第2話 Chapter2 「伝統空手 VS 357SIG弾」

 木島の住まいは千葉県の市川市にあった。市川市は奈良時代以前の手児奈伝説(美女伝説)が残る歴史があり、著名人や文化人が多く住む落ち着いた街である。木島の屋敷は800坪の敷地に日本庭園を持つ大きなものだった。木島は休日の午前中を近所の喫茶店で過ごす事が多かった。木島の本質はヤクザそのものであったが、本人は文化人気取りで、地元の名士のつもりでいた。木島の出入りする葛飾八幡宮の近くの喫茶店『未夢庵(みゆあん)』は地元の文化人が集まるサロン的な場所だった。


 米子は制服姿で開店と同時に『未夢庵』に入り、ホットコーヒーを注文した。今回は桜山学園の制服とは違う制服だった。ライトグレーのブレザーにブルーのシャツにワインレッドのスクールリボンに薄いブルーチェックのミニスカート。黒いタッセルロファーに白い靴下だった。店内は大正ロマンを意識した内装で、カウンター席と6つテーブル席があった。カウンター内でマスターと思しき初老の男がパイプの煙を燻らせていた。若い男性店員がカウンターをクロスで拭いている。米子はテーブル席に座り、株式投資の本を読んでいた。店内のテーブル席は徐々に地元の人間で埋まり始めた。米子の存在は店の中で浮いていた。他の客は皆、中高年以上の歳の男性客だった。10:30に木島が店に入って来て米子の隣のテーブル席に座った。米子は木島の座るテーブル席を知っていた。木島はハイブランドのライトイエローのポロシャツにグレーのスラックスを着用し、黒いスーツを着た体の大きな男を連れていた。男はボディガードの香川だ。香川は30歳で国武館大学出身だ。在学当時は空手部の主将だった。不良だった香川は中学から空手を習い、喧嘩の道具として技を磨いた。大学4年の時に東風会にスカウトされ、卒業と同時に東風会に入り、以後木島の付き人兼ボディガードをしている。喧嘩の強さは裏社会では有名で、関東の反社組織では3本の指に入ると噂されている。身長は185cmで体重は90Kg。顔は能面のように無表情でどこかフランケンシュタインを思わせる顔だった。

『ガシャーン』

コーヒーカップと受け皿が床に落ちて割れた。米子はわざと机の上のコーヒーカップを肘で押して床に落としたのだ。

「すみません!」

米子は大きな声で言った。

「大丈夫ですか?」

若い店員が雑巾を持って来た。

「すみませんでした。コーヒーかかりませんでしたか?」

米子は立ち上がって隣の席の木島に訊ねた。

「大丈夫ですよ。お嬢さんこそ大丈夫かな?」

木島の声は優しかった。若い店員が割れたコーヒーカップを片付け、床を雑巾で拭いている。

「はい、すみませんでした。本に夢中になってつい・・・」

「何の本を読んでたんだね?」

「株の本です」

「株? 君はまだ学生だよね?」

「はい。でもお金を儲けたいんです。最近、口座を作って株のネット取引を始めたんです」

「ほう、何でお金が欲しいのかな?」

「大学に行きたいんです。母子家庭で家が貧しいから大学に行くお金が無いんです」

木島が米子の体を頭から爪先まで舐めるように見た。爬虫類のような目だった。米子は席に座った。

「大学ねえ。勉強はしてるのかな?」

「塾や予備校には行ってませんが家で頑張ってます。ちなみに模擬試験の偏差値は76です」

「凄い!」

香川が声を上げた。

「そんなに凄いのか?」

木島が言った。木島の最終学歴は中学なので大学入試における偏差値のイメージが湧かなかったのだ。

「はい、偏差値76なら東大も受かります。私立ならどこでも入れますよ」

香川が答えた。

「ほう、大したもんだな。お嬢さん、こう見えても私は経営や金融のコンサルタントをしてるんだ。株や為替や先物取引のプロだよ」

「そうなんですか? あの、もし良かったらご指南していただけませんか? お礼はします。私、塩見優香といいます」

「ご指南なんて大袈裟だな。私の名前は木島だ。まあこれも何かの縁かもしれない。株の『いろは』くらいなら教えてあげてもいい。手っ取り早く儲けたいならお勧めの銘柄を教えてあげよう。優香ちゃん、よかったらこの後私の家に来ないかね? この男も一緒だがね」

「いいんですか? ご家族とかいらっしゃるんじゃないんですか?」

「家内は旅行に行ってるんだ。大学生の息子は部活の合宿に行っている。もちろん変な事はしないよ。これでも私はこのあたり名士でね、悪い事はできないんだよ。文化人で紳士だ」

「じゃあお言葉に甘えて行っちゃおうかな~」

米子が無邪気な笑顔で言った。

「遠慮はいらないよ。私も役に立てるなら嬉しいよ。君のような頭のいい子の将来を閉ざすのは勿体ない。株で儲けて大学に行くといい」


 木島の家は予想通りの大きな邸宅で内装は和洋折衷で豪華だった。米子は2階にある書斎と思わしき部屋に通された。12畳ほどの広さで南向きの窓の横に高そうな黒檀の机と椅子が置かれ、部屋の真ん中には小さな応接セットがあった。室内の調度品も金が掛かっていそうだった。ボディガードの香川はキッチンで飲み物を用意しているようだ。米子は応接セットのソファーに座っていた。木島は正面に座っている。

「素敵なお部屋ですね」

「この家も部屋も結構金が掛かってるんだ。ビジネスで成功したからね」

「あの、お勧めの株を教えていただけませんか?」

「ははは、まあそう焦る事もないだろう」

香川が湯飲み茶碗を2つ載せたお盆を運んできてテーブルの上に湯飲みを並べた。

「このお茶は京都の宇治から取り寄せてるんだ。口に合うか分からないけど飲んでみるといい。100g10万円のお茶だよ。株で儲ければこんなお茶も飲めるんだ。冷めないうちに飲みなさい。夕方には通いの料理人が来るから夕食も食べていったらどうかな。今日はイタリアンのシェフが来る日だ」

木島が薄笑いを浮かべながら言った。米子は湯飲み茶碗を両手で持つと口に運び、半分ほどの量を一気に飲んだ。

「美味しいです。普段飲んでるお茶と全然違います。イタリアンも美味しそうですね」

「食べていきなさい。お金があればいくらでも美味しいもが食べられる。金儲けを悪く言う人間もいるが世の中に金を嫌いな人間なんて1人もいないよ。悪く言うのは金を稼げない者の僻みだ」

「すみません、こんな高級品なお茶飲んだら体がビックリしたのかお手洗いに行きたくなりました」

「ははは、気に入ったならもう一杯淹れようか? トイレは部屋を出て右の突き当りだよ」

「すみませんお借りします」

米子は肩掛けカバンを持つと部屋を出て廊下を歩き、トイレに入った。ブレザーのポケットからピルケースを取り出すと、中に火っている錠剤を4錠口に入れ、嚙み砕いて飲み込んだ。錠剤は汎用解毒剤だ。米子はお茶の味の中に微かにお茶とは違う味と匂いを感じた。訓練所で何度も飲んだ睡眠剤に含まれる物質の臭いだった。訓練所では様々な睡眠剤や毒に対処する訓練を受けていた。汎用解毒剤は組織が開発した物だ。事前に袴田法律事務所の影山から木島が睡眠薬を使う事を聞いていた。米子は肩掛けカバンのファスナーを開けると中からSIG-P229とサイレンサーとコールドスチールの折り畳みナイフを取り出してナイフの刃を開いた。P229はウェストの背中側に差し、サイレンサーと刃を出したナイフはブレザーの内ポケットに入れた。


 「20分で効き目が現れると思います。社長、楽しんだ後はどうしますか?」

香川が言った。

「薬漬けにして奴隷にしてもいいが捜索願いなんか出されたらやっかいだ。ここで殺すのもまずいだろう。たっぷりシャブでも打って裸のまま江戸川の土手にでも転がしておけ。頭はいいんだろうが所詮子供だ。いくら金が欲しいと言ってもノコノコ家まで来るとは世間の厳しさが分かってない。貧すれば鈍するってやつだ。美人なのにもったいないよな。いつも通り、撮影は頼んだぞ」

「はい、でも勿体ないですね。かなりの上玉です」

香川が残念そうに言った。

木島は黄色い楕円形の錠剤を1錠飲んだ。ED治療薬の『シリアス』だった。

「社長、いつものと違うんですね」

「バイアグラは頭が痛くなるんだ。これはマイルドだけど効き目が長続きして何回も楽しめるんだよ。さて、こっちは準備万全だ」

米子は部屋に戻って応接セットのソファーに腰を下ろした。

「お帰り。この手帳に近々値上がりする株の銘柄が書いてある。いわゆる『仕手株』だ。必ず上がる。だがスマホで撮影したりメモを取られるのは困る。漏らした事がバレたら私もただでは済まない。まあ頭の中に焼き付けるのは構わんけどな。君は頭がいいようだから覚えなさい。時間はたっぷりある。偏差値76なんだろ。今回儲けた金を証拠金にして信用取引を出来るようにしたらもっと大きく儲けられる。手順は教えてあげよう」

木島は米子に栞を挟んだ黒革の手帳を渡した。

「ありがとうございます。貯金を全部使って教えてもらった株を買うつもりです」

栞の挟まったページを開くと企業名と株式コードが20件ほど書かれていた。書かれている金額は売り時の価格だろう。米子は暗記した。10分ほど手帳を見つめると、目をトローンとさせて今にも眠りに落ちそうなふりをした。木島は黙って米子を見ている。その顔からは満足感が溢れていた。

「すみません。なんか眠くなっちゃって」

「勉強のしすぎかな? よかったら隣の寝室を使いなさい。右側のベッドが妻のベッドだ。遠慮はいらないよ」

「どうしたんだろう? 凄く眠いです。30分くらい眠れば大丈夫だとも思いますのでお借りします」


 米子はふらつきながら書斎を出て隣の部屋のドアを開けた。寝室はかなり広く、キングサイズのベッドが二つ並んでいた。米子は背中のウェスト部分からSIG-P229を抜くとブレザーの内ポケットからサイレンサーを取り出して銃の先端に装着した。SIG-P229のスライドを引いて弾丸を薬室に装填するとベッドに潜り込んで木島を待つことにした。銃は掛布団で隠している。15分ほどすると木島が部屋に入って来た。トランクス1枚の姿だった。木島は米子が寝ているベッドの左側に腰を下ろすと米子の顔を覗き込んだ。トランクスの前が大きく膨らんでいた。

「本当に美人でカワイイな。17歳か。悪いけど楽しませてもらうよ」

木島が米子に覆いかぶさろうとした。掛布団が跳ね上がり、米子の右腕が飛び出して真っすぐに伸びた。米子は目を開けて木島の目を見た。銃口は木島の眉間までわずかな距離だった。

「なっ、何だ? お前は誰だ!?」

木島が大きな声で言った。

『バスッ!』

357SIG弾が木島の左耳を掠めて天井に当たり、漆喰が飛び散った。木島が目を見開いて驚愕した。女子高生が拳銃を所持し、サイレンサーまで装着しているのだ。

「本物だよ。手を挙げてそこに立って」

米子が言った。木島は大人しくベッドの側に立って両手を挙げた。米子は木島の頭に狙いを付けながら立ち上がった。

「何なんだお前は? プロか?」

木島が絞るように声を出した。

「それも脱いでよ。どうせ脱ぐつもりだったんでしょ」

木島は黙ってトランクスを脱いだ。度胸はあるようだ。修羅場慣れしているのだ。木島の一物はまだ起立していた。一物の亀頭に近い部分に襟巻のように真珠が8個埋まっている。米子は左手で銃を構えたまま右手でコールドスチールの折り畳みナイフを内ポケットから出した。

「面白い! これ、ナイフでほじくり出していい? なんかそそられるんだよね」

米子がナイフの先で真珠を指しながら言った。

「ふざけるな! お前、俺が誰だかわかってるのか? 殺すぞこのアマ!」

「ポチッとな」

米子が木島の一物の真珠と真珠の間にナイフの先を1mmの深さに刺した。

「痛てっ! やめろ! 本当に殺すぞ! 脅しじゃねえんだ、俺は東風会の組長だ!」

米子はコールドスチールの折り畳みナイフ木島の右太もも深く刺した。

「うぐっ!」

木島が前のめりになる。ナイフは刺さったままだ。米子はブレザーのポケットからスマートフォンを取り出すとパネルを操作した。新宿にある古物屋『ジャングルパニック』で買った飛ばしのスマートフォンだ。非合法な商品も売る『ジャングルパニック』はニコニコ企画の言いなりだった。木崎が経営者の弱みを掴んで脅しているのだ。

「組長さん、今から企画営業部の白木部長に電話するから『フューチャー貿易』との業務提携の件を取り止めるように指示して。野沢社長にもその事をすぐに電話するように言ってね。ちゃんと謝るんだよ」

「お前、野沢のところの回し者か? クソっ、カタギだと思って油断してた! お前は何者だ? プロだな。必ず見つけ出してやる」

「私はただの女子高生だよ。JKってやつ。言う通りにしてよね」

『バスッ!』

「うがっ!!」

357SIG弾は木島の右手中指の第一関節から先を吹き飛ばした。木島は悲鳴を上げて床に両膝を着いた。

米子は事前にメモリー登録した木島コンサルティングに電話を掛けた。スピーカーホンにしあてある。米子は木島コンサルティングが日曜日も営業している事を知っていた。

『はい、木島コンサルティングでございます』

女性が対応した。

『私、ニコニコファイナンスの塩見と申します。企画営業部の白木部長様はいらっしゃいますでしょうか? 急ぎの要件でお電話いたしました。木島社長様への個人融資に関する決裁の結果のご連絡です』

米子は大人っぽい声色を使った。

『塩見様ですね、お繋ぎしますので少々お待ち下さい』

電話は保留になってメロディーが流れた。

『お待たせいたしました。白木です』

米子はスマートフォンを木島に差し出した。木島は右手で受け取った。

「ちゃんと話してよね。誤魔化したら次は眉間を撃つよ。私、躊躇しない性格なの」

米子は低い声で言った。

『白木、俺だ、木島だ!』

『社長、どうされました!? お休みでは?』

米子は銃口を木島の眉間に押し当てた。

『今から俺の言う通りにしろ! フューチャー貿易の件は手仕舞いにしろ! 今すぐにだ!』

『社長、あの件は随分と準備をしてやっと

『いいから言う通りにするんだ! 野沢にも電話して伝えるんだ! それと謝るんだ』

『社長、どうされましたか?』

米子はトリガーを木島にも分かるように少し引いた。

『いいから言われた通りにしろ! 状況が変わったんだ、早くしろ!』

『はい、わかりました』

米子は木崎の手からスマートフォンをひったくると通話のOFFにした。

「おい、これでいいだろ? それをどけろ」

木島が言った。額に大量の汗をかいている。

「私の事をどうしようと思ったの? 未成年の女の子が好きなんだって?」

「誰に聞いたんだ? 何が目的だ! 野沢の件だけじゃないのか? お前は誰だ!? かならず後悔させてやる!」

「私はJKアサシン。でも、訊かない方が良かったのに。あなたを生かしておけなくなっちゃったよ」

「やっ、やめろ! 金ならいくらでもやる、助けてくれ!」

「仕手株の情報ありがとうね。買ってみるよ」

「やっ、やめ

『バスッ!』 『バスッ!』

破裂したように頭から血を噴き出して木島は後ろに倒れた。

「失礼します。社長、カメラを持ってきました、撮影します」

香川は手にビデオカメラを持って部屋に入って来た。

「えっ!? お前! 何やってるんだ! この野郎!!」

香川が、頭の上半分が吹き飛び、裸で大の字に倒れた木島の死体を見て叫んだ。

香川がビデオカメラを投げ捨てると米子に向かって来た。米子は振り返って向きを変えた。

「セイッ!」

香川の気合とともに右正拳突きが真っすぐ米子の顔面に向かってきた。伝統空手特有の速くて真っすぐな突きだった。直径10cmの長い丸太が真っすぐ押し出されたような感じだ。米子は素早く体を左半身(ひだりはんみ)にして左に半歩移動して左手の外受けで香川の正拳突きを内側に流した。スウェイバックなら間に合わず、上げ受けや内受けなら止められなかっただろう。香川は勢い余って前につんのめった。米子は顎を引いて構え直した。

「やるじゃないか。頭がいいだけじゃないようだな。お前、女子高生じゃないな?」

香川が向きを変える。

「JKアサシンだよ。速い突きだね、流派は何?」

米子が訊いた。

「松濤館流だ」

香川が答えた。

香川の右膝が上がった。前蹴りのモーションだ。米子は右足を半歩踏み出して、左足の甲と脛の間を香川の股間に叩き込んだ。手応えがあった。

「ぐうっ!」

香川の動きが止まった。金的蹴りは米子の得意技だった。訓練所で徹底的に練習した技だ。力の勝る男性相手には有効な技だった。訓練では強固なファウルカップを付けた教官の股間を何度も蹴って最適なタイミングを掴んだ。訓練所では女性工作員に徹底して金的蹴りと目潰しの技を教え込んだ。香川は股間を押さえて跪いた。

『バスッ!』

367SIG弾が香川の眉間を撃ち抜いた。

「やっぱり空手より357SIG弾の方が強いね。影山さんの言う通りだよ」

米子はSIG-P229のデコッキングレバーを押してハンマーを倒すと銃をスカートのウェスト部分に差し込んだ。ブレザーの右ポケットからコーラグミの袋を取り出して中のグミを2つ摘まんで口に入れた。

「グミうま」


米子は庭を通り、屋敷の表門から外に出て振り返った。大きな邸宅の2階の窓からオレンジ色の炎が吹き出した。


昼休み、米子と野沢瑠香は桜山学園の校舎の屋上にいた。夏の空はふざけたくらいに青く、大きな入道雲が東の空に盛り上がるように浮かんでいた。セミの声が嬉しそうに響いている。学校は来週から夏休みだった。

「沢村さん、お父さんの会社助かったよ。怖い人達から連絡があって関係を切る事になったんだって。電話も録音してるから証拠もあるんだって。向こうはかなり焦ってたんだって」

「そう、良かったね」

「沢村さん、ありがとうね。動いてくれたんでしょ? 仲間に頼んだの?」

「何の話? まあ解決して良かったじゃん」

米子は格好つけてる訳ではなかった。照れくさくいのだ。

「沢村さんは怖いけど凄く信用できるって里香が言ってたよ」

「私の仲間って怖いやつらだけど信頼できる連中なんだよね」

「沢村さんは孤児でいろいろ大変かもしれないけど私達も仲間だからね」

「うん、当てにしてるよ」

「沢村さん本当にありがとうね」

「じゃあ放課後にラーメン奢ってよ。駅前に新しいお店ができたじゃん。1人だとちょっと入りにくいんだよね」

「いいよ、奢ってあげる」

野沢瑠香が明るい笑顔で言った。久しぶりの笑顔だった。真夏の太陽の光が2人をジリジリと焼くように降り注いだ。


米子はネット証券のサービスの利用を開始して取引口座を作った。親権の同意書は組織に作ってもらった。権藤正造からもらった100万円をつぎ込んで木島に見せてもらった手帳に書いてあった株を何種類か購入した。株は3日後から暴騰して設定しておいた指値で決済された。口座の100万円は560万円になった。

「株って面白いかも!」

米子は株の勉強を始めた。


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