第27話 仲間はずれになった
この話の中に氷刹と炎珠がどうなったか含まれていないと?
それは彼らが初等科ではなく中等科であった為に、捜査対象から外れ、私が誰かわからないと言うものだから、犯人は有耶無耶になっていたのだ。
だって、私は名乗られていないので、予想でその名を口にするわけには、いかなかったからだ。
そう父が恐ろしいという刷り込みが、私の口を閉ざしたのだった。
だけど、二人に言われたことは報告した。
目が気持ち悪いと言われたこと。鬼禍が何故生きているのだと言われたこと。使えない目はいらないと言われたこと。
それから皆が私を見る目が変わったのだ。私の後ろには鬼頭がいる。私に何かあると本物の鬼が鉄槌を下しにくると理解し、何故か桔梗に接するときと同じ扱いに変わったのだった。
何か違うと思ったけど、校舎の残骸を目にしてしまっては、何も言えなくなってしまった。
しかし、ばぁは私に施された呪の痕跡から犯人を探り当て、父とその奥方と私の兄姉は、鬼頭によって秘密裏に始末されてしまった。
後になってその話を聞いた時、奥方たちまでは関係ないだろうと私は思ったのだけど、鬼頭の怒りはそれほど凄まじかったということだった。
「もし、不服というのであれば、この一週間の記憶を消して、元いたところに戻して差し上げましょう。どうしますか?」
校長先生は石蕗さんに選択を迫った。元の場所に戻るか。それとも里の掟を受け入れてここで住み続けるかと。
今まで居たところに帰っていいということは、恐らく彼女に施された呪具が出来損ないとわかったから、里で囲い込む必要がなくなったのだろう。
放置しても何れ呪具は壊れ、彼女は死を迎えることになる。
「⋯⋯か⋯⋯帰るのは嫌です」
呪が解除されたのか、言葉に詰まらせながら、帰るのは嫌と答える石蕗さん。
「でも⋯⋯その人の所為で、私が死んでいいとかは納得できません」
それはそうだろうね。
でも納得かぁ。この里のことを理解しなければ、納得なんてできないと思う。
私の役目は普通では理解できないことだ。
「では貴女は、この里全体に力を行き渡らせて、常時維持できますか?」
「は? ⋯⋯え? 里全体?」
⋯⋯私も『は?』だけど?
「この里に張り巡らせてある結界は、鬼頭真白が一人で維持しているのです。それは貴女一人の命など大したことはありません」
ちょっと違うよ。私は管理しているだけで、龍脈の力を利用しているから、私は自由に行動できる。
ばぁが、ずっと家から離れなれなかったのは、結界の維持に力を使っていたからだった。何故なら、術にほころびがあって、結界が不安定な部分があった。私がそこを指摘すれば、完璧に龍脈の力だけで維持できるようになったのだ。
だから、私の力は今回のように、結界に不測の事態が起こった場合にだけ動けばいいのだ。
「そう⋯⋯ですか。だから、護衛がいるのですね」
護衛⋯⋯護衛? いや、違うよ。
石蕗さんの解釈に、周りの皆が首を横に振っている。
鬼頭は鬼頭家の主だからね。
「わかったのでしたら、指導員の話を真面目に聞きなさい。話を聞かずに飛び出していったと聞きましたよ。相談室に戻りなさい」
え? もしかして指導員の話を聞かずに、ここに戻ってきたってこと?
それで校長先生が自ら出てきて、元いたところに帰るか、ここを受け入れるか聞いてきたのか。
ある意味、彼女の行動力は凄いと思ってしまうよ。
石蕗さんは校長先生に連れられて校舎の方に向かって行った。
その後ろ姿に、皆からのため息が聞こえてきた。今までも色々あったのだろう。
命の危機を感じてやっと話を聞く気になったということかな?
「鬼頭真白。席に戻れ、組む相手は残った者とするから、くじは引かなくていい」
そんな中、霜辰先生はマイペースに話を進めてきた。私がくじに選ばれないのであれば、残り者になるのは仕方がない。
私は鬼頭に抱えられたまま席に連れて行かれた。
私と代わるように桔梗が立ち上がる。
「私はもう、元いたところに帰ってもらっていいと思いましたのに、お祖父様は甘すぎますわ」
そんなことを言いながら、前の方に向かっていく。そんな桔梗の後ろ姿を見ると、荒んだ心が落ちついていく。
桔梗の姿を見ると背筋が伸びる。嫌なことを思い出すと下を向いてしまう。だけどそうなってはならないと思わせられる。
そして何故か鬼頭から頭を撫ぜられている。
慰められるようなことは何もなかったよ。私が勝手に思い出して、凹んでいるだけだから。
「鬼頭真白以外。全員二回引いたか?」
そして私は仲間はずれにされている。これは仕方がないことなのだけど、この術の設定を変えるべきだと思う。
「鬼頭真白。残ったのはこの二人だ」
渡された二枚の紙を見て、ほっとため息が出る。知らない子たちではなかったことに安心する。と共に不安がよぎる。
鬼頭
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます