第24話「総合戦術大試験の開催」
戦術大会での成功と、中級クエストへの対応力が向上したある日、学院の正面ホールに全校生徒が集められ、学院長代理が壇上で厳かな声を響かせた。
「来月、我が学院は『』を執り行う! これはこれまでの個別試験や中級クエストと異なり、学院全域から精鋭が選抜され、複数の課題やステージを通じて知略と実力を競い合う大規模なコンペティションとする!」
その宣言に、周囲が一斉にざわめく。リールがワシの袖を軽く引っ張り、「総合戦術大試験?すごそうね。今回の大会よりもはるかに複雑そう。」
ワシは頷き、「ああ、普通の任務や大会とは違うみたいだ。知略をフルに使って、限られた時間や条件下で最大の成果を出すことが求められるだろうな。戦闘だけじゃなく、他チームとの駆け引きや、周囲の環境をどう活かすかも鍵になるかもしれない。」
リールは目を輝かせる。「知略勝負、あんたにぴったり。ワシたち、M級魔物相手に光と音でいろいろ試してきたから、状況に合わせた柔軟な対応には自信があるわ。」
「そうだな、ワシらN級者にとっては好機だ。実績を示せば、学院内での評価が一層高まる。卒業後を考えても、有利に働くかもしれない。」
告知によれば、この総合戦術大試験は複数ラウンド制で、M級魔物討伐、資源確保、罠回避といった課題をチーム単位でクリアしなければならない。しかも、他のチームが同じステージで競い合うため、ただ魔物を倒すだけじゃ勝てないらしい。
「他チームもいるなら、魔物を利用して相手を出し抜く戦術も考えられるわけか。」リールが面白がるような笑みを浮かべる。
放課後、ワシとリールは校庭の木陰で腰を下ろし、簡易的な戦略会議を開く。
「もし相手チームが魔物を倒そうとしてるなら、ワシたちは先に魔物を誘導して相手を疲弊させることもできるかもしれない。」ワシは冗談半分で言うと、リールは「なるほど、魔物を使って他チームを妨害する手もあるのね」と小声で感心する。
「もちろん、ただ妨害するだけじゃなくて、目標を最速でクリアすることも重要だ。魔物を誘導してる間に、ワシたちが本命の資源を確保したり、課題を達成できれば一石二鳥だ。」
リールは頷きながら「分かった。今回は純粋な戦闘力だけじゃなく、地形や他チームの動きを読んで、最も効率的な手段を選ぶことが大事なわけね。」
夕暮れ、ガルスなど他のN級者とも合流して情報交換する。彼らも同じことを考えているようで、「L級魔物まで出る可能性は低いけど、もし出たらどうする?」といった話題が上がる。
L級相手にはN3人が必要で、まだワシら2人では荷が重いが、状況次第で他チームと一時的に手を組むなど、人間関係の駆け引きも求められるかもしれない。
リールが目を丸くして「他チームと一時的な同盟?そんなこと考えもしなかったわ。でもあり得るのね。」
ワシは苦笑し、「あり得るさ。この試験は知略が問われるんだ。敵と決めつけず、時には利害が一致すれば協力して、L級の難関を突破した後で再び競争する。そういう柔軟性が成果を生むかもしれない。」
リールは「なるほど…ワシたちがやってきた光と音の戦術も、他チームとの関わりで大きく意味合いが変わるのね。」と納得する。
「そうだ、今は光と音でM級魔物を短期決戦で倒す戦術を磨いてきたけど、別に毎回倒す必要はない。倒さずに誘導したり、相手に押し付けることだって考えられる。戦術の幅を広げるための発想力が問われる。」
夜、寮の部屋でノートを開き、考えをまとめる。
今回の総合戦術大試験では、ワシとリールの得意技を応用して、ただ効率的に魔物を倒すだけでなく、他チームを出し抜き、必要な時には協力し、状況に応じて最善策を選ぶ柔軟性が求められる。地形や天候、魔道具や資源、全てが戦術の材料だ。
リールとの関係がまた一段と強まりそうな予感がする。彼女はワシの奇抜な発想に驚きつつも受け入れ、さらに自分もアイデアを出す。2人の知略が噛み合えば、どんな条件下でも抜け道が見つかるはずだ。
窓外には星がまたたき、風が心地いい。明日からは他N級者との情報交換や、地形対応策の確認を進めよう。短期決戦戦法はワシらの基礎だが、そこに駆け引きや政治的要素が加わるなら、一段と楽しくなる。
ほほ笑みながら瞼を閉じる。総合戦術大試験、どう転ぶかは分からないが、ワシとリールはこの試練を待ち望んでいる。知略を活かし、結果を出し、N級からさらに成長するきっかけにするのだ。
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