第2話

ボンジョルノ!手紙をどうもありがとう!

私の名前はアンナ。十二歳の女の子です。この間アルノ川で馬に水を飲ませている時に、二人からの手紙が入った透明な筒を拾いました。村の長老のアルベルテ爺さんのところへ行って読んでもらい、その時に字の書き方も習ったので、こうしてケンとカメレルネフチに返事を書いています。

私のお父さんはフィレンツェで絵を描いたり彫刻を彫ったりしているので、めったに帰って来ません。お母さんはいません。

 「リザ」という名の、とても美しい人が私のお母さんなのですが、お父さんではない別の人の奥さんなので、会ったことはありません。うちにお父さんが描いた絵があるだけです。

ケンは大人になったら、セリエAに入りたいと書いてあったけれど、それは東ローマ帝国の新しい軍隊ですか?入れるといいね。私は大人になったラジェノバのコロンボの船に乗って、東方のオリエントや、エジプトに行き、ケンやカメレルネフチに会ってみたいです。

また手紙書きますね。

私のパスワードは、「はじめに」です。ではまたね!

一五一七年十二月二十四日

ナターレの前の日に。

アンナは手紙を瓶に入れると馬に跨がり、アルノ川へ向かった。

冬のビンチ村の風かま乾いた音をたてて少女の頬を打ったが、彼女の顔は喜びに溢れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る