第14話 学術都市


 学術都市マクーダム。

 その都市はどこの国にも属さず、独立した都市国家を形成している。各国から優秀な研究者、魔術師、学者が集結し、議論を交わす。日々新しい発見があるとされるそこは、知の都と呼ばれていた。


 ケントリッツ学術院。

 大陸最高峰の学院であり、大国の王族ですら試験を突破しなければ入学できない完全なる実力主義だ。広大な敷地内にいくつもの研究塔が立ち並ぶ異様な光景に人々は息を呑む。大陸中から集まった若き逸材たちが切磋琢磨し、互いの能力を高め合っていた。


 大陸の発展はここから始まるとさえ言われるその地に、サリファと、主人公たちは足を踏み入れることになる。



***



「ケントリッツ学術院前〜ケントリッツ学術院前〜。入学試験を受ける方は、ここでお降りください〜」


 乗っていた路面バスからアナウンスが流れる。


 なんか、この都市だけ文明レベルが違いすぎない? ゲームではあんまり気にすることはなかったが、生活水準が異様に高そうだ。まあ、僕が屋敷から出たのはこれで二度目だから比較対象が少なすぎるけど。


 いくつも立ち並ぶ塔を見上げる。

 なんだか懐かしいなぁ。ここはゲームで見た時も圧倒されたものだ。実際に見てみると、ものすごいインパクトがある。周りにいる他の受験生らしき人たちも、口を開けて上を見上げている。


 さて、さっさと受付を済ませてしまおう。

 そのあとは、すぐに今日泊まる宿を探さなくてはならない。一人で全部やらないといけないから大変だ。普通大国の貴族がこんなところに来るのなら使用人が一人くらいはついてそうなものだが、僕は冷遇されているのでそんなものはない。帝国内までは案内してくれたが、そこからの移動は全て自分でなんとかした。……いや、ほんとに辿り着けてよかったよ。


「次の方どうぞー」


 長い列に並んでいたが、ようやく僕の番がやってきた。受験する人って、こんなに多いんだな。流石は最高峰の学院だ。


「受験料の銀貨三枚をいただきますー。不合格でも返却はありませんのでご注意くださいねー」


 受付のお姉さんに銀貨を渡す。

 不合格した人が金を返せと言ってきたことがあるのか……。


「ここに、お名前と希望学科をお書きくださいー。書けなければ、その場で不合格ですよー」


 差し出された紙に名前と学科を記入する。

 学科はいくつか候補があったが、魔術科にしておいた。元のサリファがどこに所属していたかわからなかったので、自分の興味で選んだだけだ。というか、名前が書けない人が受けに来ることがあったのか……。世界最高峰の学院だぞ……?

 

「ありがとうございますー。こちらが受験票ですので、なくさないようにお気をつけくださいねー。紛失したら試験を受けられませんよー」


 番号の書かれた薄い板を受け取った。

 魔力が込められているが識別用かな? 板を見ると、僕の受験番号は3333らしい。覚えやすいね。


「そして、こちらが受験に際しての注意事項をまとめたものですー。試験当日までによく読んでおいてくださいねー」


 かなり分厚い冊子を受け取る。

 こんなに注意事項があるのか……。まあ、宿がとれたら読むとしよう。


「試験は四日後ですー。試験会場と開始時間については先ほどの冊子の一番はじめに記載されていますので、ご自身の受験番号が書かれた会場に向かってくださいねー。遅刻者はその場で不合格ですのでお気をつけくださいー」


 冊子をめくってみると、確かに記載があった。受験生が多すぎて会場がいっぱいあるな。迷わないようにしないと。

 

「質問事項がありましたら冊子に回答が網羅されておりますのでご自身でお探しくださいー。それでは次の方ー」

 

 手慣れた感じで受付が終了した。

 いや、まあこの人数を連日捌かないといけないんだから大変だよな。


 ティアロラやもう一人の主人公と会えるかもしれないと思っていたが、これだけ人がいると探すのは難しい。というより、二人とも有名人ではあるからバレると大変なことになりそうだ。ティアロラとの再会は入学まで待つとしよう。


 さて、宿をとりに行こうかな。

 どうやらこの都市には宿泊施設がたくさんある区画があるらしく、そこに行けば大体なんとかなるらしい。受験シーズンは人が多いから泊まれない心配をしていたが、そんなことはないそうなので安心した。


 路面バスに乗り、宿泊施設のあるヤデラ区画に向かう。広い都市を移動するのにこのバスは本当に便利だ。


「ヤデラ区画〜ヤデラ区画〜。受験生の皆様は、質の高い睡眠をとることをおすすめします〜」

 

 いくつかバス停で停まったが、アナウンスが大体受験生に向けたものだった。この都市の一種の風物詩となっているのだろうな。


 ヤデラ区画に降り立つ。

 うーん、確かにどこもかしこも宿屋っぽい建物ばっかりだなぁ。どこに泊まればいいか全然わからないや。とりあえず、うろついてみるか。


 歩いていると、受験生に向けた宿のアピール合戦が凄まじかった。


「ふかふかのベッドに朝食付きでこのお値段!お金のない受験生はウチへおいで〜」

「なんと!こっちにはとある国の元宮廷料理人がいるぞー!美味い食事がしたいなら断然ここ!一階では料理屋も開いてるから、食事だけでもおいでー!」

「最新の魔道具完備!ちょっと高くても快適な生活がお望みの方は、是非お越しください!」


 ふむふむ、それぞれ売りがあるみたいだな。

 美味しい料理は気になるし、魔道具も興味がある。他にも色々と魅力的な売り文句があって選ぶのが大変だ。


 結局、魔道具が気になったのでちょっとお高めの高級宿屋にした。まあ、お金は多少贅沢しても大丈夫なくらいは持っている。流石に屋敷を出る前にこの世界のお金についても勉強したし、公爵家から仕送りもあるらしいから問題ない。


 宿の受付を済ませ、部屋に入る、

 なんだか、やっと落ち着けるな。ここに着くまで移動ばっかりだったので、精神的に疲れてしまった。今日は早く寝よう。


 ……その前に、ご自慢の魔道具をいろいろ触ってみるか。



 結論、めちゃくちゃ便利でした。

 もうここにずっと住んでいたいくらいには。


 

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