続:3体寄れば文殊の知恵~中二病って凄いかも
@jyo-san
第1話 ディバインパワーですが・・・
佐助の体は振動しながら筋肉質になって行く。肌の色は薄い紫色に変化し、右肩には天使の紋章、左肩には悪魔の紋章が浮き出ている。上半身の服は千切れて体が露わになり露出した肌は龍が如く鱗の様な皮膚に覆われている。そして両腕は魔物の様になったのだ。外見からは見えずらいが、両足は正に肉食の獣の様になっている。
しかし、佐助の頭は冴えていた。冷静であり落ち着いているのだ。体が獣や竜人化いていても意識だけは佐助のままであった。それに、右腕と左腕からも冷静且つ沈着なグリイとオウマの声が聞こえる。
⦅どうだ佐助。この全身から漲る(みなぎる)パワーは?今までに感じた事は無いだろう。⦆
〈どうです佐助さん?私達も利用価値があるという事が証明出来ましたか?〉
「ですね、凄いです。これが神の力『ディバインパワー』ってやつですか?目の前にいるデーモンにも余裕で勝てる気がします。」
⦅油断は禁物だ。奴は今までも色々な魂を喰らって来た鬼だ。何をしでかすのか見当がつかねぇー。甘く見ない方が良い。⦆
⦅本来ならば、魂は死神様の元へ行き3つある道の内、どれかへ送り込まれる。そして、死後の所業を終えて全てを全うした後、神様の手によって『無』となるのだ。⦆
〈そのお手伝いをしているのが、私達天使と悪魔なのです。私達の仕事は幅広いのですよ。〉
〈死神様の振りをして魂を食べ続けて来たデーモンには制裁を加えなければいけませんね。〉
〈グリイ、佐助さん、悪魔を懲らしめてあげましょう。〉
⦅当然だー。グッチャグッチャのケチョンケチョンにしてやるぜ。⦆
「そうですね。ベロンベロンのバインバインにしてやりますよ。」
〈何だか表現の仕方がおかしいですけど、まぁ良いでしょう。〉
狂乱の仲間達はこの出来事に恐れを成し、この場から逃げようとしているが足腰が言う事を聴かず動けないが口は動く様だ。
「うわぁー!何だ?何が始まった?この2人おかしいぞ。様子もおかしいし、姿も形も人間じゃねぇー。魔人だ、魔人。」
姿の変わった弟の陰次に対して、兄の陰吾が話し掛ける。
「陰次、お前・・・やっと鬼になれたのか?やっと鬼になれたんだな!良かったなぁー夢が叶ったじゃないか。お前は昔から鬼に憧れていたからな。」
「小さい時からそうだった。かくれんぼや缶蹴り、鬼ごっこや高鬼、いつも鬼役はお前だった。そして、鬼になれた喜びでいつも泣いていたっけな。」
「お前が鬼になる様に俺は細工をしていたんだぞ。頑張ったんだ。でも、もうそんな細工は必要無いな。お前自体が鬼なのだから。もう好きにしろ、これからは好きな様に生きろ。暴れたいだけ暴れるがいい。気の済むまでな。」
「いっ陰次さん、陰次さん。俺等は仲間っすよね、なっ仲間に危害をくわ・・・。」
グアッ・・・・。
鬼化した陰次は両脇にいた仲間の2人を捕まえ、いきなり喰らい始めたのだ。
両脇にいた仲間の一人は内臓から、もう一人は頭から脳ミソを食われたのだ。すると、鬼化した陰次の体が更に変化し始めた。鬼は人を喰らう事で、喰らった人の魂までも喰らい、内面からと外見からも醜く変化するようだ。
邪悪な魂を喰らう事でより邪悪に、より凶暴な鬼になって行く。もはや、その変化に終わりは無いのだ。
その2人の姿を見た友里花ミレイはとっくに気絶していた。
そして、陰次の兄である陰吾は顔を引きつらせ、脂汗を流しながら見ている。
「そっそうだ、陰次が鬼になれた事をオヤジに知らせてやらなければ。それに、親戚中にもな。」
「いっ陰次・・・。じゃ俺は知らせに行って来るから・・・お前は適当にこいつらを、好きな様にしててくれ。・・・じゃじゃー、行って来るぞ・・・。」
《兄貴・・・何処へ行く。兄貴・・・俺のカッコいい所見ていてくれ。何処にも行かないでくれ。今、こいつらを始末するから見ていてくれよ。・・・俺の側から離れないでくれよ兄貴ー。俺を一人にしないでくれー!》
陰次の体は既にデーモンに支配されている。そして、もはや心までも全て洗脳されてしまう所まで来ていた。かろうじて自我の気持ちを維持しているのは、陰吾との兄弟という絆だけである。しかし、それも消え掛かっているのだ。目の前から陰吾が居なくなった場合、絆が砕け散りデーモンに全てを奪われてしまうのだ。肉体も心も。
「陰次・・・お、俺は行くぞ。お前が鬼になった記念すべき日を祝う準備をしてくる。ま、待っていろ。直ぐに戻って来るから・・・。準備が出来たら戻って来るさ。約束だ。」
《本当?兄貴、本当に戻って来てくれるのか?信じて良いのか?祝いの準備が終わったら戻って来てくれるのだね。》
「おう・・・。すっ直ぐに戻ってくる。まっ待っていろよ。じゃー。」
陰吾は立てない仲間と鬼化した陰次と拉致した友里花を残して一人その場から出て行こうとした。
鬼化した陰次と「戻って来る」と約束をして、家族や親戚の所へ行くつもりだ。
しかし、佐助は影闇陰吾の心を先読みしていた。
(陰吾:心の声)
『冗談じゃ無いぜ。何だ、あの化け物は?本当に陰次なのか?兄貴、兄貴と言っていたが見た目は完全に陰次じゃねーぞ。只の化け物だ。あんな奴とはもう一緒に居られ無ぇー。警察か自衛隊に連絡して、銃でも爆弾でもいいから処分してもらわねーと、こっちにまで飛び火するかも知れねぇー。今後の俺様の未来にも悪影響を及ぼし兼ねねぇーぞこりゃ。陰次には悪いが、処分させてもらうぜ。』
佐助は、自分の能力を使い陰吾の心を先読みしていたのだ。
だが、その内容を知り心が締め付けられそうな気持ちになり自然に涙が溢れて来た。この世に2つと存在しない兄弟の絆であるのに、こんなにも簡単に壊れてしまうモノなのか?こんなにも弱くモロいモノなのか?これが人間という生き物なのであろうか?
残酷過ぎる・・・。
いや、残酷なのは影闇陰吾では無い。この様な考えの人間にしてしまった、親に責任があるのだ。愛情をもって接してあげれば、もっと小さい時に抱きしめてあげれば、愛情深い兄弟になっていたのだと思う。反省すべきは親であるのだ。
佐助はこの場所から去ろうとしている陰吾の前に立ち、生かせない様にした。竜人化した佐助の目にはまだ涙が溢れて来る。
「お前の心を先読みした。ヒドイ考えの持ち主だ。ここに居てやれ、何処へも行くな。そして、鬼化している弟の陰次を救い出す方法を考える事が先なんじゃ無いか?陰次はあんたの事を一番に思っていると思う。」
「う、うるさい。お前も化け物じゃねぇーか。そんな格好して俺に指図するな。お前自害したはずなのに、何故生き返った?何なんだよこの状況。俺は、あの女を出汁にお前から金をふんだくって、その金で楽しくやろうと思っていただけなのに。何で化け物が2匹も現れやがって、俺の邪魔をしやがる。」
「そこをどけ!俺様の邪魔をするなー!」
その陰吾の声に鬼化した陰次が答えた。
竜人化している佐助の前に飛び降り、佐助を両腕で押しのけた。佐助は大きく飛ばされ、背中から倒れ込んだ。
佐助が陰吾に何かをしたのだと勘違いしたのだ。
《兄貴、大丈夫か?あんな奴に指一本触れさせないからな。俺に任せてくれ。兄貴。》
「ヒィー----。バッ、バッ、化け物―。近寄るな、俺の前に来るな、この醜い獣が。俺の事を兄貴なんて呼ぶな、迷惑だ。俺の前から消えて無くなれー--!」
「エッ・・・・・・・・・。プツーーーーーーーーーーーーーーーーン。」
鬼化した陰次の兄への気持ちが音を立て弾ける様に切れた。それは、陰次の心をデーモンから引き放つ為の唯一残された兄弟を繋ぎ止める「兄の手と弟の手」の様なモノであったのだ。
その、手と手が離れ繋がりを無くした陰次の心は間もなくしてデーモンに飲み込まれてしまったのだ。
そして、気が付くと影闇陰吾はデーモンに頭から食われていた。
「えー----!陰次が陰吾を食ってますよー!兄弟愛が強過ぎっていうか、ネジ曲がっているでしょう、あんなのはー!」
⦅もう、陰次では無いぞ。100%デーモンだ。最後の人間の部分も飲み込まれたな。⦆
〈ですね。陰次さんはもう人間には戻れないですね。可愛そうですが、払うしかないです。〉
陰吾を喰らったデーモンは、更に体が変化し出した。陰吾の肉体と魂を喰らい更なる変化をした外見は、何とも悍ましくグロテスクな容姿へと変わって行ったのだ。その肉体と魂は邪悪なモノであったのだろう、デーモンはより強力な邪悪さを手にしたのだ。
陰吾を全て飲み込んだデーモンは、佐助の方を向くとゆっくりこちらに向かって歩いて来る。その瞬間「Fー1」を越えるスピードで佐助に近づき手と手で掴み合いになった。
「ガッシ!」
力と力のぶつかり合いだ。しかし、佐助は徐々に押されて行く。
⦅佐助、何をしている?ちゃんとやれよ。押されてるぞ。⦆
〈佐助さん、冗談はやめて下さい。早くヒネリ潰して下さいよ。〉
「ぜ、全力でやってますよ。でも、これ以上力が入らないのです。本当ですよ。」
〈いや、そんな事はありません。私達が付いていてアマテラ様に力も戻してもらいました。更に『ディバインパワー』を使っているのに、この様な事は無いですよ。」
⦅この状況で、どちらが優勢かと聞かれたら間違いなく佐助、お前の方が優勢なはずだ。もっとまじめにやれ。⦆
「そんな~、本当にこれ以上の力が出ません。信じてくださーい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
〈グリイ、もしかしたらアマテラ様が言っていたアレかもしれませんよ。〉
⦅アレって何だ?アレだけじゃ俺には分からないぞ。⦆
〈佐助さんが、私達と気持ちを一緒に出来ていないって事ですよ。〉
⦅なるほどな、先ずはそこからって事か。しょうがない、今回はうち等が本命でやるしか無いな。⦆
〈そう言う事です。〉
グリイとオウマはデーモンの手を掴んでいる佐助の手に少しだけ手を貸した。その瞬間、佐助はデーモンを軽く投げ飛ばしデーモンは工場の壁に叩き付けられた。
⦅佐助、お前のチャリで鍛えた瞬発力でデーモンに蹴りを入れてみろ。⦆
佐助は、両足に意識を集中させてデーモンが立ち上がろうとしている場所目掛けてダッシュをした。佐助のダッシュは音速を越え、瞬きをする間もなくデーモンに蹴りを入れたのだ。
デーモンは30m位蹴り飛ばされた。
〈佐助さん出来るじゃないですか。その感覚を忘れない事と、私達の気持ちの繋がりを忘れないで下さいね。そうする事により、早い段階でディバインパワーの使い分けが可能になりますよ。〉
デーモンは立ち上がったが、口から紫色の血を吐いている。圧倒的な力の差を見せつけられたデーモンは、いきなり大声で怒りを露わにした。すると、デーモンの背中から大きな禍々しい羽が生え宙に浮くと、そのまま何処かへ逃げてしまったのだ。
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