寝ないはずの晩

 自宅での通夜。

 姉とその旦那、義兄フリーザ※(【ひとやすみの星・兄】参照)と私。


 寝ずの番は三人で雑魚寝をしながら、起きている者が線香を焚くということに決まった。義兄は通常も夜は起きているが、この人達を頼ろうとは思っていなかった。人をあてにしてはならない、そう思っていた私は不甲斐なくも缶ビール1本で眠り込んでしまった。が、度々起きることになる。



 いびきの騒々しい者がいる。

 私も自分のいびきがうるさくて起きた前科が何犯かあるので自分かと思って起きるも、まだ聞こえる。とてもうるさい。耳を塞ぎたいくらいうるさい。布団をかぶって寝ようにも、うるさくてすぐに起きてしまう。寝るなということか。



 また少し時間が経つと、今度は誰かが何か叫んでいる。何事か。その間も轟音がむ気配はない。



義兄ちゃんフリーザ様ありがとう、義兄ちゃんフリーザ様ありがとう」と繰り返し叫ぶマザー。


 その度に「お母さん、義兄フリーザじゃなくて私!」と叫び返す姉。


 轟音。



 姉と義兄フリーザは夫婦で双子のように同じフォルムをしている。夜目にますます似ていてマザーには判別が不可能だったのだろう。

 和室にふなっしーが二体いると考えて欲しい。祭壇の前で寝ているふなっしーと起きているふなっしー。マザーは起きて線香をあげているふなっしーにお礼を言っていたらしかった。



 その後も誰かのいびきがうるさくて何度も起きる。

 ふなっしーが寄りかかったふすまが外れる振動と鳴り響く大きな音。



 満足に眠れずに迎えた告別式。眠らない予定だったから在り方としてはそれで正しいのだが。

 御住職の入場までは記憶にあるが、お経が始まった瞬間に寝落ちした。隣の席だったフリーザは私が泣いているのだと思っていたそうだ。




 雲の間に 永遠を見た 白夜行 駆け出して 今 おしまいの音

 * 2024.6.4 *短歌コン/chibana *


 火を絶やすでないぞぉ

 *紀元前*キングダム/麃公ひょうこう将軍*













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る