第3話

騒がしい病室に主治医がやって来て、皆が追い出されたのは言うまでもない。

目覚めたばかりの私は色んな診察と検査を受ける事になった。

由來は、何だかんだと付きっきりで。

また明日来ると帰った皆と、俺は残ると言い張った由來。

そして今、病室には二人きり。


「ね、帰って良いよ。由來も忙しいんじゃないの?」

と言ったのに、

「問題ねぇ。心配すんな」

と返された。

ってか、組の方は良いんですか? 若頭さん。



「いや、そろそろ帰ってきてもらわないと困ります。若」

ドアノブを押し開けていたその声の持ち主は眼鏡のブリッジをクイッと指で押し上げた。

もちろん、黒い笑みを浮かべて。


「うっせぇよ」

不機嫌な由來は、声の主を睨む。


「...玲哉?」

名前を呼べば私の方へと歩いてきて微笑んだ。


「アリス、目を覚ましてくれて良かったです。とても心配していました」


「うん。ごめんね、心配かけて」


「いえ、こうやって目覚めてくれたらそれだけで良いんです」

優しい微笑みに胸が温かくなった。


「...ありがとう、玲哉」

玲哉をウルウルと見つめたら、

「他の男にんな顔見せんじゃねぇよ」

と由來に怒られた。

由來は、なにげに焼きもち妬きだ。


「はぁ、俺にまで威嚇しないでくださいよ。それより、いい加減戻って仕事してください。由來が返ってこなかったこの一週間分の仕事が溜まってます」

呆れた様に溜め息をついた玲哉。

ほら、やっぱり仕事あるんじゃん。


「...チッ...面倒臭せぇ」

いやいや、そんな黒いオーラ出しちゃ駄目でしょ。

だいたい、悪いのは由來でしょ?


「由來、行って。私はもう大丈夫よ。ここ病院だし」

由來の仕事を邪魔したくない。


「...本当に大丈夫か?」

そんな心配そうな顔しないで。

由來の頬に手を伸ばす。


「うん。仕事が終わってからまた来て。会いたいから」

だから、今は由來はやらなきゃいけないことをして欲しい。


「ふっ...分かった。そう言うなら行ってくる」

由來はクイッと口角を上げると、私の頬にキスをした。


「なっ....」

ま、また恥ずかしい事を....。

玲哉の目の前で何するのよ。

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