後から聞こえてきた牧瀬の声は緊張に震えていた。
今日と言う日を彼はきっと忘れることが出来ないだろうね。
アリスの登場はそれほどに凄いことなんだ。
足を踏み入れたクラシックのピアノが流れるそこは、静かに時を刻んでいた。
高級CLUBと言われるだけあって、客も女の子達も下品に騒いだりしてはいない。
静かで優雅に酒を飲む姿が見てとれた。
満員御礼の店内にほくそ笑みながら、周囲を見渡した。
サブマネージャーに案内される由來達に様々な視線が向けられていた。
キャストの女の子達の驚きを隠せない顔が面白い。
由來を知る各界のお偉方も由來のアリスに対する態度に目を丸めてる。
そして、アリスへ向かう視線は吐息が混じる。
「亜理子じゃないか?」
と声が上がる。
ん? 誰だ、無作法に声をかけるのは。
視線を向けた先には、小綺麗な紳士と青年の姿。
ボックス席に座る彼らはどこか見覚えがあった。
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