第2話
「由來、もう泣かないで。私はもうどこにも行かないよ」
由來の頬を伝う透明の涙を伸ばした指で掬う。
「...ああ。もう行かせねぇ」
俺様由來は私の額に自分の額をコツンとくっつけた。
「待たせてごめんね? 今度こそ傍に居るから」
「...当たり前。もう逃がさねぇ」
「この先の未来、貴方の傍に居させてね」
素直な気持ちを伝える。
「嫌だっつっても、離してやんねぇよ」
由來が満足そうに笑う。
「うん、離さないで」
私も微笑んだ。
この先の未来、順風満帆ではないだろうけど、由來と手を繋いで歩いていきたい。
「亜理子」
「由來」
繋がった視線、自然と近づく距離。
あ....キスされる。
甘い雰囲気が私達二人を包んだ時だった、空気を壊すように声が掛かったのは。
「感動の再会中、悪いけど。俺達の存在忘れてね?」
和毅の声にはっと目を向ければ、そこには苦笑いした皆の顔があって。
「あっ...や! 由來離れてよ」
恥ずかしさに顔を赤らめて由來の体を両手で押した。
わ、忘れてた。
人が他に居たことを。
なんて言う恥ずかしいことしてたんだ。
「...チッ、見せつけてやりゃ良いだろうがよ」
不機嫌に恥ずかしいこと言うな!
「む、無理だから。とにかく離れてよ」
距離を近づけよとする由來を必死に押し返した。
「...うぜぇ」
と言いながらも離れてくれた由來にホッとする。
「亜理子ってば、王様の前だと可愛いのね」
と感心するように言ったのは冴子で。
「冴ちゃんも見習ってみ」
とふざけて言った文也が、
「煩いのよ」
と爪先でべんけいの泣き所を蹴られてる。
「うぉっ...いてぇ」
脛を押さえてしゃがみこんだ文也を見て、当然だなと思った。
皆が笑う、私も笑う。
この場所に戻ってこれた事を、本当に嬉しく思えた。
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