第4話 奪うのではなく幸せにしろ!
娘への思いが拳に宿り、武神と化した轟が魔王に次々と拳打をぶち込む。
「いいか! 女は奪うのではなく幸せにしろ! その気持ちがない奴が人様の娘さんを嫁に貰おうとするな!」
完全にスイッチの入った轟は魔王を一方的にしばきまわす。
「くそ、なんだお前の強さは、まいった! まいった! どうじゃワシと一つ取引をせんか?」
「取引だと?」
魔王は轟の強さに驚き、敵に回すよりも味方に取り込んだほうが良いと交渉を持ち掛けるのであった。
「もし、お前がワシの仲間に入るなら、この世界の半分をお前にくれてやってもよい! 財も美女もお前の思うがままだぞ!」
魔王の調略に轟は少し黙り込んだ。
(ほう、コイツ、話に乗ってきそうだな。後で毒殺でもして交渉はなかったことにすればよい!)
魔王はあくどいことを考えていた。
しかし、次に瞬間魔王の顔面に渾身の正拳突きが叩き込まれる。
「試合中に私語は慎め馬鹿野郎!」
轟にとってこの世界の半分などまったく興味がなく、むしろ、決闘のさなかに姑息な交渉をしてきた魔王に怒りの鉄拳をぶち込み完全に魔王をノックアウトした。
「轟殿ありがとう!」
魔王討伐に成功した轟の手を握り、涙を流して喜ぶ王様と神官。
こうして異世界Aを魔王の危機から救った轟であったが、帰り際にもらった王国通貨が元の世界ではおもちゃのお金同然のゴミであり、元の世界の戻ると妻の節子に何日も音信不通でいなくなっていたことを説教されるのであった……。
ファンタジーの時間Ⅰ 八幡太郎 @kamakurankou1192
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