向田邦子の猫の名前

ねこ沢ふたよ@書籍発売中

十六羅漢

 向田邦子さんが飼っていた猫の名前を知った。

 エッセイを読んでいた時に、猫の話があったのだ。

 猫好きの私としては、それはもう興味津々でその話を読んだのだ。


 向田邦子の飼っていた猫の名前は、迦理迦かりか。仏教の十六羅漢様のお一人の名前にちなんでいるそうだ。

 この猫のことが書かれているエッセイのタイトルも『迦理迦という猫』であった。

 迦理迦は、邦子が実家に暮らしている時分から飼い始め、実家を出て一人暮らしをしてからも飼い続けた猫である。

 かなり長く愛していた猫のようで、迦理迦を飼うために、邦子は猫の飼える家を探したのだ。

 邦子の書いたエッセイによれば、この迦理迦というのは邦子の父が名付けたようだ。

 邦子の父は、邦子に迦理迦とは『十六羅漢の唯一の女性』の名前で、メスのシャム猫に合う名前だと言った。邦子は、父のことだからいい加減な情報で、真実は知らないと論じていたが、どうだろう。

 私も、十六羅漢様に女性がいるとは知らなかった。初耳であった。

 気になってインターネットで調べてみたら、かなり屈強な男性の像が出てきた。

 なんだ男性じゃないか。

 時を超えて、向田邦子の父親にまんまと騙されてしまったのだ。

 残念ながら、十六羅漢様の中に女性を見つけることはできなかった。

 だが、この迦理迦様、猫の名前にするに相応しい点が一つある。

 迦理迦様の像は、どれも右手で虎を撫でているのだ。

 しっかりと前を見据えて、右手は虎の頭の上に置いておられる。モフっておられる。


 迦理迦様、失礼ながら十六羅漢の中で一番分かり合える人物な気がしてきた。

 この迦理迦様ならば、長い説法も聴く気になるというものだ。(虎付きでお願いします)

 迦理迦様がどんなことを説かれる方なのかは、存じ上げないが。


 今度、猫のキャラクターを小説に出すときには、向田邦子と十六羅漢を偲んで、『迦理迦』と名付けるのも良いかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

向田邦子の猫の名前 ねこ沢ふたよ@書籍発売中 @futayo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画