第2話 復讐に誓う心

幼馴染に嵌められた。

その為にショックの最中、ゆっくり帰宅していると背後から来た飲酒運転と思われる車に俺は思いっきり撥ねられた。

飲酒運転の車はそのまま轢き逃げしており。

俺は即死に近い状態で病院に運ばれ多分その場で死んだ。


筈だったのだが。


「秀彦♪一緒に帰ろう」


タイムリープしたと思われる。

俺は...目の前の1年前から浮気...しているとされる早島を見る。

早島は「?」を浮かべて眉を顰めている。

そしてこう言ってきた。


「何かおかしいよ?今日。...私達恋人なのに冷たい様な...」

「...確かにな」


何というかさっきの光景、言葉などが衝撃的で何も言えない。

正直...その。

都と淫らな関係になる寸前だったしな。

だからこそ衝撃的。

コイツもそれをもうしているとなると...。


「...塔子」

「な、何...?」

「...すまないが俺は今日はお前と帰る気はない。...今日は1人でゆっくりしたい」

「...え?...え...あ、うん...」


塔子の証拠を掴まなければならない。

そう思いながら俺は早島を見る。

早島は何だか俺の視線に威圧された様に「...」となってからしゅんとなる。


その姿を静かに俺は見てから立ち上がる。

そのまま帰宅しようと思い外に出る。

すると目の前に白い猫が通った。


「やあ」


その猫がこう言った気がした。

俺は驚愕しながら周りを見渡す。

だがその猫と俺しか居ない。

猫は俺を見上げている。

口が開いた。


「君、浮気されたんだよね?彼女さんに」

「...あ、ああ。1年後に...っていうかお前は?」

「僕の名前はタマだ。...僕、実は夕波さんと契約していてね」

「...契約?」

「そうだね。...僕はその主さ」

「タイムリープさせたのはお前か」

「そうだねぇ。僕は天の猫なのさ。お偉い猫だ」


そして猫は顔を撫でる。

俺はその姿を見ながら「...夕波都が...俺が好きだからこうしたのか」と聞いてみる。

すると「いや」とタマは言う。

それから見つめる様に顔を上げた。


「彼女は復讐心を抱いている。ただそれを遂行したいんだ」

「...それは1年後の世界でも出来たろう。何でだ?」

「君が死んじゃったら意味無いでしょ。彼女は君が好きなんだ」


俺は先程の光景を思い出す。

それから赤面を払う様に首を振ってタマを見る。

タマは俺を見ながら「君と彼女はアダムとイブの様な感じだよ」と小首を傾げる。

俺は「?」を浮かべる。


「この世界では君と彼女しか元の世界の記憶が無いからねぇ」

「...元に戻るのか。この世界は」

「戻らないよ。...彼女が一度願って全てを変えたから」

「...そんなパラレルみたいな事が起こるんだな」

「まあこんな奇跡は1度きりだけどね」


タマはそう言いながら舌で手を舐める。

俺はその姿に膝を折って目線を合わせる。

タマは欠伸をした。

伸びをする。


「...君と彼女が幸せになる事は無い様にするよ。それが契約者の本望だ」

「...そうか...」

「良いじゃないか。実際このまま君死ぬんだよ?元の世界に帰ったら。...その前に復讐したら良いじゃ無いか。君の元の世界は退屈だっただろう?」

「...」


確かに...嵌められた以外にも。

いじめを受けたりしていた。

みんな死ねば良いと思っていた矢先だったからな。

俺はそう思いながらタマを見る。

タマは「因みに特殊能力があるとかそういうのは無いよ。異世界転生じゃ無いんだから」と柔和に俺を見る。

でしょうね。


「あくまで世界線が歪んだだけだから。...よく言う時空線を歪ませるタイムマシンみたいな感じかな」

「...じゃあ俺はこの世界で生活していれば良いのか」

「そうだねぇ。...普通に生活していれば良いよ。...僕が保証するから」

「...お前、報酬とかそういうのは」

「うーん。疑り深いのはもしかして漫画の読みすぎ?...僕はそんな事は望まないよ。...例えば命を貰うとかそういうのは無いよ。僕の報酬とかそういうのはもう貰った。...それはこの世界をより良い様に改変したという、ね」

「...」


俺は静かにタマを見据える。

するとタマはこの様に言ってきた。


「...僕はね。困惑している人を世界線を変えてでも見捨てられない。君が死んでから彼女は...都さんは相当に苦しんでいたんだよ?」

「...そうか...」

「「好きな想いを伝えられなかった。死ぬ前に伝えたかった」ってね。...それを聞いてから普通、無視出来るかな?」

「出来ないな。...成程な」


タマは顔をまた撫でる。

それから遠くを見た。

そして「じゃあ僕は用事があるから」と言ってから俺を前の方向に向きながら振り返る感じで去るタマ。

それから。


「神様と話していたの?...秀彦」


そういう感じで都が現れた。

俺はその姿を見ながら立ち上がる。

それから「ああ」と言う。

そして向こうの住宅街に去ったタマを見ながら都を見た。


「私はこの世界線は気に入っている。...だから元の世界に戻さないよ」

「...知っている。そういう気も無いだろうし出来ないだろ。...1つ聞いても良いか」

「...うん」

「1年後の世界でもお前は俺が好きだったのか」

「そうだね。だからこの世界を。貴方が居ない、救えなかったクソみたいな世界を変えてやった。...この世界に満足している」


そして冷ややかな笑みを浮かべてから「あの女...社会的にもそうだけど全てで必ずぶっ殺してやる」と力強く言う。

俺はその視線を見た。

それから「...」となってから返事をした。


「だな」


という感じで、だ。

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