安置室
単なる長い休みくらいにしか思っていなかった。「退屈したら出てきま~す」と半分くらい本気で軽口を叩いていたほど。病院は近いし職場から見える。
それなのに、こんなにやることがあるとは思わなんだ。
喪主がやれば良いのだが、その間は故人の妻を私が見張らねばならない。私はマザーの
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葬儀屋さんとの見積りが始まるや、何度断っても「会員になれ」としつこい。
「お母さんの時にお得」とはっきり言葉にして伝えて来る失礼な担当者だった。契約取りたいなら気持ちよく会計させれば良いのに必死過ぎて人間の心を忘れているように見えた。この「会員になれ」アタックは葬儀が終わっても続く。四十九日までに出る香典返しの清算が全部済むまで終わらないと思われる。
遺影に関しては、とても良い笑顔の写真があった。…のだが、しかし本人が生前にそれは絶対に嫌だと言っていたそうで。
え?ダサ。
納得のダサさ。
確かにこれは嫌だ。
とびっきりの笑顔なのに物凄く変な服を着ている。
「どうしてこんな服を着ている時に写真を撮ろうと思ったの?」
「どうしてそんな肌着みたいなヨレヨレのシャツにサスペンダーをしたの?」
どうしてそんなことするの?と目を疑わずにいられない変な恰好をしている。
「顔だけこの写真で服と背景を合成できませんか」と喪主が質問してみたところ、よもや可能らしかった。ただ、見せてもらったサンプルが余りにも合成合成していたので却下。色合いもタッチも不自然。生前に首の向きはそうならない。
結果、故人の希望通りの写真を使うことになった。背景は私が適当に「これ無難じゃねえ?」と言ったものに決まってしまった。仕上がりは微妙だった。
そのまま御住職が来てくださり安置所にて戒名他についての打ち合わせに入る。雑談ついでに、お鈴(りん)は2回鳴らせば良いと教えてもらった。
そのお話を伺った直後のこと。
お焼香に来てくださった、故人の友人だったという方がムニャムニャ唱えながらお鈴を高速で連打。6回までは数えていた。その後、本人達にしかわからない思い出話を20分以上はして帰って行かれた。葬儀には出席できないとのことで、不祥事を起こし免許を取り上げられている為お寒い中
安置所を出ると土俵入りが如く塩を撒く甥。
甥よ、塩は撒くのではない。振りかけるのだ。
一応「ごっつあんです」と手刀を切ると今度はそっちに興味を持ってしまった。どうやんのか?種類があるからまた今度。おばちゃんは腹が減っているんだ。
掃うのも億劫で、頭から塩
納棺の様子は不謹慎極まりないので此処ではやめておきます。
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