4. 屋敷の初調査
ある秋晴れの午後、オカルト研究会の3名プラス1名は丘の上の屋敷に到着した。
屋敷の窓ガラスは半分以上割れており、色あせ破れかけたレースのカーテンが、ゆらりと動く。その様子が得体の知れない何かに、監視されているように感じられた。
昼間でもこの辺りの空気はどんよりと重く、丘に上がる手前で4人の口数も徐々に減っていた。
錆びた門を押し開け、荒れ果てた庭を進んでいくと正面玄関にたどり着いた。
玄関の扉は古びた鎖で閉じられており、大樹が器用に工具を使って解除した。
「すごい!慣れたもんだね、もしかして何か裏の仕事してるんじゃない?」
美羽が軽口を叩くと、大樹は肩をすくめた。
「カメラやビデオなんかいじっているうちに、こういう事が得意になったんだよ。もともと手先が器用なほうだったしね」
重厚な扉を開けると、カビの臭いと蜘蛛の巣、足を進めるたびに舞うほこりが鼻や目などの粘膜を刺激する。
遥香は鞄の中から4枚マスクと軍手を取り出し、皆にくばった。
「さすが、研究会のリーダーだね。準備万端だ」
茶化すような悠一の態度に遥香はぶちぎれそうになる。
(今日だけ我慢すれば、明日からは部外者だし・・・我慢我慢)心の中でつぶやいた。
屋敷の中央は吹き抜けになっており、2階・3階の各部屋はそれぞれ扉で仕切られている。
真正面にある階段を上がり2階廊下にたどり着くと、身震いするような冷たい空気がさらに強くなってくるのを4人は感じていた。
「赤いシミ」は2階の寝室にあると言われている。
「この空間、どうやら特定の周波数音が反響しやすくなっているようだ。
人が不安を感じる低周波音も発生しやすい環境だ」
悠一の冷静な説明に3人は感心しつつも美羽が反論した。
「でも、それだけで幽霊の噂は説明出来ないでしょ?」
「だから、他の可能性も検証するんだ」
悠一は微笑みながら、ちらっと遥香の方に視線を送ったが、彼女は屋敷の中にある家具や装飾品に気をとられていて、悠一の視線には気づかずにいた。
4人はいよいよ「赤いシミ」があると言われている寝室の扉を開ける時が来た。
遥香は先頭に立って部屋の扉に手をかけようとすると、すぐ後ろにいる悠一が耳元でささやいてきた。
「遥香ちゃんは男前だね・・・・怖くないの?」
「町田君、近いって!このくらいでビビっていたらオカルト研究なんてやってられないでしょ」
その瞬間、遥香と美羽は大樹の方に顔を向けた。
「そーですよ、そーですよ・・・・男のくせに怖がりですよ!」
やけくそ気味に大樹は言い返したが、右手で美羽のジャケットの裾をしっかりとにぎっている。
「何かあったら大変だから、俺がドアを開ける。3人は少し後ろに下がって待機しててくれる」
なれた手つきで遥香の肩を抱き後ろへと誘導した。その優しく包み込むような手の感触に遥香は顔のほてりを感じていた。
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