第19話

「て、言うかさ。1つ聞いても良い?」

由來と手を繋いだまま振り返ったアリス、その視線の先は俺に向いていて。

チッ...由來の不機嫌な舌打ちは一先ず無視だ。


「何でしょうか?」

涼しげに聞き返した俺に、

「私、何処に連れてかれるのかな? だいたい何のために繁華街の真ん中を練り歩くんだろうか?」

アリスの顔は周囲の視線を面倒臭いと言わんばかりの表をしている。

由來が何も伝えずに連れてきたのだと知る。

まったくうちの王様は困った人だ。 

まぁ、敢えて言わなかった理由は分からなくもないけどね。


「まず、何処に行くか...ですが」


「うん」

アリスの隣に並ぶようにして説明を始める。


「由來の仕事に同行してもらう為です」


「はぁ? どういう事よ」

ほら、不機嫌になった。

うん、想定内の反応だね。


「言葉の通りですよ。本日はクラブが二軒とキャバクラを一軒、定例視察です」


「いや、だから、私が行かなきゃいけない意味が分かんない。由來の仕事でしょ?」

アリスはかなりご立腹だ。

この反応が分かってたから由來は敢えて言わなかったんだ。

本当に狡いよね。


「あ、それととこうやって歩いてるのはアリスのお披露目です。由來に近付くくだらない生き物を牽制するために」

アリスの苦情を無視してもう1つの質問に答えた俺に、

「...面倒臭い」

ボソッと言ったアリス。

彼女が心底嫌がってるのは、その顔を見れば一目瞭然だ。


「ククク...おっしゃると思いましたよ。でも、もう逃げられません」

俺は黒い笑みを浮かべた。

アリスには由來の側にずっと居て貰いたいですからね、こう言うのは早めに体験しておいて欲しいんですよね。

...チッ..アリスの舌打ちは実に不機嫌そうだ。


「ちょっと、由來どういう事よ。どうせ由來が決めたんでしょ。何が楽しくて着飾った女がいる場所に行かなきゃいけないのよ。どうせ、面倒臭い事になるに決まってるのに」

怒りの矛先を俺から手を繋ぐ由來へと向けたアリス。

よく分かってる。

アリスの言うように、面倒臭い事になるのは想定内ですよ。

だからこそ、連れていくんです。

出る杭は早めに打ち込みたいのでね。

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