第10話 「中間試験当日! 対人戦で実力発揮、遺跡への切符を掴む」

 ついに中間試験当日がやってきた。朝から学院内は緊張と期待が交錯する。ワシは早めに起きて軽いストレッチを行い、朝食を済ませる。今日やるべきことは明確だ。筆記試験は朝のうちに行われるが、前世の経験で理論や歴史は全て頭に入っているから余裕だ。


 教室で配られた問題用紙を眺め、さらさらと解答を埋めていく。歴史問題も魔物学も基礎魔力論もスラスラ。周囲が唸っている中、ワシは30分ほどでほぼ回答を終えるが、あえて見直しをして時間を使う。焦っても仕方ない。満点を狙う必要はないが、良い成績をキープしておくに越したことはない。


 筆記が終わると、昼休みに軽食が出る。ワシはあまり胃に負担をかけず、パンとスープ程度に留める。いよいよ午後から実技=対人戦だ。訓練場には既に簡易観客席が設置され、生徒だけでなく覇刀連や上級生、教師たちが見物しに来ている。


 「なんだかすごい人だかりだな…」とマイロが目を丸くしているが、ワシは肩を叩いてやる。「楽しめばいいさ。ワシは本気出すから、応援してくれ。」


 対人戦はトーナメント形式で、2年生全員が抽選で対戦相手を決められる。第一回戦の相手は名も知らぬ生徒。特に警戒することなく、フェイントと足払いであっさり一本取る。観客が「おお、やはりバルは抜群の安定感」とざわめく。


 第二回戦は少し強い剣士タイプだ。だが、ワシは投擲用に軽く地面の小石を弾く奇策で相手の視線をそらし、背後に回り込む技を披露。「一本、バル勝利!」と審判が言うと、スタンドが沸く。「ああいう頭脳戦がバルの持ち味だな」と囁く声が心地いい。


 コランダとの再戦の場面が訪れる。前回の模擬戦で足元攻撃を警戒しているだろう相手に対し、今回は逆に上段フェイントから腰元への急所突きを狙う。相手は上段を守りにいくが、ワシは途中で剣軌道を変えて胴体を軽くタッチ。「くっ、またやられた!」とコランダが悔しそうに叫ぶが、これが戦略の勝利だ。


 こうしてベスト4入りを果たしたところで、準決勝の相手はリールだ。遠距離攻撃を得意とする彼女は光魔法で射線を封じてくるが、ワシは段差を利用してタイミングをずらし、足場にわずかな物を転がして注意を逸らす。リールが一瞬警戒した隙に接近し、短剣で背中タッチ。「バル勝者!」と審判の声にリールは舌打ちするが、「やるわね、完敗よ」と潔く認める。


 決勝はガルスとの一騎打ち。観客は最高潮の盛り上がりで、「これは見ものだ」と沸き立つ。ガルスは力強い剣撃でワシを押し込むが、ワシはわずかな隙に床の板を踏み、音を立てて彼の注意を引く。そして微妙な位置取りでガルスをつまずかせ、その一瞬で背後を取って一本勝ち。


 「優勝、バルフォール!」という声が響き渡り、拍手喝采。ガルスは「くそ、また策にハマったか…でも認めるぜ、お前は強い」と歯ぎしりしつつ笑う。


 試合後、教師が「バルフォール、君の安定した戦いぶりは見事だ。今回上位入賞したことで、特別課外活動への推薦候補になった。遺跡調査チームに参加してもらう可能性が高い。」と告げる。


 来た! ワシは心の中でガッツポーズ。これで遺跡調査への道が開けた。N上位で止まらず、外部からの刺激でMやL、さらにはJ、Hへと繋がる経験値を稼げるかもしれない。まだ夢の段階だが、こうした実績が一歩ずつランクアップを現実的なものにしてくれる。


 マイロやナーナ、クラスメイトが駆け寄って「すごい!」「さすがバル!」と大喜び。ワシは照れくさそうに笑う。「まあ、今回は運もあったさ。けど、これで遺跡に行けるかもしれないなら最高だな。新たな知識を得て、いつかMやLにも近づきたい。」


 生徒たちは「LとかMとか難しいだろうけど、お前なら可能性あるんじゃね?」と目を輝かせる。

 ワシは慎重に答える。「簡単じゃない。N上位でも十分すぎるくらい。でも、こうやってコツコツ結果を出していけば、いつか届くかもしれんだろ?」


 サグリ先輩が観客席から軽く手を振っている。「おめでとう、バルフォール。これで君は次のステップに立った。」と言わんばかりの表情だ。あの先輩は何者かわからないが、情報通でワシにとって有益なヒントをくれる存在だろう。


 夕暮れ、校庭で一人風に当たりながら今日を振り返る。二度目の青春で、凡人顔のワシがここまでやれるとは前世で想像もしなかった。N上位に達し、対人戦優勝、そして遺跡調査への道を手に入れる。これらが今後のランクアップに繋がるはずだ。


 焦らず一歩ずつ。Mまで遠くても、LやKを経由し、卒業時にはH付近まで狙えるかもしれない。それはかつての平凡な人生では考えられない大出世だ。今度の人生は無謀な挑戦で命を落とすより、計画的な努力で確実な進歩を重ねる方が性に合っている。


 「二度目の青春、最高だな。次は遺跡調査か。未知の世界がオレを……いや、ワシを待ってる。」

 ブサイクな顔でニヤリと笑い、ワシは寮へ戻る。明日からまた新たなステージの準備だ。ギャグまじりに「よし、遺跡で面白い発見して、さらに強くなってやる!」とつぶやきながら階段を上る。


 






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