第9話 「外部活動への手がかりと覇刀連の存在、遺跡への期待」
中間試験前日、学院内は最高潮の緊張感に包まれている。生徒たちは最後の追い込みで筆記の見直し、実技イメージを膨らませている。ワシは朝からあまり動かず、軽くストレッチして身体の調子を整えている。余計な疲労は逆効果だ。
そんな中、覇刀連の下級構成員が学院を訪れ、新人向けの説明会を開催しているという噂が耳に入る。覇刀連は卒業後に多くの戦士や魔法使いが所属する組織で、様々な依頼を請け負うプロ集団だ。前世でワシも中途半端な実力で入って苦戦した覚えがあるが、今度は違う。N上位の実力を足がかりに、将来もっと上へ行ければ、覇刀連内で高ランク任務もこなせるかもしれない。
「まあ、今すぐ加入するわけじゃないが、情報だけは集めておこう。」
ワシは休み時間に覇刀連員の説明をちょっと盗み聞きする。どうやら優秀な生徒は卒業前からスカウトを受けるケースもあるらしい。N上位なら下級依頼で頭角を現し、LやKに届けば中級以上の任務が舞い込む。Hまで行けたらエリート扱いだろう。
同級生が「バル、お前なら卒業時にHも狙えるんじゃねえか?」と軽々しく言ってくるが、ワシは首を振る。
「そんな簡単じゃねえよ。Hなんてトップ層の一握りだ。N上位だって早すぎるくらいなんだから、焦らず段階を踏むよ。まずは遺跡調査で経験を積みたい。」
遺跡調査と聞いた生徒たちは興味津々。「本当にそんな枠あるのか?」と疑問を投げかけるが、ワシは微笑むだけ。確証はないが、サグリ先輩からの情報は信頼できそうだ。特別課外活動として遺跡探索に行ければ、古代魔導技術や未発見の素材を入手できる可能性がある。そうすれば、MやLへの橋渡しとなる新しい訓練法を発見できるかもしれない。
午後、教室で先生が最後のアナウンスをする。「明日の試験、実技は厳正に行う。上位に入れば特別な機会が与えられるかもしれないぞ。」
教師が意味深な言い方をしている。やはり遺跡関係か? これでやる気がさらに高まる。
放課後、マイロが「バル、万が一お前が遺跡行くってなったら、何するんだ?」と聞いてくる。
「そりゃ、未知の魔力鉱石や古代機構を調査してみたいな。N上位止まりじゃ不安だから、外部刺激で成長の足がかりをつかむ。Mなんて夢のまた夢だが、長い目で見ればワシもそこに行けるかもしれない。」
ナーナは「古代機構ってなんかワクワクするね。魔導兵器とか、幻の魔術書なんかがあるのかな?」と目を輝かせる。ワシは笑う。「前世の知識では、そう簡単に大発見はないだろうが、何かしら得るものはあるはずさ。」
もちろん前世の知識があるとは言えないから、「まあ、実際に行ってみないとわからない」と付け加える。これが二度目の青春の強みだ。前世で遺跡探索がどれほど貴重な経験になるか知っているワシは、今度はそのチャンスを逃さず活かせるだろう。
夜、寮の部屋で荷物を確認する。対人戦といっても特別な道具は使えないが、軽い身のこなしをするために動きやすい服を準備し、靴底には自分でこっそり滑り止めの加工をした。これもささやかな工夫。相手に読まれることなく足さばきを向上できれば、1ポイント先取に繋がるかもしれない。
窓から見える月はまぶしい。静かな夜、ワシは息を整え、明日のイメージを膨らませる。対人戦で上位に食い込めれば、その噂は覇刀連にも届くだろう。将来、学外での経験が増えればLやKへの道も見えてくる。今の段階ではN上位ですら稀だが、努力すれば階段は上れるはずだ。
「そのためには一歩ずつ。焦らず、明日の対人戦でしっかり勝利を積み重ねる。」
ギャグ要素として、「いやあ、ワシがこんなに真面目に努力するとは、ブサイク顔が笑えるぜ。前世じゃ考えられなかった」と自嘲気味に独り言。
いいんだ、それくらいの軽口は許される。
翌朝の朝食では、いつものスープに加え、少し果物を混ぜてビタミン補給。コンディションは万全、気負いはない。N上位に至った自分を信じ、明確な長期目標(Hを目指す長い道)を胸に秘めながら、まずは目の前の試合に集中する。
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