第2話 ミッション失敗

「えっ?何処かへ行ってしまわれましたけど・・・。良いのですかこれで?」

⦅いや、全然良くない。デーモンを払えて無いからミッション失敗ってやつだ。⦆

〈これでは私達は、天界に戻れませんね。アマテラ様は『必ず払ってから帰って来る様に』とおっしゃっていましたから。〉

⦅そもそも佐助のせいだからな。お前がうち等と気持ちを一体化出来ていればディバインパワーを使って羽くらいこっちだって、出せたんだ。お前が原因だ。⦆

「そんな事言われてもしょうがないじゃないですか。ディバインパワー自体知らなかったし、初めてだったのですから。」


〈ここで何を言っていても始まらないので、友里花さんを連れて帰りましょう。〉

「ちょっと待って下さい。ここにいた狂乱高校の生徒達はどうするのですか?2人は逃げたみたいですけど、3人は食べられてしまったのですよ。これ洒落にならないですよ。僕は絶対に説明出来ませんよ。」


〈佐助さん、これは知っておいてください。デーモンに食われたという事は、肉体も魂も食われたという事です。という事は、この世に存在しなかったという事になってしまうのです。ここで食われた生徒は、全ての人の記憶からも消され、初めから居なかった事になってしまうのです。もちろん親兄弟からも、そして写真からも姿が消えます。誰も疑う事も無くです。私達以外はね。〉


⦅こんな事はあってはならない。この世界に生を受けたにも関わらず誰の記憶にも残っていない、秩序も奪われてしまう。この様な事は許されない事だ。だから奴を払わねばならないのだ。⦆


〈そして佐助さん、あなた自身の手でデーモンを払う事で『強さ』を手に入れる事が出来るのではないでしょうか?私とグリイはそう信じています。あなたの魂も色付けないとですからね。〉

〈早くディバインパワーを使いこなせる様になり、ミッションを達成しなくてはなりません。期限は限られていますから。〉


⦅とりあえずディバインパワーは解除だな。この姿では、街中を歩けないし直ぐに通報されちまうな。⦆

〈そうですね。解除しましょう。〉


グリイとオウマはディバインパワーを解き佐助を通常の姿へ戻した。


「友里花さんは、どうするのですか?まだ、気絶している様ですけど。」

⦅お前が運ぶしか無いだろう。負ぶって家まで連れて行けば良いさ。⦆

「いや、友里花さんの家は知りませんよ。」

〈では、バイト先の『ジャングルBOOK』に連れて行きましょう。そこで、少し寝かせておけば、時期目が覚めるでしょう。〉

「ですね、そうしましょう。」


 佐助は友里花を背負いバイト先の、ジャングルBOOKまで行く事にした。

少し前の佐助では人を一人背負う事など到底出来なかったが、ウーバーBOOKのお陰で筋力が付き余裕を持って友里花を運んでいる。

 余裕があるせいなのか、佐助はニコニコしている。ウキウキな気分で鼻歌を交えながら歩いている。


⦅佐助、何だか上機嫌だな。気持ちが悪いぞ。普段そんな笑顔は見せた事無いのによ。どうした?⦆

「なっ、何でも無いよ。ディバインパワーの事を考えていたのですよ。凄いなーって。」

〈それはどうですかね?私には分かりますよ、隠しても無駄です。この体内の状況から言って、やましい事を考えていますね。〉

「そっそんな事は考えていないですよ。友里花さんの柔らかい胸が思い切り背中に当たっているとか、僕の手がお尻の辺りを支えているとか・・・。あっ!」


⦅お前そんな事を考えながら友里花を背負っていたのか。この変態野郎が!⦆

「だって、背負うとどうやっても当たってしまうし、そこを持たないと支えられないではないですかぁー。やましい事を考えるなって言う方が無理ですよ。」

〈まぁーそうですね。佐助も健全なる高校生という事です。でも、この幸せな時間ももう終わりです。ジャングルBOOKに到着しました。〉

「早っ!もう着いたのですかぁ~残念・・・。アッ。」


 ジャングルBOOKに着いた佐助は、友里花を休養室まで運び寝かせた。店長は事の成り行きを知っていると思い話したが、さっぱりの様であった。グリイとオウマも店長をじっくり見たが店長からはアマテラ様の気配は感じず、アマテラ様が店長の体を利用してあの様な事をしたのだと思った。

 佐助は店長に友里花の事をお願いし自宅へと帰った。


 工場跡地へ行き家に帰るまでの間、学校からは何の連絡も無い。担任や教頭から家にも連絡は無いという。生徒の事など何も考えていない学校なのであろう。

面倒事は遮断し、不都合な事は隠蔽し、もめ事には介入しない。それが、北南高校の教育方針であるのだ。先生を守る為だとか言っているが、肝心な生徒達はどう守るのであろうか?

佐助はそんな事を考えていたら、また生きている事の無意味さを考え始めていた。


⦅佐助、お前何を考えている。また死ぬ事でも考えていたのか?懲りない奴だな。そんな事を考える暇があったら、逃げたデーモンをどうやって払うかを考えろ!⦆

〈そうですよ。先ずはあの邪悪なデーモンを払う事を考えて下さい。それに、ディバインパワーを使える様にならないと、デーモンは払えませんから。〉


〈佐助さんの好きな、バイト先と友里花さんと友里花さんとのゲームの時間を取り戻すには、優先順位を付けなくてはです。〉

〈3つの頭脳で考えればきっと良い案が浮かびますよ。〉

「それ諺にある『3人寄らば文殊の知恵』ってやつですね。」


⦅でも、あの学校に居る生徒や教師達の事を考えると、この先の明るい未来は想像出来やしないな、正直。⦆

〈だから、佐助さんは生きている事の苦しさや意味の無さを感じあの様な行動に出てしまったのですね。〉

〈人間社会は、美しくないですね。遠くから見る『地球や富士山』といった所でしょうか。〉


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




 このやり取りをしている「佐助、グリイ、オウマ」の3体の出会いは、佐助のある行動により始まったのであった。




それは、半年くらい前の事である・・・・・・・・・・。

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続:3体寄れば文殊の知恵~中二病って凄いかも @jyo-san

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