第26話「準々決勝・準決勝への疾走」

 予選を突破した翌朝、学院全体がさらに熱気を帯びていた。総合戦術大試験の本戦ステージ、準々決勝から先のラウンドがいよいよ始まる。参加人数は大幅に絞られ、N級からはおよそ半数が生き残り、Nに近い学生たちも有望株が少数残っている。Mクラスの2人やLクラスの最強生徒がまだ姿を見せていないが、今後のラウンドで必ず対峙する可能性がある。


 ワシは支度を整えながら、窓から見える特設アリーナへ視線を送る。今回の準々決勝は、対人戦や課題競争が複合的に絡み合う特殊ステージだ。M級魔物を使った課題は予選で見たが、今回はもっと戦術的な要素が増えると事前に聞かされている。

 「いよいよM級クラスの参加者やLクラスとも当たるかもしれないって話だよな。」ワシはひとりごとをつぶやく。


 控え室へ向かう途中、リールが駆け寄ってくる。「おはよう。今回はあたし、別のステージで試合が組まれてるから直接助けられないけど、応援してるわね。ワシならきっと知略を活かして上位まで行けるはず。」

 ワシは笑顔で「ありがとう。お前も頑張れよ。」と返す。リールもN級者の一人として別ブロックで戦うが、彼女なら確実に勝ち進むだろう。二人とも別ルートで頂点を目指す。後で合流できれば、そのとき喜び合えるはずだ。


 準々決勝のステージは、M級魔物が点在する広いフィールドに、各ランクの選手が複数放り込まれるサバイバル方式だ。時間内に指定の魔石を多く集め、一定条件をクリアした上位数名が準決勝へ進む。N級相手なら予選で示した戦術を使い回せるが、M級戦士と出くわしたら厄介だし、Lクラス最強生徒が現れる可能性もある。


 いざ試合開始の合図が響くと、ワシはすぐにフィールド端へ移動し、音を使った敵誘導からスタートする。まずはN級・N近いクラスの参加者が多数散らばる中で、安全に魔石を集めるルートを確保する。N級者たちは予選でワシの戦術を見ているかもしれないが、それでもこちらにはアドリブがある。


 ある地点でM級魔物が出現し、近くにN級の戦士が単独で挑もうとしている。このチャンスを逃すまいとワシは音を小さく立て、相手が魔物に意識を集中する瞬間を狙い、素早く背後の資源ポイントへ回り込む。相手が魔物と格闘している間に、ワシは必死に魔石を回収し、即座に退避。

 「この一瞬を生かせたな。」ワシは心中で笑みを浮かべる。


 だが、Mクラスの戦士らしき人影が視界に入った瞬間、緊張が走る。Mクラス2名はN級より上位、正面勝負では苦しい。だが知略を駆使すれば対等以上の勝負ができるはず。

 ワシはあえて魔物の棲む小林へ誘い込む。そこにMクラスの戦士が入ってきたら、光がない分、代わりに立てる小さな音で彼の立ち位置を惑わし、魔物を利用して相手を消耗させる。音によるフェイントでMクラス戦士が反応した瞬間、そっと背後の資源を掠め取ることに成功する。


 Mクラス戦士は魔物対応に手こずり、ワシへの対処が遅れる。その隙にワシは逃げ道を確保し、次のエリアへ移動だ。「Mクラス相手にも、こうやって工夫すれば負けない。」心の中で自信が湧く。


 しばらく駆け回り、十分な魔石と条件をクリアした段階で、試合時間終了の合図が響く。集計結果、ワシは上位に食い込むことに成功したらしい。数多くのN級やN級近い生徒が脱落する中、ワシはMクラス相手に真正面から当たらず、魔物と地形を使った戦法で有利を引き出した。


 準々決勝を突破し、次は準決勝だ。ロビーで息を整えていると、ガルスがやってきて「お前、すごかったな。Mクラス相手に戦わずして勝ち上がるなんて、知略の極みじゃないか!」と称賛の言葉をかける。

 ワシは肩をすくめ、「勝てたのは運もある。けど、自分の得意分野を活かせたのは大きい。」と答える。ガルスは「そのうちMクラス相手にも正面から渡り合う日が来るんじゃねえか?」と嬉しそうに笑う。


 リールが少し後れてロビーへ合流し、「ワシ、見たわよ。まるで戦場全体を手玉に取ってるみたいだった。」と目を輝かせる。

 ワシは照れながら「ありがとな。お前はどうだった?」と聞くと、リールも別ブロックで準々決勝を突破したとのこと。「あたしもN級やN近い相手に苦労したけど、光魔法と回避術でうまく資源確保できたわ。お互い次は準決勝だね。」


 準決勝ステージが待っているが、その前に短い休憩時間がある。ワシはノートを開き、ここまでの戦術を振り返る。N級からMクラスまでを相手に、知略で上手く渡り合えたことで自信がついた。次は準決勝でさらに強者、そしてついにLクラス最強生徒との可能性も見えてくる。そこまで来たら、もう躊躇する理由はない。


 「リール、次はもっと厳しい勝負になるかもしれない。だが、ワシは知略で食い下がる。卒業前にMクラスに近づく成長を遂げたいんだ。」ワシは小声で決意を伝える。

 リールは優しく微笑み、「わかったわ、ワシならできる。絶対に最後まで行きなさいよ。あたしも可能な限り上を目指すから、ゴールで会いましょう。」


 次なるラウンドへの期待と不安が交錯する中、ワシは心を落ち着け、今できる準備をする。戦術は十分。次は実践で示すのみ。卒業後を視野に入れ、M級戦士レベル、そしてL級に挑める実力を引き出せるよう、全力を尽くすつもりだ。

 静かに息を整え、準決勝への出陣を待つ。




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