第6話 餓者髑髏と骨の騎士


巨大ジャイアント骨族スケルトンですか…」


 巨大ジャイアント骨族スケルトン、昔は餓者髑髏がしゃどくろと呼ばれていた下半身だけの魔物の特徴は、15mほどの巨体と膨大な魔力量である。


 私の背から翼が生え、魔力が霊力へ変質する。


刻嵐きざみあらし


 私は飛び上がると、魔法を発動する。


 肋骨に命中し、切り傷をつける。


「やはり魔力総量が多い。このままでは私の魔力が先に尽きてしまいますね」


 魔物は魔力で身体が構成されており、魔力が尽きれば死ぬため、人間のように魔力がなくなるまで戦うことはできない。

 最低限生きれるほどの魔力を残しておかなければならない。


 巨大ジャイアント骨族スケルトンが殴りかかってくるが、動きが遅い。

 簡単に避けられるので気にする必要はない。


魔増インクリース


 魔力の回復速度を上げる基本魔術。使うと肉体的疲労が溜まる。

 使いすぎれば戦闘不能になるだろう。


 何かいい方法はないだろうか。


 魔物に魔力を使わせる一番手っ取り早い方法は…


裂颪さきおろし!」


 脛椎に風が吹き荒れる。


 首の骨が折れ、巨大ジャイアント骨族スケルトンの頭蓋骨が落ちる。頭蓋骨が消え、首から新しく頭が生える。


「魔物の身体は完全に分離すれば片方が消滅する。そして再生するときは必ずコアがある方から再生する。頭蓋骨は大きい。再生に必要な魔力も多いでしょう!」


 方針は決まった。

 それでもできるだけ魔力は節約したい。


「わざわざ京都まで取りに行ってよかった」


 私は刀を取り出す。


「妖刀 微風そよかぜ


 名前を呼ぶと、妖刀が起動する。


 私は再生した頭蓋骨まで飛び上がり、魔力を込めた微風そよかぜで軽く叩くと、頭蓋骨に無数の亀裂が走る。


 そして、頭蓋骨が砕け散った。


 すかさず肋骨辺りに近づき3本の骨を同じように軽く叩くと粉々に砕けた。


 微風そよかぜの能力は無数の小さな斬撃を発生させるという至ってシンプルなものである。


 だが大量の斬撃は確実に相手にダメージを与え、軽く叩くだけで数万から数億の斬撃が浴びせられる。


 頭蓋骨が再生する。


 微風そよかぜで粉砕する。


 それを10回ほど繰り返すと巨大ジャイアント骨族スケルトンの魔力は枯渇し、もう身体を構成する魔力しか残っていなかった。


「終わりにしましょうか」


 そう呟くと頭蓋骨に接近し、叩き割る。


 次に肋骨を一本ずつ砕いていく。


 そして背骨を破壊すると、跡形もなく消滅した。


 巨大ジャイアント骨族スケルトンを倒した。

 妖刀の能力を使うために消費したが魔力も十分残っている。


 まだ戦える。


(さて、どこを手伝いましょうか…)


 一番強い魔物と戦っているのは玄斗だ。


 だが一番実力があるのも玄斗である。


 他のメンバーが弱いというわけではないが心配である。


 特に大地と麗奈は自分が戦った巨大ジャイアント骨族スケルトンと同じくらい、若しくはそれ以上の敵と戦っている。


 フブキや子竜族ミニドラがいるとはいえそれだけでは少し心許ない。


 どこに加勢に行くべきだろうか。




「翔子様!」


 結局主を選んだ。


 翔子の仕事が一番簡単である。


 だから敢えて先に終わらせて二人で1ヶ所ずつ加勢に行く各個撃破の作戦である。


 決して主が一番大事だからではない。断じてない。


 多かれ少なかれ個人的な理由も含まれている、というかそちらの割合の方が多いのだが、ちゃんとした理由があるのだ。


 翔子は基本魔術で骨族スケルトンを倒していた。


 成長を感じる。


 ただ、悠長にしている暇はない。

 早く終わらせるべきなのだ。


霊風れいふう


 霊力の浄化作用によって骨族スケルトン達が次々と消滅していく。


「すごい…私はまだ実力不足ね」

「いえ、翔子様も随分成長されました。早く他の方の加勢に行きましょう」


 翔子たちは大地とフブキが戦っている場所へ向かい、走っていく。




 大地達は竜武ドラゴントゥース骨族ウォーリアーの攻撃を凌いでいた。


 ただ、攻撃をフブキと二人掛で防ぐことで精一杯だった。


「大地様!フブキ!」

「兄上!」

「加勢に来まs…微風そよかぜ 一筋ひとすじ!」


 一瞬で肉薄してきた竜武ドラゴントゥース骨族ウォーリアーが剣を振るい、それを微風そよかぜで受け止める。


(速いっ!)


 微風そよかぜ 一筋ひとすじ。3つある微風そよかぜの派生能力の一つで、無数の小さな斬撃を一纏めにする。


 相手の剣が折れるが、すぐに直った。


(自身の魔力であの剣を作っているのか)


魔線レイ!」

土射ソイルショット!」

氷柱散弾アイシクルショット!」


 三人が攻撃を行う。


 しかし竜武ドラゴントゥース骨族ウォーリアーは殆ど躱して再度私に肉薄してくる。


 土射ソイルショット氷柱散弾アイシクルショットが一発ずつしか当たっていない。


 どうやら相手は私が最も危険と判断したらしい。


 ギリギリで剣を躱す。追撃を受け太刀すると、相手の剣が砕ける。そのまま追撃するが、躱される。

 そして、相手の剣が直り、攻撃される。

 それを躱して妖刀を地面に突き刺す。


微風そよかぜ 無間むけん


 突き刺した場所を中心に斬撃が広がる。


 竜武ドラゴントゥース骨族ウォーリアーにも何十発もの斬撃が浴びせられる。


「畳み掛けますよ!」

「「「了解!」」」


 全員に合図する。


微風そよかぜ 烈風れっぷう

土棘グラウンドニードル!」

雪拳スノーストライク!」

浄化球ピュリファイショット!」


 竜武ドラゴントゥース骨族ウォーリアーは光の球を肩に食らい、地面から生えた土の棘が刺さる。

 しかし飛んできた斬撃をギリギリで躱すと、雪の拳を剣で受け止めて凌いだ。


 まだ相手は半分以上魔力が残っている。


(3分の1くらいは削れましたかね)


 相手の魔力残量を測る。


 どう考えても先ほどの巨大ジャイアント骨族スケルトンより厄介である。


 この状況でコクとハクは戦闘に参加できない。


 魔物は普通、魔術が使えない。


 原型骨族スパルトイや天狗など使える種族もいるが、そういうのは少数派である。


 魔法が使えないため遠距離攻撃手段を持っていない。


 近接で戦うのは危険すぎる上に、私の邪魔になってしまうのだ。


 また肉薄される。


 妖刀を振るい、接戦を繰り広げる。


刻嵐きざみあらし


 隙をついて魔法を発動する。そして三人が各々魔法を使う。


 これを繰り返し、着実に魔力を削っていく。


 フブキの雪拳スノーストライクだけが当たった。


 相手が剣を振るう。それを剣で受け、反撃。防がれる。


霊風れいふう


 隙をついて魔法を発動。






 そこから数分、剣戟を繰り広げた。


裂颪きざみおろし


 隙をついた魔法。


 4人の同時攻撃が、全てが当たる。


(相手の集中力が低下してきている。でもそれはこちらも同じ…)


「っ!」


 剣を避けきれず、頬が少し斬られる。


 接近されすぎた。


微風そよかぜ 無け…グハッ」


 腹部を剣で貫かれる。


「兄上!」


 フブキの心配する声が聞こえる。


「終わりだな。微風そよかぜ 一筋ひとすじ!!」


 いつもの丁寧な口調ではなく荒々しい声で叫び、相手の首を断ち切る。


 竜武ドラゴントゥース骨族ウォーリアーの魔力が尽き、消えていく。


 刺さっていた剣も消えて、血(正確には身体を巡っている魔力だが)が吹き出す。


治癒の光ヒーリングライト


 翔子が魔法で傷を治す。


「ありがとうごさいます。助かりました」


 翔子に頭を下げた。


「もう。無茶しないでよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る