3
人間の神様と、……そして、猫の神様。
夢の中で猫になってしまったぼくはいったいどっちの神様を信じればいいのだろうか? そんなことをぼくは思った。どうやらぼくの思考は少しだけ飛んでいるようだ。それはきっとこの寒さのせいだ。夢の中でも眠くなるのと同じこと。普段、ぼくは神様なんていう存在をまったく信じていないというのに、どうしてこんなときだけ、ぼくは神様のことを考えようとしているのだろうか? それはもしかしたらぼくが、『いつもよりも死というものをずっと身近に感じている』からなのだろうか?
……うん。そうなのかもしれない。確かにその通りなのかもしれない。
……ああ、そうか。ぼくはこれから、この場所で死ぬのか。そんなことが今更ながら、当たり前のように受け入れられた。人は誰でもいつかは死ぬ。ぼくもいつかは死を迎える。それが今だということなんだ。つまりそういうこと。ぼくの人生はここで終わる。猫になって、見知らぬ暗い廊下の真ん中で、うずくまって丸くなったまま、一人ぼっちで死んでいく。ぼくはそんな小さな命に過ぎない、こんなにもちっぽけな存在だったんだ。そんなことをぼくはようやく思い出すことができた。
でも、それでいいんだ。すべては夢。すべては幻。ぼくが願ったものも、ぼくが望んだものも、なにもかも手に入れることができないままに、ぼくはここで猫になって死んでいく。
……意識が、だんだんと遠くなっていった。ぼくはすべてを諦めたように、そっと二つの瞳を閉じた。
もうぼくはなにも考えない。なにも望まない。なにも感じない。そうやって自分のすべてを手放していく。……そうやって、……もう少しで、ぼくの世界は完全な終わりを迎える『はず』だった。
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