第2話



「ただいま。」


開けてしまった。

目に入ってくる見覚えるある風景。

何年も見て来た目を通して映る物たち。

返ってくるのは自分の頭の中で反響する声。

もう返ってこないと分かってしまうと湧いてしまった。実感が湧いてしまって止まらなかった。

もう何も前は見えないし感情もぐちゃぐちゃで叫んだ。

あれからどれくらい経っただろうか。

気づいた頃には喉は悲鳴をあげていて存在感を主張していた。

同時にお腹も悲鳴をあげていた。


「こんな状態なのにお腹は減るんだ」


生きていかなくてはいけないのに身体は持ち主の意に反して動いてくれない。

玄関に座り込んだまま立てないでいた。

取り敢えず料理はする気にならず、カップ麺があったのでそれで済ました。

もう今日は早く寝たい。

寝て忘れられるのであれば忘れたい。

自分の懐かしい触感のベットを堪能する事もなく泥の様に寝てしまった。


次の日。

遺産相続や口座凍結、保険等の諸々の書類関係を済ませて一日が終わってしまった。

分からない事を自分なりに理解しようと聞いていて脳が疲れてしまった。

手元にお金が来るのはいいけど、両親は返ってこないし帰ってこない。

なんて空いお金なんなんだ、君の両親の命はこのくらいだよって言われてるような気がして凄く嫌で涙を堪えながら説明を聞いていた。


「うわっ!」


携帯が存在感を主張している。

この音を久しく聞いてなくて閑静な空間と不恰好な着信。

久々の親友の名前に少し心が落ち着いてしまう。


「もしもし?」

「あ、もしもし、今平気かな?」

「うん、大丈夫だよ」

「良かったぁ、ずっと先生から言われてから心配で…もう退院したんでしょ?三船身体とか大丈夫なの?」

「まだそこら中痛いかな、でも大分動けるようになったし、もうちょっと落ち着いたら学校に顔出すかな」


あれから親友の学校であった面白い事、授業の事とか話してたら随分と時間が経っていた。

心の碇がスッと軽くなった。

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