第3話 少年の謎

「おーい、おーい勇気!」

「は、はい!」

急に現実に引き戻される。

そして、変な返事をしてしまった。

(やっべ、後藤に三河さん見てるのバレた…?)


「帰ろうぜ」

「うん…」


俺はささっとリュックを持って沢田、後藤二人を追いかけた。

(危な、バレてなかった)


廊下に出ると、後藤が俺の耳に手を当ててコソコソ話しかける。


「三河さん、可愛かったな笑」


(うっわ、バレてたー)


「は、三河さん!?別に見てねーし」

「何言ってんだよ。お前、目飛び出るほど眼光開いてガン見だったぞ笑」

「色々あんだよ!」


適当にあしらう。

(27歳にもなって17のガキにおちょくられてる…トホホ)


3人で話しながら校門まで歩く。


俺が、目を凝らして見つめるのは、学生たちで賑わう校庭や、部活動やら何やらで走って汗をながす学生たち。

そんな、普通の光景が、自分にとってはかけがいのないものだと改めて感じさせる。


校門に着くと、沢田が一言。


「今日のお前、なんか変だったぞ。なんか、おっさん化したというか…。疲れてるなら相談しろよ」

「あ…あ、ありがとう」

「じゃあな」


校門で3人バラバラになってそれぞれの帰路に着いた。

(やっぱおっさんなのかー。ショック。でも、沢田のやつ勘がいいな)


「お疲れ様です。立川さん」


目の前には、俺をタイムリープさせた少年が制服姿で立っていた。


「お、お疲れ様」


俺は、少し警戒して話しかける。


「そんなに警戒しないでください。ちょっと怪しまれてたみたいですけど何とかなったみたいですね」


少年は涼しげな顔でそう口を開く。


「ていうか、なんだよその敬語」

「僕は、基本敬語ですよ。しかし、学校で敬語はおかしいじゃないですか」


少年は、ニコリと笑いながら至極当たり前なことを答える。


本題は敬語とかタメ口とかではない。

過去で何をすれば良いのかだ。

俺は、息を呑んで少年に尋ねる。


「それで、俺は具体的に何すればいいんだ?」


空を見ていた少年は俺の顔をガン見し、真剣な表情で語り始めた。


「勇気さん、あなたの隣の席の女子生徒。三河さんは知ってますよね」


(あの三河さんだよな)


「三河さん、ああ知ってるよ」


俺は、さっきの三河さんの姿を思い出した。彼女は勉強をしながら、時折窓の外を見つめて、少し寂しげな目をしていた気がする。


「彼女が、あなたの未来、いや世界の未来を左右する重要な存在になるかもしれない…」


(三河さんが、未来を変える鍵になるか…)

俺は、信じられなかった。

美少女の三河さんと言えども一人の高校生にすぎない。


「どうして、三河さんが?」


「今はそれ以上言えないですね。でもこれからあなたは彼女と関わりを持つ必要があるでしょう」


「分かった」


少年の言葉に、俺は不安を感じつつも頷いた。

「未来を変える」という使命のためには何かしら行動を起こさなければならないのは明白だった。俺は、未来を変えるという決意を胸に抱いた。


「それにー。立川さんは三河さんの事を好きみたいですからね笑」

「は、なんでお前まで!」

「と言うことは本当なんですね笑」


さっきのシリアス感を消すようにいじってくる。

(コイツ、ただもんじゃないな。俺のことおちょくりやがって)


「ちげーよ。ただちょっと…見てただけだよ!」

「そうなんですね笑まあ、三河さんをよろしく頼みますよ」

「ああ、って待て。あとちょっと聞きたいこと!」


俺は、少年の肩を掴む。


「何ですか?」

「お前の名前を教えろ」


少年は一呼吸おいて口を開く。


「立川…ですよ…」


(はあっ!?何で、こいつ俺と同じ苗字…してんだ…?)


「立川ってお前…」


「冗談、冗談。神保です。神保時じんぼときです笑」


神保は笑いながらそう答えた。


「何でそんな冗談言ったんだよ」

「いやー立川さんの反応を楽しむためです笑」


「じゃあお前は何者なんだ?」


神保は、今までにない真剣な顔つきになりこっちを向く。

少し怖いとさえ思うぐらいの顔だった。


「僕の正体はいずれ分かりますよ。でも、今はナ〜イショ★」


さっきの顔は嘘のように笑顔で答える。

神保はシリアスな雰囲気で遊び、俺の感情の弄ぶ。


俺は、察した。

(こいつ、めっちゃ性格悪いわ)


俺は、呆れながら突っ立っていると咄嗟に腕を掴まれた。


「僕も未来変える手助けをしますし、明日から一緒に二人三脚で頑張りましょう!」

「はい、はい」


俺は呆れながら返事をした。

神保といると、ペースを持ってかれどうも調子が狂う。

(謎ばっかりだけどやっぱコイツ変なやつなのは間違いないわ)


「んじゃ帰ろう」


俺は、帰路についた。

壊れていない街並みを楽しみながら歩く。

車も通ってるし電車も通っている。

そして、窮屈な住宅街でさえ俺には愛おしかった。

家に近づいてくると俺はドキドキした。


(家には、母さん、父さん、友恵がいるんだよな…)

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