第3話 禍
☆
早島塔子の悪事を知ったのは世界線が変わる前の事だ。
世界線を変えた神社に行く前の事だった。
実の所、早島塔子は仲間と共謀して彼を彼の貯めたバイト代を狙って殺害した。
何故それを知ったかといえば早島塔子の仲間が事故後にオドオドしながら「人を撥ねた」と話しているのを聞いたから、だ。
彼のバイト代を浮気のデート代に使う為に狙った故の殺害だった、と話していたが。
非常に身勝手な理由だと思う。
つまり何が言いたいか。
須山秀彦が撥ねられたのは飲酒運転の車では無い。
あくまで秀彦は飲酒運転の車と言っているが全部違う。
早島塔子の仲間の車だ。
わざと彼を撥ね飛ばした、と言えるのだ。
だからこそ私は神様にお願いをしたのである。
こんなクソみたいな世界線を変えてくれ。
その様に、だ。
早島の家庭が貧乏だから?
知ったものか。
あくまで許さない。
だけどまさか本当に過去に戻るとは思わなかったけど。
早島は恐らくだが浮気がバレたらまた彼を殺しにかかる可能性がある。
それを何としても阻止して...そして。
彼女を本気で殺しにかかる。
まあ本当に殺したら捕まるから裁判にかけてやる。
悪事の全てを知ったら...絶対に。
そう思いながら私は目の前の秀彦を見る。
秀彦は「なあ」と聞いてきた。
「奴はもう浮気しているのか」
「...その可能性があるってだけだろうけどね。...だけど1年前に高確率で浮気はしていると思う」
「そうなんだな」
「うん。1年前からの浮気。そして今から1年後に恐らく貴方は死ぬ」
「...そうだな。確かにその通りだ」
秀彦はショックを受けている様だった。
まさか、浮気相手に殺された、とは思うまい。
そう思いながらそのオレンジ色の夕陽に照らされているショックな顔を見る。
私は明後日の方向を見る。
それから秀彦を見る。
「秀彦。私は貴方が好きだから。付き合ってほしいけど。...私が期待するのはそこじゃなくて彼女が地に落ちる時だ」
「...そうだな」
「...貴方が死んでしまったら本当に意味無いから」
「そうだな...早くどうにかするか」
そして秀彦はオレンジ色の夕陽に照らされながら前を向く。
私に向いてきた。
それから「世界線を変えたけど...俺が死ぬのは変わりないのか」と聞いてくる。
その言葉に首を振る。
「それは分からないね。絶対は無いから。...もしかしたら阻止出来ないかもだけど。だけど私はこうして貴方に好きって伝えられた。それでもう世界線は変わっている」
「...そうだな。...0じゃ無いかもな」
「そういう事。だから...頑張ろう」
「分かった」
そうしていると「秀彦」と声がした。
私達は驚愕して前を見る。
そこに早島塔子が居た。
早島塔子は私を見てから秀彦を見る。
「塔子ちゃん?どうしたの?」
「どうしたの?じゃないよ。...私の彼氏だよ?何でそんなに馴れ合っているの?秀彦。貴方もそうだよ。...他の女の子にそんなに親しく...」
「...」
秀彦は黙る。
私は嘲笑うのを抑えながら早島を見る。
早島塔子は悲しそうな顔をしている。
私はその姿を見ながら言った。
「別に大丈夫だよ?私は何もしてない」
という感じで、だ。
正直この場所でコイツが殺しに掛かってくる可能性も否定出来ない。
なので無理に問い詰める事は出来ないな。
まだ準備は出来てない。
「...塔子ちゃん。私は彼氏を取ったわけじゃ無い」
「だけど仲良くし過ぎ。...ねえ。秀彦。何で私と一緒に帰ってくれないの」
「...それは...」
あくまで浮気の事を出すのをマズイとは思っているらしい。
私はその姿を見ながら「実は試験勉強の事を教わってたの」とニコッとする。
まあ仮にも嘘だらけだけど。
そう思いながら私は薄ら笑いを浮かべない様にしながら早島を見る。
すると早島は目を細めてから私を見ていた。
「...疑り深くはなりたく無いけど。本当?」
「...うん。その通りだよ」
「...そう。...なら良いけど」
私は落ちる夕日を見ながら「帰ろ。みんな」と声をかける。
早島は頷きながら踵を返す。
それから秀彦も歩く。
因みに今の事項を一言で纏めるとこうなる。
1、先ず浮気の事などがバレると恐らく早島は変貌する。
2、秀彦がもし死んだら終わり。
そういう事だ。
タマと契約した条件は、私が幸せになる事、だ。
だからこそ私は幸せにならないといけない。
先に仕掛ける様に仕向けても良いが。
今はまだ準備をしたいから。
まだ早い。
☆
早島塔子が俺を殺した。
どうしてそうなったのかといえば。
俺が働いて貯めていたお金を狙った故の犯行だった。
それは20万円ちょい。
今、別れても良いが。
正直、早島塔子と別れる理由がまだ見つからない。
だから別れられない。
その事もあり都に相談すると都は「証拠は徐々に集めていこう。...中途半端だと否定されるからね」と言っていた。
俺はバイト先でスマホを仕舞ってから表に出る。
すると俺と同級生でバイト仲間の坊主頭の玉城弥代(たまきやしろ)が居た。
「おう。元気か」
「よお。玉城(たまき)。元気だぞ」
玉城は高校2年生になる1年後、県外に引っ越す筈だ。
だからこそ今、仲良くしておかないとな。
そう思いながら大欠伸している玉城を見た。
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