第28話「新学期と鍛錬の日々」

 総合戦術大試験が幕を閉じてから幾日かが経過し、学院では新学期を迎えていた。あの壮絶な決勝戦後、ワシは準優勝という結果を得て、N級からM級に匹敵するほどの力を身につけた。L級との激戦で引き分けにまで持ち込み、再戦で惜敗した経験は、ワシの成長に大きな自信と課題を残している。

 「卒業まで、あと一年か…」寮の部屋でノートを開き、これまでの記録に目を通しながら、ワシは小さく息をつく。まだ2年生、最後の年まで丸々1年が残っている。その間、ワシはM級相当の実力を安定させるだけでなく、さらなる上、K級に近づくまで力を伸ばさなければならない。卒業時にK級にまで到達するという目標は高いが、不可能ではないはずだ。


 朝食後、校庭に出ると、リールがすでに待っていた。彼女はあの大試験後も変わらず、ワシを見つけると微笑んで手を振ってくれる。「おはよう、ワシ。今日から新しいカリキュラムが始まるらしいわよ。上級魔法理論とか、Mクラス以上の魔物対策特別講習とか、興味深いものが増えるみたい。」

 ワシはうなずきつつ、「そりゃ楽しみだな。大試験で示した通り、ワシらN級以上の実力者がこれからますます重宝されるだろう。M級に近い力を持つ生徒には、さらに上位ランクへの指針も用意してくれるかもしれない。」と返す。


 校内には新しいポスターが貼られている。「上級特訓コース」の案内や、「対魔物上級訓練」「地形対策講座」といった特別講義が並ぶ。学院は大試験を経て、より高度なカリキュラムを生徒たちに提供し、全体の戦闘水準を底上げしようとしているようだ。

 リールがポスターを指して「ほら、M級以上の魔物対応訓練、申し込み受付中だって。ワシは申し込む気ある?」と聞く。

 ワシは即答する。「もちろんだ。M級相手に余裕を持って戦えるようになれば、次はK級に近づく足がかりになるはずだ。卒業までにK級…いや、その近くまで行く目標があるから、出せる手は全部出す。」


 周囲を見回すと、ガルスや他のN級者も同じようにポスターを見て気合いを入れている。「みんな次のステップを目指してるんだな。」心中でつぶやく。N級が30人、Nに近い者が50人いたが、あの大試験後、何人が生き残り、どれだけの者が成長しているのか。今やワシはその中でも抜きん出た実力を示した存在だが、油断すればすぐに追いつかれるかもしれない。


 午前の講義は上級魔力制御論。Mクラス以上への跳躍を視野に入れた内容で、魔力流出の精密な調整、環境適応術などが教えられる。ワシはノートを取りながら、リールと目を合わせる。「これ、実戦で役立ちそうだな。」

 リールは小声で「うん、L級との死闘で見えた限界は、魔力制御の繊細さでも克服できるかもしれない。戦闘中に魔力出力を微妙に変化させて、ワシの奇襲成功率を上げる手もありそう。」


 昼休み、食堂でスープをすすりながら、ワシはリールに「次の一年、どんなイベントがあるかな?」と話を振る。

 リールは少し考え込む。「普通に考えて、学内イベントは定期的な戦術大会、模擬戦、特別試験…それから卒業試験が待ってる。最後の卒業試験は、恐らくM級上位、あるいはK級に近い難度の課題も出るかもしれないわね。学院はあんたを含めた有望株に高難度の挑戦を与えるはず。」


 ワシは微笑み、「じゃあ、この一年は鍛錬回や学内大会を通じて、M級対応を安定させ、K級領域に近づくステップを踏もう。そうすれば卒業時にはKクラス相当まで上がれる。」

 「そうね、それに戦術的な知略だけじゃなく、純粋な戦闘技術も上げる必要があるわ。L級戦士とやり合えたあんたなら、基礎力を上げれば本当にK級に近づけるはず。」リールは熱心に同意する。


 午後は特別講義の申し込みを済ませ、訓練場で軽い稽古に励む。今回は単純な剣技反復だが、ワシは以前よりも確実に動きが洗練されている。L級戦士との激戦で得た教訓が、無駄な動きを省くことを意識させ、ステップワークの精度を高めていた。

 「微妙な重心移動と呼吸のタイミング、これが魔物相手にも応用できる。」ワシは心中で分析する。音や光がなくても、今は剣筋一つひとつが磨かれ、M級魔物を正面から制圧する力が増しつつある。


 夕刻、リールが「今度の大会や特訓も大事だけど、日々の鍛錬や中間試験も活かしたいわね。学年末には卒業試験があるし、その頃までにK級相当へ届くには、毎月のように進歩を実感したい。」と意欲を語る。

 ワシは微笑んで「そうだな。一年あれば色んなイベントがあるはず。学内の戦術試合、模擬任務、L級相当を一瞬でも感じるような特別プログラム…全部チャンスだ。」と返す。


 夜、寮に戻りノートを開く。今後は鍛錬や日常的な訓練、学内イベントを通じて強さを積み上げる流れになる。定期的に開催されるミニ大会でM級魔物を安定して倒せるようになり、複雑な地形での対処法もマスターするだろう。

 来るべき卒業試験までの一年、イベントが断続的に発生するに違いない。学内大会でさらに上位を狙い、最終的な卒業試験ではK級相当の魔物や課題をクリアして、ランクを上げていくプロセスだ。


 「面白くなりそうだな…」小声で呟きながら瞼を閉じる。二度目の人生でここまで来れた。残り一年でどこまで行けるのか、ワシはますます高ぶる期待を抑えられない。今夜も静かに眠り、明日からの鍛錬とイベントに備える。




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