第20話 信念!
シンたちは麻薬組織の壊滅を決断した。特に搾取と暴力の中心にいる幹部や上層部には容赦なく制裁を加える方針が取られた。「組織の上層部、幹部、末端には死んでもらう。拠点は沢山あるが…まあ、なんとかなんだろう」と、作戦会議でシンが簡潔に述べると、他のメンバーも静かに頷いた。正義感というよりも、彼らの行動原理は「許せないものを許さない」というシンプルな信念に基づいていた
万全の情報網と装備
作戦の要となるのは、情報網と先進技術だった。エリシオンの母艦から送られてくる詳細な情報と、虫型偵察機によって収集された映像は、ターゲットの動きや拠点の配置をリアルタイムで把握させた。さらに、転送装置によって必要な物資や人員を瞬時に現地に送り込むことが可能となり、迅速かつ正確な作戦展開が実現した。
全員に義務付けられたスカウターは、作戦遂行において重要な役割を果たした。この装置には次のような多機能が備わっていた
映像・音声認識:ターゲットの確認と識別が可能。
暗視装置:夜間の活動でも高い視認性を確保。
生体データのモニタリング:脈拍、心拍数、脳波を測定し、メンバーの健康状態をリアルタイムで把握。
個別通信機能:必要に応じて密かに連絡を取り合うことができる。
ミリアの決意
そんな中、8歳のミリアは作戦への参加を強く訴えた。目を潤ませながら、シンに真剣な表情で訴える。
「…わたしも、やる!わたしだって【エリシオン】の一員だもん!」
彼女の言葉に、他のメンバーたちは一瞬息を呑んだ。その純粋さが胸に迫るものがあったのだ。しかし、シンは微笑みながら彼女をそっと抱きしめた。
「…いずれな。でも今はダメだ。お前にはまだ守るべき未来がある。もう少し心も体も成長したら、その時に手伝ってもらうさ。だから、今はここで待っててくれ。」
ミリアはシンの胸に顔を埋め、しばらく肩を震わせていた。しかしその声に逆らうことなく、小さく頷く。
そんなミリアの姿に、穏やかでほんわかした性格のヤシャスィーンが彼女にそっと近寄り、柔らかな声で語りかけた。
「だって悪い子には罰が必要よ~でも、ミリアはいい娘だから~ここで待っていてくれるわよね~?」
その優しい口調と包み込むような抱擁に、ミリアは少しだけ心を落ち着けたようだった。ヤシャスィーンは、彼女をぎゅっと抱きしめた後、シンに向かっていたずらっぽくウィンクを送る。
「本当に~、子供には甘いわねぇ、シンったら~。」
シンは軽く肩をすくめた。
「…まぁ、俺も人の親になれるほど立派じゃねぇけどさ、少しでもマシな未来を見せてやりたいんだよ。」
作戦に向けて準備が進む中、メンバーたちはそれぞれの役割を再確認し、進むべき道を確信した。ミリアが参加できないことへの葛藤は残るものの、それを乗り越えて彼らは一歩を踏み出す。彼らにとって、麻薬組織の壊滅は単なるミッションではなく、「許せないものを放置しない」という信念の実行だった。
コロンビア某所、麻薬組織の拠点殲滅作戦
深いジャングルの中に隠された麻薬組織の拠点。その静寂を破ったのは、シンが振るう高周波ブレードの鋭い唸り声だった。刃渡り一メートル、鍔迫り合いの隙も与えない切れ味を持つそのブレードが、シンの手で自在に操られる。彼の周囲には三体のドローンが付き従い、状況を逐一モニターし、最適な戦略情報を提供している。
シンが初めて姿を現したのは拠点の中央。麻薬の加工場として利用されていた建物の前だ。警備の者たちが気づく間もなく、彼はすでに動いていた。
「クソがッ!」
叫び声とともに、ブレードが振り下ろされる。目の前の警備員が一刀両断され、その場に崩れ落ちる。その鮮やかすぎる一撃に、他の者たちは一瞬凍りついたが、すぐに銃を構えた。しかし、その行動すらもスカウターによって予測済みだ。
「ボケがッ!」「クサレ○ンポッ!」
二人目、三人目も次々とブレードの餌食となる。銃を向けられた瞬間、ドローンがレーザーで狙撃し、撃たれる前に動きを封じる。それを確認したシンが躊躇なく斬り伏せる。
「死ねッ!」一刀両断。「チンカスッ!」一刀両断。「サーモンッ!」一刀両断。「納豆巻きッ!」一刀両断。
その声が響くたび、組織の兵士たちが次々と姿を消していく。彼らの叫びや反撃は、シンの速度と精度の前では無意味だった。
スカウターとドローンの完璧な連携
スカウターは、敵と判断した全ての対象をシンに知らせる。その精密な認識能力は、銃を構えていない者や逃げ出す者さえも一瞬で判別する。「逃げれば助かる」と思った者たちにさえ容赦はない。シンがスカウターを通して判断を下した瞬間、ドローンがその者たちの位置を知らせ、遮蔽物の後ろに隠れた者も即座に追い詰められる。
「アホッ!」一刀両断。
刀が通った後には静寂だけが残り、床に血の跡が広がる。シンの動きは正確で、無駄がない。その様子を見て、戦意を失った者たちもいたが、スカウターが「敵」と判断すれば容赦はなかった。
10分で壊滅
建物内を徹底的に掃討するシン。その間もドローンは周囲を警戒し、後方からの攻撃や増援の動きを即座に報告する。麻薬の加工設備や記録は、ドローンによって映像データとして記録された後に破壊された。
一つの拠点を壊滅させるのに、10分とかからなかった。その効率の良さと容赦のなさは、彼自身の卓越した技術だけでなく、エリシオンの技術力の恩恵でもあった。
「ふ―、次に行くか」と、シンがブレードを軽く振り払う。血の跡が地面に飛び散り、静かだった建物にはもう誰も残っていない。ドローンたちがシンの周囲に戻り、彼の周りを円を描くように旋回する。転送装置で次の拠点まで移動する準備が整った。
「おい、次の拠点に行くぞ!」
その声に応えるように、ドローンが動き出す。シンは転送装置に乗り込み、次のターゲットへと向かう。まだ15ヶ所、潰さなければならない拠点が残っていた。
シンの心には葛藤がなかったわけではない。それでも、彼の目標は一つ。麻薬によって搾取される人々の救済と、組織の完全な壊滅だ。その意志に従い、彼は次の拠点へと向かうのだった。
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