第4話 竜の子


 竜族ドラゴンとの戦いから2日後、とあるメッセージアプリでの会話


麗奈:今日の放課後会える?


玄斗:予定はないからいいよー


大地:僕も大丈夫。


玄斗:何かあった?


麗奈:小さいドラゴンがバッグの中に入ってる


玄斗:え マジ?


大地:ヤバくない?


玄斗:その竜族って今どうしてる?


麗奈:バッグから出る様子はなかったし、攻撃してくることもなかったので家で放置してるけど


玄斗:とりあえず放課後 それ持ってみんなで集合しようか


麗奈:じゃあ放課後に、松巻神社で集合ね


玄斗:OK


大地:了解






「で、その竜族ドラゴンは?」

「これ」


 俺の問いにバッグから小さい竜族ドラゴンを出して答える。


「やっぱり子竜族ミニドラか。親は昨日倒した竜族ドラゴンかな」

「ってことは水属性?」

「たぶんね」


 試しに基本魔術を使ってみる。


(魔圧プレッシャーにも反応無し)


「危険はなさそうだけど、どうする?」


 俺は大地に問いかける


「やっぱ殺すしかないよね」

「ねぇ、使い魔つかいまにするのって駄目なの?」


 使い魔か、確かにそれはいいかもしれない。


「使い魔なんて教えてないけど、どこで知ったの?」

「私の友達に妖怪が見えるっていう子がいてね、妖怪の友達が何人かいるって言ってて、もしかして妖怪って魔物のことなんじゃないかなって。だから魔物を仲間にすることもできるかもしれないと思って」

「妖怪か、確かに昔の日本では魔物のことを妖怪って呼んでたらしいけど」

「そうなの?魔術師協会の文献に妖怪の資料なんてなかったと思うけど」

「魔術を知らない見えてる人間が勝手にそう呼んで、それが広まったって家にある本で読んだことがある」

「とりあえずこの子は私の使い魔ってことでいいの?」

「魔術師協会の規定で禁止されてないし、いいと思うよ」


(一応監視しといた方がいいかな…)


「あ、麗奈だ。久しぶり~」


 和服の同年代くらいの女の子が麗奈に話しかける。どうやら顔見知りらしい。


「久しぶり」

「誰?その二人」

「私の友達だよ」

「あ、はじめまして。烏山玄斗です」

「もしかして麗奈のかれs‥うぐっ」

「彼氏じゃないから。友達だから」


 麗奈の腹パンが命中する。


「…西沢大地です。」


 和服の女の子が口を開く。が、声を発する前に麗奈に腹パンされる。


「ちょっと待ってマジで痛い。吐きそう。お昼ごはん吐いちゃう」

「自業自得でしょ」

「まだ何も言ってなかったよねぇ?」

「さっきと同じこと聞こうとしたでしょ?」

「否定はしない」


 こういうのを喧嘩するほど仲がいいというのだろうか。


 まぁ兎も角、大地と俺の間で、麗奈を怒らせると吐きそうになるほどの力で腹を殴られるという不名誉な共通認識が生まれた。




「この子が、さっき言ってた妖怪が見える私の友達」

神谷かみや翔子しょうこです。この神社で巫女をやっています」

「魔力量が多いね。やっぱ魔術師だね」


 大地が言うと、


「でもこの感じ、ちょっと違う。多分神聖魔術師じゃないかな」


 と俺が補足する。


「神聖魔術?」


 麗奈が尋ねる。


「聞いたことはあるけど…説明お願い」


 大地も知らないようだ。


「神聖魔法っていうのは、光属性から稀に派生する特殊な固有魔術で、主な効果は浄化、治癒、精霊召還とかかな。浄化に関しては毒やウイルス以外に魔力を消すこともできるから魔物に対して強力な切り札として重宝されてたらしい。その代わり人や動物に一切攻撃できない魔術で、使い手の殆どが宗教関係の仕事してたらしいよ」

「固有魔術って同じものは生まれないって聞いたけど」


 麗奈が尋ねる。


「基本的にはね。例外もある。黒魔術も固有魔術だし」

「つまり神聖魔術は魔物に対しては最強、対人では最弱って感じかな?」

「能力の強弱に個人差があるから最強って断言はできないかな」

「何の話…?」


 翔子が話しかけてくる。


「大地先生、出番だよ」


 約1時間授業が行われた。




「ねぇ、じゃあ天狗も魔物なの?」

「京都の辺りによくいる魔物だね。知能があって会話も成立するから友好的な魔物だよ」


 俺が団子を食べながら答える。


「じゃあ、白い蛇とか烏の魔物っている?」

「いるよ」

「じゃあ行動パターンとかわかったりしない?」

「それはちょっと無理かな。なんでそんなこと聞くの?天狗と蛇と烏の使い魔がいなくなったとか?」

「天狗はいるんだけど…」


 似たような顔の天狗が二人現れる。


「翔子様の使い魔をしております。イブキと申します。こちらは弟のフブキです」


 兄弟だそうだ。とてもよく似ている。


「彼らがいなくなって2週間経ちます。どうか探してくれませんか?」

「お願いします」


 イブキに追随してフブキも頭を下げる。


「まぁいっか。わかりました。顔を上げてください。探してみますが見つかるかどうかは分かりませんからね」

「構いません」

「それではいなくなった2体の特徴とか、いなくなったときのことを詳しくお願いします。」




 要約するとこうだ。

 いなくなった使い魔は白蛇しろへび八咫烏やたがらす。二週間前に忽然といなくなったらしい。朝起きるといなくなっていたため、夜に消えたことになる。


 おそらく魔物の仕業だろう。


「三本足じゃなくても八咫烏やたがらすっていうんだね」

「そもそも八咫烏やたがらすは二本足だよ。中国の方にいる三足烏さんそくうと混同して八咫烏やたがらすの足は三本って言われるようになったんだ」


 この通りいなくなった2体の主人は呑気である。


(とりあえず近くの魔物探ってみるか…)


魔法陣展開サークル 発射物オブジェクト::天系スカイ・空気印エアーシンボル発射形式リリースタイプ::拡大エクスパンド球状スフェリカル


 魔方陣を作り…


魔法陣展開サークル 付与術式グラント::魔力感知センサー


 もうひとつ作り…


接合線コネクトライン::六本シックス


 二つを線で繋いで…


魔法陣保存プリザーブ 名称ネーム::魔力関知空気サーチエアー


 バッグから魔導書を取り出すと浮遊し、言葉に反応して開き、2つの魔法陣と六本の線が書かれる。


「魔法陣がコピーされた?」

「魔法陣のパターンを魔導書に保存した。でも最大で10個までだよ」


 魔法陣に魔力を流して起動する。



 5分後


「半径150m以内に反応はないね。もうちょっと待って範囲を広げるのもいいけど夜の方がいいかな。0時集合で」

「0時は無理でしょ」

「私も」


 大地に麗奈が同意する。


「大丈夫だよ。イブキ、手伝ってくれる?」

「私一人なら構いません。ただフブキには翔子様の護衛としてここに残ってもらうことになりますが」

「わかった」




 数時間後。午前0時。


「いましたか。玄斗様」

「やぁイブキ。1時間くらい前からずっと、さっきの魔法で付近に魔力を帯びた何かがないか探してたんだ」

「結果はどうでしたか?」

「見つかったよ。この神社のすぐそばの山だよ。多分戦ってる」

「わかりました。行きましょう」


 出発しようとすると、


「兄上、幸運をお祈りします」


 フブキが声をかけてくる。


「あぁ、行ってくる」


 二人が飛び立つと、砂埃が舞う。


 イブキの属性魔術は風魔術かぜまじゅつなので、飛行できる。

 俺も天属性てんぞくせいで空気を操り、足場を作ってその上を走る。






「ここら辺だよ…って言わなくても分かるか」


 そこには白蛇しろへび八咫烏やたがらす、そして3体の骨族スケルトンがいた。


骨族スケルトン武骨スケルトンウォーリアーですかね」

「いや、魔力量や動きから見て竜武ドラゴントゥース骨族ウォーリアーだね。普通の武骨スケルトンウォーリアーじゃあんなに速く正確な攻撃はできない」

不死魔物アンデッド上位種じょういしゅですか。厄介ですね」

「随分と博識だね」

「護衛隊長ですから」


 二人が降り立つ。


「ハク、コク、助けにきたよ」

『イブキ様!』

白蛇しろへび八咫烏やたがらすって喋れるの?」

「実物を見るのは初めてですか?」

「まぁね」

「喋れる個体と喋れない個体がいますよ」

「じゃあ作戦会議を始めよう。攻撃しまくる。作戦会議終了!」


 俺とイブキが戦闘態勢に入る。


「全員目を閉じて!白新星ホワイトノヴァ!」


 白い閃光と爆風が発生し、爆音が鳴り響く。


 直撃した一体は死にかけているようだ。


 戦いの火蓋が切られた。

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