第8話
「急に突き飛ばしてごめんね? 驚いたよね」
助けようと必死で突き飛ばした事を思い出す。
「ううん、大丈夫」
この子の笑顔が見れるなら、私のお節介も役に立ったと思う。
「亜理子さんが庇ってくれてなかったらこの子は今頃...本当に...ありがとうございました」
号泣しないでください。
困ったなぁ。
「小さな命守れて良かったです。だから、もう頭は下げないでください」
そんな風にして欲しくてやったんじゃない。
体が勝手に反応しちゃっただけ。
「...で、でも、私、亜理子さんにこんなにお怪我をさせてしまった責任を....」
「奥さんが責任を感じる事はないです。私が勝手にしただけだし。それに、こんなの直ぐに良くなります」
ガッツポーズをして見せる。
本当は体がギシギシ鳴ってたけど。
でも、これ以上目の前のこの人に苦しまないで欲しいから。
親子であの事故の日から毎日お見舞いに来てくれてたと由來が言ってた。
毎日、沢山の花を持ってくるから、私の病室は花だらけになり、由來が手ぶらで来ないなら来るのは止めて欲しいと止めたそうな。
私は未だに花が沢山飾られてる病室をゆっくりと見渡した。
「もう十分してもらいました。だから、お見舞いももう良いですよ。私も直ぐに退院しますし」
医師には暫く掛かると言われてるけれど、この親子の生活にこれ以上影響を与えるのは本意じゃない。
「...亜理子さん...」
ウルウルとした瞳で見つめられた。
「お子さんと元の生活に戻ってください」
「は...はい、ありがとうございます」
「お花屋さんの先にある墓地に私の大切な人が眠ってるんです。だから、また必ず伺いますからその時はお花を少しサービスしてくださいね」
フフフと笑って見せる。
「はい、もちろんです。とびきり綺麗なお花をプレゼントします」
明るい表情になった花屋の奥さん。
「じゃ楽しみにしてます」
この人が私を気づかって心を痛めたりしなければいい。
「また来てね。お姉さん」
男の子が私の手に触れてそんな風に言ってくれるから、
「うん、絶対に行くね」
と微笑んだ。
二人が笑顔で帰っていくのを見送ってほっとした。
誰かを苦しめたくて助けた訳じゃないし、奥さんには苦悩してほしくないもんね。
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