第14話
「うん、ちょっと疲れたかも」
体は上手く言うことを聞いてくれない。
「分かった」
由來はそう言うと私を抱き抱えて立ち上がる。
来たときと同じ様にお姫様抱っこでベッドまで運んでくれた。
「ありがとう」
優しくベッドに下ろしてくれた由來に微笑んだ。
「問題ねぇ。あんま無理すんな、少し眠れ」
由來は優しい瞳で私を見下ろすと掛け布団を胸元までけてくれた。
「じゃ、俺達は帰るな。リハビリ頑張れよ! 組の連中も亜理子が心配で仕方ねぇらし」
ソファーから立ち上がってベッドの側までやって来た宇佐美組長はそう言って口角をクイッと上げる。
「はい、わざわざありがとうございました」
「いや。気にすんな。何か不便があったら直ぐに言えよ?」
「はい」
「藤次より先に俺に言えよ?」
割り込んできたパパ。
何を張り合ってんの?
「了解。私は大丈夫だから、仕事頑張ってね?」
「おう、任せとけ」
自分の胸をポンと叩いたパパ。
そんな仕草に思わず笑みが漏れる。
パパにも心配かけたもんね。
これからは親孝行を少しずつしていけたら良いなと思う。
騒がしかったパパと宇佐美組長が帰ってしまうと、由來と二人きりになった。
ま、当然なんだけどね。
ちょっと緊張する。
「由來も帰ってね。仕事あるんでしょ?」
「大丈夫だ。午後からの仕事は夜の巡回だけだ」
「巡回?」
「ああ。組の凌ぎのほとんどは水商売の売上だからな。時々巡回や視察をして店の動きを見とかなきゃなんねぇ」
「なるほどね。クラブとかキャバに行くってことね」
少しだけ苛っとした。
仕事だから仕方ないと思うんだけどさ。
女の子の居るお店...モヤモヤするなぁ。
だって、由來はモテまくりだろうしね。
「お前が考えてる様な事はねぇからな?」
少し焦った顔の由來が面白い。
「私の考えてる事って?」
わざとらしく首を傾けてみた。
「側に女を侍らせて酒を飲んだりしてねぇってこと。VIPにはその店のNo.1とNo.2は呼ぶけど、それは今後の士気を上げるために仕方なくだ」
「そう」
女の子は居るんだね。
まぁ、若頭の仕事なんだから仕方ないんだけどさ。
なんだか、胸の奥が少しもやもやした。
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