7
「おやすみなさい。猫ちゃん」風はにっこりと笑った。
それからいそいそと移動してスリッパを脱ぎ、ベットの上に移動する。風は毛布をかぶりベットの上で横になると、あっという間に眠りの中に落ちていった。そして風はぴくりとも動かなくなった。ぼくは風の様子を観察しながら、慣れない舌を使ってようやくミルクを飲み干した。そしてしばらくの間、ぼくは体の中にストーブの中で燃える炎の熱を溜め込んだことで、体が自由に動くことを確かめると、さっきから一つ気になっていることを確かめてみることにした。
ぼくは部屋の扉の前まで移動すると、かりかりと爪で扉を引っかくようにして、その扉を開けてみようとした。しかし、それは不可能だった。ついさっき死にかけたばかりなので、本気でこの部屋の外に出ようと思ったわけではないのだけれど、やはり猫になってしまったぼくの力では、人間の扉は開けることができないようだ。その確認を終えると、ぼくは部屋の中央に戻り、そこから勢い良くジャンプをして椅子の上に飛び乗った。そしてさらにそこからジャンプをして、ぼくは風の眠るベットの上まで移動する。
ぼくはさらに移動して、風の胸の上に飛び乗ると、そこからじっと眠り続ける風の寝顔を眺め始めた。それはとても無防備な寝顔だった。なんの警戒心もない無垢な表情。眠り続ける風の表情はとても穏やかで、その顔色は火を灯す前のろうそくのように真っ白だった。ぼくはそんな風の寝顔を見て、だんだんとなんだか生きている人間を見ているというよりも、なにか『死体の顔』を眺めているような気分になった。それは見ていてあまり気持ちの良い光景ではなかった。
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