7.事件の真相

 遥香、悠一、大樹、美羽の4人が屋敷を後にしてから数日後、悠一は図書館などで、この屋敷と遥香の祖母、そして祖母の勤め先である屋敷の情報を徹底的に調べ上げた。

そして悠一の尊敬している大学の教授から、屋敷にまつわるある恐ろしい記録を発見したと連絡をもらい、その記録のコピーを手に入れる事が出来た。



「遥香、この記録をみてみろ」 

 悠一が遥香を呼び出し、大事そうに抱えていたファイルから資料を机に広げた。

古い新聞記事や裁判記録のコピーだった。


「何これ?」

 遥香はいぶかし気に資料のあるページに目を落とすと・・・・そこには驚愕の見出しが躍っていた。


【名取屋敷の儀式未遂事件~メイドが生贄にされかける~】


 遥香は目の前のすべてのが一瞬真っ黒に染められたように色を失い、手の震えが止まらなくなっていた。


「まさか、このメイドって・・・・・おばあちゃんのこと・・・・」


 悠一は静かに頷きながら、遥香のそばに寄り添った。

「君の祖母、高島和江さんだ。記事によれば名取家では“永遠の繁栄を願うための儀式が行われていた。その儀式には生贄・・・・つまり人柱が必要だったんだ」


「人柱?」

 遥香が小さな弱々しい声でつぶやく。

「・・・・・そんな恐ろしいこと、本当に?」


「事実なんだ」

 悠一が冷静に説明を続ける。

「その日、君の祖母は儀式の生贄にされるはずだった、でも奇跡的に逃げ延びた」


 遥香は息をのみ、震える手をギュッとにぎりしめて悠一にたずねた。

「逃げたの・・・・どうやって?」


「記事には詳細が書かれていないが、彼女が逃げた直後に屋敷の当主が急死している。そして儀式は未完のまま終わった」

 そこへ、遥香を心配した大樹と美羽が教室の中に入ってきた。

美羽はそっと遥香の震えている手を握りしめる。


「じゃあ、あの赤いシミって・・・・」

 大樹が恐る恐る悠一に問いかける。

「儀式で流された血の跡・・・」


「その可能性が高い」

 頷きながら、新聞記事を片手に説明する。


「遥香の祖母の件は未遂だったとはいえ、犠牲になったメイドの数少なくはないだろう。祖母と同時に若い庭師が一人姿を消しているらしい・・・・」


「庭師!!!」

 見る見るうちに遥香の顔が真っ青になっていくのに、驚いた3人は遥香のそばに駆け寄った。


「その庭師・・・・・おじいちゃんだ・・・・。おじいちゃんがおばあちゃんを助けるために、もしかして・・・・」

 涙が先にあふれてきて遥香はもう言葉にすることが出来なかった。

しばらくの間3人で遥香に寄り添いながら、かけるべき言葉も見つからず見守る事しかできなかった。


 「おばあちゃん・・・・ずっとそのトラウマを抱えて生きてきたんだね。それで絶対にあの屋敷には近づくなと・・・・私を守るために」








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