6.隠し部屋の謎

 4人が石段を下りていくと、そこには驚くべき光景が広がっていた。

地下室の中央には奇妙な石で作られた祭壇が置かれ、その周りに古びたロウソクが並べられており、床一面には赤黒いシミが点々と広がり、天井には奇妙な模様のようなものが描かれていた。

 

「これ・・・・なんなんだ?映画に出てくる儀式の部屋のようだ」

大樹はカメラを回しながら呟くと、悠一は周囲を観察しながら口をひらいた。


「おそらくここが、あの“仕掛け”の」中心地だ。古い文献や記録にあるような儀式の場だった可能性がある」


「儀式?でも何のために?」

 美羽の声が震えている。そんな美羽の肩を大樹はカメラを持つ反対の手で支えていた。


「ここを見て!」

 遥香が祭壇の上の一冊の古びた本を指さした。


「これ・・・・呪術書じゃない?」

 

 悠一は本を手に取り、ぽろぽろと今にも表面が崩れそうな表紙をめくり、

黄ばんだ紙はカビの跡が点々と残っており、紙の端っこの今にも破れそうな状態のページを慎重にめくった。


 そこには、手書きで不気味な文字と図形がびっしりと記されていた。


「・・・・・・これは、冥界の扉を開くための儀式のバイブルのようなものだ・・・」


「冥界の扉?」

 美羽が息をのみ反論した。

「そんなの、本当にあるわけないのに!!」

 現実主義者の美羽には信じがたい事柄だった。


「実際に信じて儀式を行った者がいたんだろう」

 悠一がいたって冷静に答えた。


「それもここで」 

 悠一のその言葉に、3人の背筋に冷たいものが走った。


「待って・・・・このページをみて!!」

 遥香が指さす先には、儀式の結果として“跡”が残ると記されていた。



— 門は失敗すれば“血の印”を残す。印は、消えることなくその場に留まり続ける―



 4人は阿吽の呼吸で、顔を見合わせた。


「血の印って・・・・・あの赤いシミのこと?」

 大樹の顔は血の気が引いたように青くなりながらも、カメラでこの部屋の様子を撮影しながらこうつぶやく。

「じゃあ、何かがここで行われようとして・・・・失敗したってことか?」

 大樹はさらに問いかけるように言葉を発した。 そして悠一が頷く。

「その可能性が高い。その“失敗”の結果、屋敷には異変が起こるようになった・・・・」

 悠一がそう言い終わると同時に、突然、地下室の奥から・・・ギシッ・・・という音が聞こえた。


「な、なんだよ、今の音!!」

 大樹は慌てて音がした地下室の奥の方にカメラを向ける。


「誰かいるのか?」

 悠一が懐中電灯を奥に向けると、闇の中からゆっくりと何かがこちらに近づいてくる影が見えた。


「噓でしょ・・・・誰かいる!!」

 美羽が切羽詰まった悲鳴をあげる。


 悠一が冷静に声を張り上げた。


「逃げろ!!上に戻るぞ!!」

 

 大樹が美羽の手を握り先頭で、階段を駆け上がり、悠一は遥香の腕を引っ張り自分の前に入れ、後ろを振りかえりながら3人に続いて階段を二段飛ばしで地下部屋から脱出した。


 上の寝室へと戻るとすぐに床板を元に戻そうとしたその瞬間、窓が大きく揺れ、突風が地下部屋から吹き上がる。


「何かが・・・・目覚めたのかも!?」

 いつも強気な遥香が珍しく声を震わせ、悠一のジャケットの裾を握りながらつぶやいた。

「いや、これはただの気配だ」

 悠一はそっと遥香の手を握り、3人に向かってこう言った。


「この場所は危険すぎる。すぐこの屋敷から出よう」

 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る