第5話 鞍馬天狗
①生への執着
②精神的な負荷
③殆ど消費されていない魔力
①と②が残った魔力に作用することで、魔力が呪力に変質し、死してなお人を害する魔物となる。
そして生まれたときから核が存在しない魔物も魔力ではなく呪力で身体が構成されている。
核が存在しないため、勝利条件が魔力切れのみとなる。
今回現れたのは後者、しかも三体同時。
先ほどの攻撃で一体は瀕死である。
「今の攻撃だけで勝てるのでは?」
「魔力はできるだけ温存しておきたい。ここに来るまでに見つけた
「了解しました。では、私が本気を出します。玄斗様に手間をかけさせず三体全て倒しましょう」
イブキの背中から翼が生える。
「もう同僚も数人しか残っていなくて寂しいですよ。
種族魔術とは同種族の魔物のみが使える魔術である。
「独学なので出来は悪いですが…」
イブキの魔力が変質する。
それは本来、神聖魔術の使い手が持つ変質した魔力。
「
変質した魔力――霊力の風が吹き荒れる。
三体の
「やはり魔力の消費が激しいですね…」
イブキの翼が消える。
「…」
どうやらイブキは俺が思っていたよりずっと強かったらしい。
「別に隠しているわけでもないので言いますね。私は種族名
そして俺が思っていたよりずっと大物だった。
「あら、もう終わったのかい」
声がした方を見ると和服の四、五十代くらいの女性がいる。
「ええ、消し飛ばしました」
誰だろう、と俺は思う。
「
自己紹介してくれた。
「フブキから事情は聞いてる。いなくなっていたことは知ってたけどねぇ。アタシは魔力感知が苦手だから、助かったよ」
(この人、強いな)
俺は自分より強いかもしれないと思う。
「最近は
「ですね、おそらく近くに
玄斗が同意する。
「協会は何やってんだろうねぇ」
この口振りからして翔子の母は協会所属ではないのだろう。
脱退したのか、勧誘を断ったのか、ただ知っているだけかは分からないが。
「君、黒魔術師だろ?苦労してるんだろうねぇ」
「まぁ、そうですかね」
苦労、とは黒魔術が禁忌であることを指しているのだろう。
「さて、帰ろうか。君はどうする?泊まっていくかい?」
「遠慮しておきます。明日も学校があるので」
「そうかい」
三週間後
「最近特に
この場にいる全員が首を縦に振る。
「そして、最近探ってみた。結果、大地の予想通り高校が魔巣になっていた。このまま放置するのは危険だ。だから今夜、学校にいる魔物の一斉討伐をしようと思ってる」
「だから僕たちに協力してほしいってこと?」
「うん。麗奈もちゃんと属性魔術がつかえるようになってきたから」
「僕は大丈夫だよ、親も魔術師のこと知ってるから、任務だって言えば外出許可も出ると思う」
「私も、親が魔術師だから」
大地と翔子は協力してくれるらしい。
「麗奈は?」
「友達の家に泊まるって言えば大丈夫かも」
「じゃあ今夜11時に校門集合でいい?」
「いいよ」
「分かった」
「了解」
午後11時。
全員が集まる。
魔術師2人、黒魔術師、神聖魔術師、三代目鞍馬天狗とその弟、八咫烏、白蛇、そして子竜族。
様々な種族が混じったチームだ。
学校に入る。
人気はない。教師はどうやら既に帰宅したらしい。
校庭には大量の
「大体50体かな?
俺が呟くように言う。
「当初の作戦に変更はありませんか?」
イブキが問う。
「変更点はないよ」
「それでは念のため、作戦を確認します。大地様、翔子様、フブキ、ハク、コクが校庭の雑魚を殲滅。玄斗様、麗奈様、私が校内を捜索し、敵のリーダーを倒す、でいいですね?」
『はい』
「じゃあ、作戦かい…」
「
「っ!」
俺が飛び退くと斬撃が通りすぎる。
「躱されましたか、やはり油断はよくない」
魔物と思われる青年が現れる。
後ろには一般的な
「作戦変更。ボスは俺が倒すからイブキがデカイ奴、麗奈がドラゴン、大地とフブキで騎士、残りで雑魚を殲滅して!」
「死霊魔術
三体の
ゴキッ、バキッ、グシャッ。
骨が折れる音が響く。
そして、真っ白な大剣が出来上がった。
「
(なるほど。形を変える…いや、合成する魔法か。あの騎士も三体合体させたのかな?)
「お待たせしました。自己紹介がまだでしたね。スカルと申します。
「
「いや、そこは問題じゃない。一番問題なのは…」
イブキの呟きに玄斗が反応する。
「お前、何歳だよ」
「どういうことだ?」
大地が聞いてくる。
「
「つまり人の姿ということは長生きしてるってことか」
「そう。長生きしてるってことはそれだけ長く生き残れるほどの力量があったり長い間行き続けて成長することで膨大な魔力総量を持ってるってことだ」
「話し合いは終わりましたか?」
スカルが話しかけてくる。
「待たせたな。戦闘開始だ。
「
黒い鎖を光の矢が射ち落とす。
戦闘開始の合図と共に大地達も戦い始める。
スカルが肉薄してくる。
「
剣が振り下ろされる。
(受け太刀…ダメだ。生半可なものじゃ折られる)
「
すんでのところで躱す。
「
背後に回り込み、氷でできたナイフで刺す。
刺された周囲が霜に覆われていく。
「
黒く変色した手が接近し、通りすぎる。
少し出血した。
(かすっただけで魔力で守っていた体を傷つける威力、直撃してたら死んでたな)
「死霊魔術は死体を操る魔術だと認識しているならまだまだ半人前です。死神の魔術が魂を扱う魔術なら我々の魔術は死そのものを扱う魔術です。先ほどの攻撃では死を纏った手で細胞そのものを自滅させました。その死を体全体に纏うとどうなると思いますか?」
俺は身構える。
「
魔法陣が展開される。
「刻限魔法
スカルが黒い靄に覆われる。
そして剣にも黒い靄がかかる。
「この状態は身体が蝕まれるので長時間の使用は危険なのです。一撃でも当たればそこから呪いが広がり、5分ほどで全身に蔓延して身体を動かすだけで崩れるほど細胞が脆くなるでしょう」
(あいつが死ぬまで攻撃を避け続けなければいけないのか。骨が折れるな)
「
魔法陣が展開される。
「刻限魔法
俺の背中から炎の翼が生える。
さらに、一本の刀を取り出す。
「
刀を抜き、名を呼ぶと仄かに黄色く光り出す。
「さぁ第二ラウンド開始だ」
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