第2話 ゴツゴツの花嫁

 ウェディングドレスを身にまとったゴツゴツの花嫁が魔王城へ到着した。


 王も神官もさすがにバレると思い、魔王城を護衛する魔族の兵士たちに殺されるとびくびくしながら王宮の廊下を歩く。


 しかし、魔族の兵士たちは、目を丸くしながらも、このゴツゴツの花嫁を魔王の元へと連れていく。


「あれ、普通に魔族の兵士たちは轟殿を連れていくが、魔族の美的感覚は人族とは

違うのか……」


 王は神官に尋ねるが、神官は魔族も美的感覚は人族とそう変わらないはずであると王とひそひそ話をする。


「おい、俺がそれなりに美しく見えてんだろ! ひそひそ話すんな! 俺が男ってバレるだろ!」


 轟に叱られ、「いや既にバレてるだろう」と思う王と神官ではあったが、魔族の兵士たちが一切、轟の女装に触れないことを不思議に思っていた。


 実は魔族の兵士たちもこんなゴツゴツでイカツイおっさんの花嫁は初めて見たが、花嫁を欲したのは人外の怪物であるあの魔王、普通の女では満足しないのだろうと勝手に理解しているのであった……。


「魔王さま、人族の王が姫君を連れてまいりました!」


 魔族の兵士が魔王のいる玉座の間に向かって姫を連れてきたことを告げる。


「どこに姫がいる?」


「どこって、こちらに……」


 轟を指さし、魔王に伝えようとした魔族の兵士であったが、怒った魔王はぶっとい腕で兵士を殴り飛ばし、大声で兵士たちを怒鳴り散らす。


「こんな気持ち悪い花嫁がいるか! というか、こんな奴が姫ではないとわかるだろ!」


 魔王が部下たちにキレまくっていると、轟は道着の上に被っていたウェディングドレスを脱ぎ捨て、魔王に向かって近づてい来る。


「まんまと俺を花嫁と見間違っていたな! おい、魔王さんよ、俺はお店の姉ちゃんじぇねぇから、チェンジはきかねぇぞ!」


 そう言うと、魔族の兵士たちを回し蹴りで吹っ飛ばし、魔王の目の前で拳を鳴らしながら、構えを取るのであった。

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