第22話

雑踏の中を進んで行き着いた先は、繁華街の中心にそびえ立つ20階建てのビル。

目的の高級クラブは最上階。

完全会員制のそこは、各界の著名人や有名人で賑わってる。

在籍する女の子達も、高級クラブだけあって粒揃いなのは確かだ。

強かに男心を操作する彼女達は間違いなくプロだ。

それは認めるけれど、自分の立場もわきまえずに由來に媚を売るのは頂けない。

だから、今日は嫌ってほど思いしって貰うよ。

自分達より上がいることを。

そして、その立場を自分達が揺るがすことなんて出来ない事を。


ククク...ああ、今から彼女達の反応が楽しみだ。

由來の隣で少し不機嫌なままのアリスを見る。

嫌みがない程度に着こなされたブランドのワンピース。

水色のサテンの生地に白いレースをあしらわれたそれは、アリスの上品さと優雅さを引き立てている。

さらりと揺れるブロンドの長い髪は痛みすらなくアリスの背中でその存在を誇示してる。

ああ、三年前よりも更に綺麗になったアリスは、クラブのスタッフの誰にもひけをとらないだろうね。



「ねぇ、ここに入るの?」

アリスの疑問に、

「ああ、ここの最上階だ」

と由來が答える。


「ふ~ん、そう」

興味なさげな返事を返しながらもアリスはビルに備え付けられてるボードに目を向けた。

そこに書かれてるのはこのビルに入ってるテナントの名前と階数。


「このビル自体も宇佐美組が所有者ですよ」

豆知識を伝える。


「へぇ。ダンススクールやジムもあるのね。あ、普通の飲食店もある」

ボードを熱心に見るアリスに、

「二階の中華料理屋が美味しいんだよ」

と李斗が説明する。


「あ、中華料理良いね」


「今度食べに来ようよ」


「うん、そうしよう、李斗」

と二人で約束なんてしてる。

あぁ...また由來が拗ねるじゃないか。


「二人きりとか無理だからな」

ほら、二人の間に割ってはいったし。

黒いオーラ出しすぎですよ。


「えぇ~! つまんない」

李斗は唇を尖らせる。


「俺も中華料理行くからな」

和毅もはいはいと手を上げる。

いや、ビルの真ん前で何してるんだ。

ほら、何事かとギャラリーが集まってきたし。

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