第11話

「激しいスポーツってのはどんなだい? 例えば喧嘩とかもそれに入るか?」

パパがいたって真面目にそんなことを聞く。


「激しいスポーツは足を使う陸上競技などでしょうか。喧嘩ですか?..回し蹴りなどの足技は厳しいでしょうね」

パパの質問に真面目に答えながらも、先生は私の方を複雑そうな顔で見ながらそう言った。

うん、私って見掛けだけなら喧嘩なんてしそうにないもんね。


「だってよ? お前の得意の回し蹴り封印だな? これからは大人しく俺に守られてろ」

意地悪そうに口角を上げた由來が私を見下ろした。

悔しいけど...キュンと来たじゃん。


「...うん」

三年前の私ならきっと守られるなんて嫌だと言ったと思う。

今は素直に頷ける。

由來の優しさも心も知ったから。


「クッ...よし良い子だ」

満足そうに口元を緩めた由來は私の頭を優しく撫でた。


「お、俺はまだ聞いてねぇぞ。由來と亜理子が付き合うだなんて」

と焦ったように叫んだパパは、

「空気読めよな」

と宇佐美組長に諌められる。

パパは相変わらず空気が読めないらしい。


「亜理子さんは回し蹴りが得意なんですか?」

至って真面目に聞いたのは主治医の先生で、出来れば聞き流して欲しかったと切実に思った。


「こいつは手のつけらんねぇじゃじゃ馬だからな」

意味ありげに私を見下ろした後先生を見た由來。


「なっ...」

なに言っちゃってくれてんのよ!

失礼な。

キッと由來を睨み上げて、由來の肩にパンチをお見舞いした。


「...いてぇだろ」


「痛くしてるわよ」

ふん、良い気味よ。


「じゃじゃ馬なぐらいが良いです。これからの数ヵ月の治療は少し根性が要りますからね」

先生、サラッと怖いこと言わないでよ。


「...だとよ? どうする、亜理子」

うわぁ、今の由來悪い顔してる。


「やるに決まってるでしょ」

私は決めたんだから、乃絵留の分もしっかりと生きるって。

どんなに辛くても頑張るに決まってる。


「その言葉を聞けて安心しました。一緒に頑張りましょうね」

先生の差し出した手を握ろうと伸ばした手は由來に阻止される。

そして、何故だか由來が先生と固い握手をしてた。

なにしてるんだ?

先生の顔もひきつってるじゃない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る